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龍神様とあやかし事件
24、空
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狛犬の体がぐらりと揺れる。
ばたりと倒れこみ、必死でもがき立ち上がろうとするも膝から再び崩れ落ちた。
そのまま、湯気のような煙がぶわりと立ち上る。
「な……なにっ!」
まるで霧のようにあたりが霞みがかる。少しずつ、それが晴れるにつれ、薄い影が見えてくる。
「やっぱり……、貴方が狛犬だったのね」
そこにいたのは由美の家で見た白い芝犬、ブランだった。
ゆっくりと近づくと、狛犬が薄目を開けてかすれた声で小さく呟いた。
「……ふん。どうせならあの時噛み砕いておけばよかった……。しかし、今更申し開きもしない。殺すなら一思いにするがいい」
「たわけ。そんなことせんわ。俺がみなみに嫌われてしまうしな。命拾いしたのう、狛犬。俺の嫁の寛大さに、大いに! 感謝することだな!」
レンは偉そうにふふんと鼻を鳴らすと、眉をぎゅっとひそめた。
「しかし……、お前からは穢れの香りがするな。完全に自我を失ってはおらぬのは……、まあさすが鶴岡八幡の狛犬というべきかの? しかし何故にあやかしや人を襲うに至ったのだ?」
「……」
狛犬は黙ったままだ。
きっと話すには憚られるような内容なのだろう。
今しがた打ちのめされたレン相手に話すとは到底思えない。
私は膝を折って、狛犬に語りかける。
「私も知りたいです。貴方と一緒にいた由美は私の親友なんです。お願いです。どうか理由をお伺いできないでしょうか?」
「ふん……、なぜお前などに」
「確かに……、私を信用できないのは分かります。でも……、貴方がいることで由美が本当に楽しそうでした。ブランを……、彼女が前に飼っていた犬の名前ですが。その子を失って彼女は本当に悲しそうでしたから。それを笑顔にしたのはやっぱり貴方のおかげなんです」
「……。何故そう言える? わしはお前を襲ったのだぞ?」
「……そうですね。でも、さっき貴方が言った通り、私が由美の家にいった時に十分に私を襲えたはずです。私は油断してましたし、それに貴方は気配を悟られずに近づくこともできた。でも……貴方はそうしなかった。きっとそれは由美にとって私が特別仲良しだと気付いたからではないですか? 私が目の前でいなくなったらきっと由美はひどく悲しむと知っていたから」
私は思い出す。
『ゆきのした』で狛犬は本当に由美に懐いていた。
まるで最初から飼い主と飼い犬のようで。
多分、人を襲ってまで力を得ようとしていた理由はそこにある気がした。
「お願いです。話してくれませんか? ひょっとしたら何かお力になれることもあると思います」
「……」
狛犬がすっと瞳を伏せた。
そうして、ゆっくりと唇を開く。
「ちょうど、一年前のことだった。いつものように鳥居の横で狛犬としてお勤めをしていたのだが……」
その時にふわりと、犬の魂が漂ってきたのだという。
この世に未練があるものは死後すぐには三途の川へは向かわない。
本来であれば、迷った魂はすぐに導くのだそうだがその日に限っては話を聞くことにしたのだという。
「ブランは嘆いていた。突然自分が死んでしまったから、飼い主がたいそう悲しんでいると。そこでちょっとの間でいいから自分に化けて、彼女を慰めて欲しいと。そうすれば自分はすぐにでも成仏すると。普段であれば聞き流すのだが、何故だろうな。その必死さに、少しくらいは手を貸してやっても良いのだと思ったのだ」
「……でも、それがどうして?」
狛犬がすっと目を伏せる。
「憧れてしまったのだ……」
「え?」
「ブランの真似をし、彼女たち家族と一緒に暮らすうちに、狛犬としてではなく、ただ愛される感覚に焦がれた。不思議な感覚だった。狛犬として参拝客を見送り、我が主人である三柱に信仰が集まるのを見届ける毎日だったのに。誇りに思っていたお務めがある日急に色褪せて見えた。むしろひと時でも長く、彼女たちと一緒にいたいと思うようになった。彼女は優しい……。きっと、惹かれていたのだと思う。しかし、わしは鶴岡八幡の狛犬だ。そうである以上お役目を務めなければならない。俺の上には三柱が見張っている。決して逃げられはしない。そこで……わしは気付いたのだ。神くらいの力を欲すれば……例えば江ノ島の五頭竜のように人をくらえばいいのではないかと」
「それで襲ったのか? けしからんな」
「でもそれでどうして若草さんの親戚が?」
「むやみな殺生は好まない。そうすれば必然と力のある人間を狙うのが良いだろう? しかし……化け狸ごとをわしが見抜けないとは。まあ良い。これで全てだ。満足したであろう? さっさと一思いにするが良い」
狛犬はすっと目を閉じ、レンの反応を待っているように見えた。
「レン……?」
私はレンと狛犬の間にすっと立つ。
「なんだ? みなみ」
「言っておくけど、もうこれ以上この子に手を出すのはダメだよ!」
「はあ……、全く何をいうておるのだ。全くお前は本当にお人よしだのう……。まあ、どうやらこやつも少し穢れに毒されておるらしいし……。そういうことにしておいて、大目に見てやるとするか……」
そう話しながらふっと笑みを浮かべあう私たちの上から、絹を引き裂くような悲鳴が降ってきた。
「な……、ななな! なんじゃあこりゃあ!」
見ると、階段の上から鈴白さんが真っ青な顔をして見下ろしている。
視線の先にはぼろぼろの私と狛犬、レン。そして傾きかけた舞殿だった。
「な! なんてことをしでかしてくれたのだ! 五頭竜! たいそうな音がすると駆けつけてみれば……、わ……私の舞殿が……。そ、それに狛犬まで! ぐ! ぐぬぬ! なんという侮辱! 貴様のやったことは鶴岡八幡への冒涜ぞ! 今日という今日は許さん! 覚悟せい、五頭竜!」
顔を真っ赤にしながら鈴白さんは階段を降りてくる。それはまさに鬼神のごとく、目を血走らせながら一直線にこちらへとかけてくる。
しかしレンはけらけらと笑うだけだ。
「おお! これはいかんなあ。めちゃめちゃ怒っておるぞ、あやつ」
「も、もう! ちゃんと鈴白さんに謝らないと!」
「何故だ? 元はと言えば、こやつの監督不行き届きであろう? それをガミガミと言われるのは癪だ。逃げるぞみなみ」
「え……! わあっ」
返事をする間もなく、私は横抱きにされる。気を失ったら狛犬も私のお腹にぽんと乗せられた。
「な……なに。なに!」
「よく、捕まっておれよ!」
「え……! きゃ、きゃああっ!」
レンは勢いをつけて舞殿の柱を駆け上がると、そのまま屋根を全力疾走し、夜空へと舞い上がった。
ばたりと倒れこみ、必死でもがき立ち上がろうとするも膝から再び崩れ落ちた。
そのまま、湯気のような煙がぶわりと立ち上る。
「な……なにっ!」
まるで霧のようにあたりが霞みがかる。少しずつ、それが晴れるにつれ、薄い影が見えてくる。
「やっぱり……、貴方が狛犬だったのね」
そこにいたのは由美の家で見た白い芝犬、ブランだった。
ゆっくりと近づくと、狛犬が薄目を開けてかすれた声で小さく呟いた。
「……ふん。どうせならあの時噛み砕いておけばよかった……。しかし、今更申し開きもしない。殺すなら一思いにするがいい」
「たわけ。そんなことせんわ。俺がみなみに嫌われてしまうしな。命拾いしたのう、狛犬。俺の嫁の寛大さに、大いに! 感謝することだな!」
レンは偉そうにふふんと鼻を鳴らすと、眉をぎゅっとひそめた。
「しかし……、お前からは穢れの香りがするな。完全に自我を失ってはおらぬのは……、まあさすが鶴岡八幡の狛犬というべきかの? しかし何故にあやかしや人を襲うに至ったのだ?」
「……」
狛犬は黙ったままだ。
きっと話すには憚られるような内容なのだろう。
今しがた打ちのめされたレン相手に話すとは到底思えない。
私は膝を折って、狛犬に語りかける。
「私も知りたいです。貴方と一緒にいた由美は私の親友なんです。お願いです。どうか理由をお伺いできないでしょうか?」
「ふん……、なぜお前などに」
「確かに……、私を信用できないのは分かります。でも……、貴方がいることで由美が本当に楽しそうでした。ブランを……、彼女が前に飼っていた犬の名前ですが。その子を失って彼女は本当に悲しそうでしたから。それを笑顔にしたのはやっぱり貴方のおかげなんです」
「……。何故そう言える? わしはお前を襲ったのだぞ?」
「……そうですね。でも、さっき貴方が言った通り、私が由美の家にいった時に十分に私を襲えたはずです。私は油断してましたし、それに貴方は気配を悟られずに近づくこともできた。でも……貴方はそうしなかった。きっとそれは由美にとって私が特別仲良しだと気付いたからではないですか? 私が目の前でいなくなったらきっと由美はひどく悲しむと知っていたから」
私は思い出す。
『ゆきのした』で狛犬は本当に由美に懐いていた。
まるで最初から飼い主と飼い犬のようで。
多分、人を襲ってまで力を得ようとしていた理由はそこにある気がした。
「お願いです。話してくれませんか? ひょっとしたら何かお力になれることもあると思います」
「……」
狛犬がすっと瞳を伏せた。
そうして、ゆっくりと唇を開く。
「ちょうど、一年前のことだった。いつものように鳥居の横で狛犬としてお勤めをしていたのだが……」
その時にふわりと、犬の魂が漂ってきたのだという。
この世に未練があるものは死後すぐには三途の川へは向かわない。
本来であれば、迷った魂はすぐに導くのだそうだがその日に限っては話を聞くことにしたのだという。
「ブランは嘆いていた。突然自分が死んでしまったから、飼い主がたいそう悲しんでいると。そこでちょっとの間でいいから自分に化けて、彼女を慰めて欲しいと。そうすれば自分はすぐにでも成仏すると。普段であれば聞き流すのだが、何故だろうな。その必死さに、少しくらいは手を貸してやっても良いのだと思ったのだ」
「……でも、それがどうして?」
狛犬がすっと目を伏せる。
「憧れてしまったのだ……」
「え?」
「ブランの真似をし、彼女たち家族と一緒に暮らすうちに、狛犬としてではなく、ただ愛される感覚に焦がれた。不思議な感覚だった。狛犬として参拝客を見送り、我が主人である三柱に信仰が集まるのを見届ける毎日だったのに。誇りに思っていたお務めがある日急に色褪せて見えた。むしろひと時でも長く、彼女たちと一緒にいたいと思うようになった。彼女は優しい……。きっと、惹かれていたのだと思う。しかし、わしは鶴岡八幡の狛犬だ。そうである以上お役目を務めなければならない。俺の上には三柱が見張っている。決して逃げられはしない。そこで……わしは気付いたのだ。神くらいの力を欲すれば……例えば江ノ島の五頭竜のように人をくらえばいいのではないかと」
「それで襲ったのか? けしからんな」
「でもそれでどうして若草さんの親戚が?」
「むやみな殺生は好まない。そうすれば必然と力のある人間を狙うのが良いだろう? しかし……化け狸ごとをわしが見抜けないとは。まあ良い。これで全てだ。満足したであろう? さっさと一思いにするが良い」
狛犬はすっと目を閉じ、レンの反応を待っているように見えた。
「レン……?」
私はレンと狛犬の間にすっと立つ。
「なんだ? みなみ」
「言っておくけど、もうこれ以上この子に手を出すのはダメだよ!」
「はあ……、全く何をいうておるのだ。全くお前は本当にお人よしだのう……。まあ、どうやらこやつも少し穢れに毒されておるらしいし……。そういうことにしておいて、大目に見てやるとするか……」
そう話しながらふっと笑みを浮かべあう私たちの上から、絹を引き裂くような悲鳴が降ってきた。
「な……、ななな! なんじゃあこりゃあ!」
見ると、階段の上から鈴白さんが真っ青な顔をして見下ろしている。
視線の先にはぼろぼろの私と狛犬、レン。そして傾きかけた舞殿だった。
「な! なんてことをしでかしてくれたのだ! 五頭竜! たいそうな音がすると駆けつけてみれば……、わ……私の舞殿が……。そ、それに狛犬まで! ぐ! ぐぬぬ! なんという侮辱! 貴様のやったことは鶴岡八幡への冒涜ぞ! 今日という今日は許さん! 覚悟せい、五頭竜!」
顔を真っ赤にしながら鈴白さんは階段を降りてくる。それはまさに鬼神のごとく、目を血走らせながら一直線にこちらへとかけてくる。
しかしレンはけらけらと笑うだけだ。
「おお! これはいかんなあ。めちゃめちゃ怒っておるぞ、あやつ」
「も、もう! ちゃんと鈴白さんに謝らないと!」
「何故だ? 元はと言えば、こやつの監督不行き届きであろう? それをガミガミと言われるのは癪だ。逃げるぞみなみ」
「え……! わあっ」
返事をする間もなく、私は横抱きにされる。気を失ったら狛犬も私のお腹にぽんと乗せられた。
「な……なに。なに!」
「よく、捕まっておれよ!」
「え……! きゃ、きゃああっ!」
レンは勢いをつけて舞殿の柱を駆け上がると、そのまま屋根を全力疾走し、夜空へと舞い上がった。
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