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なずな、女の勘?
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爆心地。
そう呼ばれてはいるが、何かが爆発した訳じゃない。あの日、何が起きたのかは誰も分かっちゃいないが、この現象は円状に広がっていて、その中心地を誰もがそう呼んでいるだけだ。
その爆心地に向かう俺たちを阻むかのように築かれた万里の長城を思わせるほど、延々と続くバリケード。今までに見たどのものより、遥かに巨大だ。しかも、その辺のコロニーのバリケードのように、建造物などの残骸を集めて作ったものとは違い、ほぼコンクリートかなんかで作られた壁のようだ。
「こんな巨大なコロニーは見たことが無い。
完全な城塞。そんな感じだ。
迂回して爆心地を目指した方が無難な気がするが」
「実はな」
大久保の言葉に視線を向けて、続く言葉を待つ。
「衛星写真によると、爆心地を取り囲むように巨大な一つのコロニーが形成されている。
支配者の素性は分かっていないが、おそらく教会だろう」
「つまり、それって、教会が支配しているであろうこのコロニーを通り越えないと、爆心地にはたどり着けないって事か?」
大久保は黙って、頷いた。
「政府や軍が爆心地に向かわせた者たちは、このコロニーで捕らえられた?」
「そう考えるのが、自然だろうな。
爆心地には誰も行かせない。そう言う意図を感じずにいらないんだ」
元々、大久保は俺の父親が教会の教祖で、俺たちと一緒なら、無事に教会の勢力をやり過ごせると考えていた。が、そんな事実は無い。
神の意思を取次ぐ者もたぶん違う。そう、たぶん。
凛の顔がちょっと浮かんだが、頭をくるくる振って、その疑惑を頭の中から振り落とす。
コロニーの巨大さから言って、中にいる教会の信者の数は計り知れない。しかも、爆心地に向かう者を阻む意図があるとしたら、俺たちがここを通り抜けることはかなり危険を伴う。
なずなは引き返させる事だってありだし、あかねの事も心配だ。
「あかね」
「なに?」
俺の言葉にそう答えたあかねは、すでに右手にあかねソードを握りしめていた。
「今から行くんだよね?」
「いや、だから、それ違うから」
今にも一歩踏み出しそうなあかねにそう言った。
「でも、ここまで来ちゃったんだから、行くしかないんじゃないかな。
凛ちゃんのためにも」
「無理しないで、とりあえず入ってみるだけでも必要じゃないかな?」
あかねに続けて大久保が言った意見はほっておいて、あかねを見つめる。にこりとした笑みの奥には、かたい決意が浮かんでいる気がする。
「分かった。
俺から離れるなよ」
「うん。
こんな感じでいいのかな?」
あかねが俺の腕に抱きついて来た。
いつものムニュッ感と、見上げるあかねの笑顔が俺を幸せにする。
俺はこの先のコロニーにどんな奴らがいても、あかねを守る。
「あかねちゃん。それじゃあ、颯太くんが戦えないんじゃないかな?」
「そっか、そっか」
なずなの突っ込みにあかねが俺の腕から離れた。ちょっと寂しい気がしたその瞬間だった。
新たなムニュッ感と温かさが俺の腕に伝わって来た。
「私の事も。ねっ?」
今度はなずなだった。見上げる笑顔。熱くなってきた胸の温もりが、下半身に降りてきそうになる。
「と、と、当然だよ。
は、ははは」
下半身が熱くなりそうなのをあかねに気づかれる訳にはいかない。残念だが、今はなずなから離れる事を決めた。
「守るために、あかねソードを用意しておくよ」
そう言って、なずなの腕を振りほどいた時、ほっぺを膨らませているあかねが目に入った。
「えぇーっと、あかね。監視カメラを勝手に斬りおとすんじゃないぞ」
巨大なコロニーを取り囲む壁の所々に設けられ、きっちり俺たちを捉えているらしい監視カメラに話題変えて、あかねの気持ちを逸らしてみた。とりあえず、それなりの効果はあったようで、あかねが普通の表情で答えた。
「ちょっと高すぎて、手が届かないよ。
肩車でもしてくれたら、届くかもだけど」
あかねを肩車。ちょっとしてみたい気もするが、監視カメラを斬りおとされてはたまらない。
「とにかく、無茶はだめだぞ」
そう言いながら、目の前に広がる壁を眺めてみた。
この壁は乗り越えれる高さのものではない。どこかに出入り口があるはずなのだ。
見渡せる範囲に出入り口らしき構造物は見当たらない。
「右か、左か?」
どちらに行くべきか、判断する材料を持たない俺の言葉に、あかねが話をなずなに振った。
「なずなちゃんは右か左かどっちだと思う?」
「右かな」
「じゃあ、それで」
あかねがそう言ってから、俺に視線を合わせてきた。じっと見つめているところから言って、何か言いたそうだ。
「なに?」
「なずなちゃんの勘だよ。
信じる? 信じないの?」
ただの勘とは言え、信じないとは言いにくいし、否定する根拠もない。
「信じてみていいんじゃないか?」
「なるほど。じゃあ、お兄ちゃんはなずなちゃんは女で、女の勘を信じた訳だぁ。
さっきのギュッで、何か感じたのかな?」
ちょっと意地悪そうなあかねの視線。
「あかねちゃん、何の話?」
意味ありげそうなあかねの雰囲気を察したのか、なずながあかねにたずねた。
「お兄ちゃんが言うには、私は女の子なので、私の勘は女の勘じゃないんだって。
だから、私の勘は信じられないんだって」
「女の勘。女の子? 女? 何が違うの?」
「それはお兄ちゃんによると」
慌てて、俺はあかねの口を手で塞いだ。
なずなとはまだ下ネタを言って笑える間柄じゃない。今、そんな話をされたら、軽蔑されてしまうじゃないか。
「あかね。その話はもういいから。
さっさと、行こうじゃないか」
俺の手の中で、あかねのほっぺが膨らんだのを感じた。一度あかねにやられた事をやり返してみたくて、そのほっぺに人差し指を突き立てながら、塞いでいた口から手を放した。
ぷふっ!
そんな音を立てて、あかねの口から空気が抜けた。
「お兄ちゃんのばかっ」
そう言って、ぷいっと横を向くあかねも可愛すぎる。
「右に向かうんだな?」
俺たちの世界に割って入って来たかと思うと、すたすたと右に向かって歩き始めた大久保になずなが続くと、あかねも続いた。壁に沿って歩くと、すぐに入り口が見つかった。
なずなの勘が当たったと言う事だ。
だからと言って、なずなが女の子じゃなくて、女だって事にはならない。
なぜだか、そう思いたくて、自分でそんな事を心の中で再確認した。
巨大なコロニーの壁のようなバリケード。そこに設けられていた入口はごく普通のドアだった。その横に設けられているのが、カメラ付きドアホン。そして、さらにご丁寧な事に監視カメラも壁の上部に設けられている。ドアはノブを持って、開けようとしたが、鍵がかかっているらしく、ピクリとも動かない。
強行突破と言う手段を除外したとしたら、鍵を中から開けてもらう以外手はなさそうだ。
「えぇーっと、これ押せばいいのかな?」
ドアホンのボタンに指を当てながら、戸惑う俺の前になずなが割って入った。
「こんなのは男の人より、女の子の方がいいと思うんだよね」
「確かに」
そう言って、俺が引き下がると、なずながドアホンのボタンを押した。
「はい」
「このドアの鍵、開けてくんないかなぁ」
なずなが小首を傾げて、にこりとしながら言うと、ドアからカチャリと鍵が開く音がした。
なずなのかわいさにこのドアを管理している者も、開けたくなったに違いない。
なずなの可愛さもあかねと同じで、どこの誰にでも通じる全国区レベルなんだろう。
うんうんと頷いている俺の腕をあかねがつかんだ。
「お兄ちゃん、行くよ」
「お、お、おう」
なずなは開いたドアの向こうに消えていて、大久保もドアをくぐり抜けようとしていた。そんな二人に遅れて、あかねと二人、教会支配下と思われる巨大なコロニーの中に入って行った。
そう呼ばれてはいるが、何かが爆発した訳じゃない。あの日、何が起きたのかは誰も分かっちゃいないが、この現象は円状に広がっていて、その中心地を誰もがそう呼んでいるだけだ。
その爆心地に向かう俺たちを阻むかのように築かれた万里の長城を思わせるほど、延々と続くバリケード。今までに見たどのものより、遥かに巨大だ。しかも、その辺のコロニーのバリケードのように、建造物などの残骸を集めて作ったものとは違い、ほぼコンクリートかなんかで作られた壁のようだ。
「こんな巨大なコロニーは見たことが無い。
完全な城塞。そんな感じだ。
迂回して爆心地を目指した方が無難な気がするが」
「実はな」
大久保の言葉に視線を向けて、続く言葉を待つ。
「衛星写真によると、爆心地を取り囲むように巨大な一つのコロニーが形成されている。
支配者の素性は分かっていないが、おそらく教会だろう」
「つまり、それって、教会が支配しているであろうこのコロニーを通り越えないと、爆心地にはたどり着けないって事か?」
大久保は黙って、頷いた。
「政府や軍が爆心地に向かわせた者たちは、このコロニーで捕らえられた?」
「そう考えるのが、自然だろうな。
爆心地には誰も行かせない。そう言う意図を感じずにいらないんだ」
元々、大久保は俺の父親が教会の教祖で、俺たちと一緒なら、無事に教会の勢力をやり過ごせると考えていた。が、そんな事実は無い。
神の意思を取次ぐ者もたぶん違う。そう、たぶん。
凛の顔がちょっと浮かんだが、頭をくるくる振って、その疑惑を頭の中から振り落とす。
コロニーの巨大さから言って、中にいる教会の信者の数は計り知れない。しかも、爆心地に向かう者を阻む意図があるとしたら、俺たちがここを通り抜けることはかなり危険を伴う。
なずなは引き返させる事だってありだし、あかねの事も心配だ。
「あかね」
「なに?」
俺の言葉にそう答えたあかねは、すでに右手にあかねソードを握りしめていた。
「今から行くんだよね?」
「いや、だから、それ違うから」
今にも一歩踏み出しそうなあかねにそう言った。
「でも、ここまで来ちゃったんだから、行くしかないんじゃないかな。
凛ちゃんのためにも」
「無理しないで、とりあえず入ってみるだけでも必要じゃないかな?」
あかねに続けて大久保が言った意見はほっておいて、あかねを見つめる。にこりとした笑みの奥には、かたい決意が浮かんでいる気がする。
「分かった。
俺から離れるなよ」
「うん。
こんな感じでいいのかな?」
あかねが俺の腕に抱きついて来た。
いつものムニュッ感と、見上げるあかねの笑顔が俺を幸せにする。
俺はこの先のコロニーにどんな奴らがいても、あかねを守る。
「あかねちゃん。それじゃあ、颯太くんが戦えないんじゃないかな?」
「そっか、そっか」
なずなの突っ込みにあかねが俺の腕から離れた。ちょっと寂しい気がしたその瞬間だった。
新たなムニュッ感と温かさが俺の腕に伝わって来た。
「私の事も。ねっ?」
今度はなずなだった。見上げる笑顔。熱くなってきた胸の温もりが、下半身に降りてきそうになる。
「と、と、当然だよ。
は、ははは」
下半身が熱くなりそうなのをあかねに気づかれる訳にはいかない。残念だが、今はなずなから離れる事を決めた。
「守るために、あかねソードを用意しておくよ」
そう言って、なずなの腕を振りほどいた時、ほっぺを膨らませているあかねが目に入った。
「えぇーっと、あかね。監視カメラを勝手に斬りおとすんじゃないぞ」
巨大なコロニーを取り囲む壁の所々に設けられ、きっちり俺たちを捉えているらしい監視カメラに話題変えて、あかねの気持ちを逸らしてみた。とりあえず、それなりの効果はあったようで、あかねが普通の表情で答えた。
「ちょっと高すぎて、手が届かないよ。
肩車でもしてくれたら、届くかもだけど」
あかねを肩車。ちょっとしてみたい気もするが、監視カメラを斬りおとされてはたまらない。
「とにかく、無茶はだめだぞ」
そう言いながら、目の前に広がる壁を眺めてみた。
この壁は乗り越えれる高さのものではない。どこかに出入り口があるはずなのだ。
見渡せる範囲に出入り口らしき構造物は見当たらない。
「右か、左か?」
どちらに行くべきか、判断する材料を持たない俺の言葉に、あかねが話をなずなに振った。
「なずなちゃんは右か左かどっちだと思う?」
「右かな」
「じゃあ、それで」
あかねがそう言ってから、俺に視線を合わせてきた。じっと見つめているところから言って、何か言いたそうだ。
「なに?」
「なずなちゃんの勘だよ。
信じる? 信じないの?」
ただの勘とは言え、信じないとは言いにくいし、否定する根拠もない。
「信じてみていいんじゃないか?」
「なるほど。じゃあ、お兄ちゃんはなずなちゃんは女で、女の勘を信じた訳だぁ。
さっきのギュッで、何か感じたのかな?」
ちょっと意地悪そうなあかねの視線。
「あかねちゃん、何の話?」
意味ありげそうなあかねの雰囲気を察したのか、なずながあかねにたずねた。
「お兄ちゃんが言うには、私は女の子なので、私の勘は女の勘じゃないんだって。
だから、私の勘は信じられないんだって」
「女の勘。女の子? 女? 何が違うの?」
「それはお兄ちゃんによると」
慌てて、俺はあかねの口を手で塞いだ。
なずなとはまだ下ネタを言って笑える間柄じゃない。今、そんな話をされたら、軽蔑されてしまうじゃないか。
「あかね。その話はもういいから。
さっさと、行こうじゃないか」
俺の手の中で、あかねのほっぺが膨らんだのを感じた。一度あかねにやられた事をやり返してみたくて、そのほっぺに人差し指を突き立てながら、塞いでいた口から手を放した。
ぷふっ!
そんな音を立てて、あかねの口から空気が抜けた。
「お兄ちゃんのばかっ」
そう言って、ぷいっと横を向くあかねも可愛すぎる。
「右に向かうんだな?」
俺たちの世界に割って入って来たかと思うと、すたすたと右に向かって歩き始めた大久保になずなが続くと、あかねも続いた。壁に沿って歩くと、すぐに入り口が見つかった。
なずなの勘が当たったと言う事だ。
だからと言って、なずなが女の子じゃなくて、女だって事にはならない。
なぜだか、そう思いたくて、自分でそんな事を心の中で再確認した。
巨大なコロニーの壁のようなバリケード。そこに設けられていた入口はごく普通のドアだった。その横に設けられているのが、カメラ付きドアホン。そして、さらにご丁寧な事に監視カメラも壁の上部に設けられている。ドアはノブを持って、開けようとしたが、鍵がかかっているらしく、ピクリとも動かない。
強行突破と言う手段を除外したとしたら、鍵を中から開けてもらう以外手はなさそうだ。
「えぇーっと、これ押せばいいのかな?」
ドアホンのボタンに指を当てながら、戸惑う俺の前になずなが割って入った。
「こんなのは男の人より、女の子の方がいいと思うんだよね」
「確かに」
そう言って、俺が引き下がると、なずながドアホンのボタンを押した。
「はい」
「このドアの鍵、開けてくんないかなぁ」
なずなが小首を傾げて、にこりとしながら言うと、ドアからカチャリと鍵が開く音がした。
なずなのかわいさにこのドアを管理している者も、開けたくなったに違いない。
なずなの可愛さもあかねと同じで、どこの誰にでも通じる全国区レベルなんだろう。
うんうんと頷いている俺の腕をあかねがつかんだ。
「お兄ちゃん、行くよ」
「お、お、おう」
なずなは開いたドアの向こうに消えていて、大久保もドアをくぐり抜けようとしていた。そんな二人に遅れて、あかねと二人、教会支配下と思われる巨大なコロニーの中に入って行った。
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