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推しのためなら、解決してみせましょう!
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数週間後、私はある場所にアルフレッドを呼び出していた。
「一体なんなんだ?」
「まあそう焦らずに。これからご案内します」
私はアルフレッドを連れ出して敷地内へと入る。
広大な土地には、煉瓦造りの大きな建物がいくつも並んでいた。
「見た所……ただの工場のようだが?」
「はい。仰る通り、先日までこの煉瓦造りの大きな建物には織物の工場が入っておりました」「先日まで?」
「ええ。私が丸ごと買い取ったんです」
「買っただと?」
驚愕するアルフレッドに私は頷く。
「王宮から遠すぎず、近すぎもしない。それに広大な敷地だけでなく、近くの土地も買収の手はずを進めております」
「な……なぜそんなことを? お前は一体何をする気なんだ?」
「学校を作るんですわ」
「学校?」
「はい。表向きは国内から優秀な学生を集め、国益になる人材を育てるのが目的です。そしてアルフレッド様にはこの学校の後援を務めていただきます」
「なぜ俺が?」
「アルフレッド様が後援すれば、視察という名目がつきます。それにここはシャルトワース家が100パーセント出資する私学ですから。他の貴族が許可なくここに立ち入ることは絶対に許しません。つまり……、アルフレッド様は邪魔が入らずにここで勉強できるってことです」
「しかし……俺が後援になるくらいなら国の金を使っても……」
私はきっぱりと首を振る。
「それはなりません。もし国庫を動かすのであれば他の貴族が立ち入る理由になります。今、アルフレッド様は微妙なお立場。周りをあまり刺激してはなりません。それに……、私のお金だったら好きなようにあれこれ出来ますし、貴族がもしカチコミに来てもぶっ飛ばしてみせますわ!」
「は……はあ。そうか。しかし、これだけ大きな建物だ。金もだいぶかかったことだろう?」
「ふふっ! お任せあれ! このために大口契約を立て続けに制約して参りましたの! 心配する必要はございませんよ!」
「……そうか」
アルフレッドが建物を見上げる。
なんだかその表情は憑き物が取れたようなそんな顔だった。
「講師の選出やら、カリキュラムやら……まだ何も決まっておりませんが商売仲間から色々と紹介していただいているので……。おそらく三ヶ月くらい後には何かしら形になるのではないかと」
「……お前はすごいな」
「へ?」
振り返るアルフレッドの顔は穏やかだ。
王宮で見せたどこか張り詰めた表情ではなく。
きっとこれが彼の素の顔なのだと、感じるくらいに。
「俺はお前よりもはるかに力のある立場なのに出来ないと思って袋小路に入っていた。それをお前はいとも簡単にこうしてやってのける。何故……そこまで出来るんだ? 俺はお前に恥をかかせたんだぞ?」
「え……ええっと」
まあ推しのために頑張るなんてそんな形では言えないけれど。
「以前お伝えした通り。私はアルフレッド様に幸せになっていただきたいのです。そのためならば私、ちょっとくらいの障害など解決してみせます!」
「そこまでされるほど……俺はお前に」
「いえ。私は支えていただきましたよ」
画面の向こう側で何度も恋をして、味気ない日常に色をつけてもらったのだ。
それは何度も私を励ました輝かしい事実。
その恩返しと言ってはなんだけど、キャラクターたちの幸せのために頑張れるなら本望なのだ。
「お任せくださいませ。これからも私、ハッピーエンドのために奮闘いたしますので!」
そう言って私はアルフレッドと笑った。
ちっとも疑わなかった。絶対に上手くいくと、信用していた。
だが、この時すでに私たちを脅かす新たな火種が確実に私に近づいていたのだった。
「一体なんなんだ?」
「まあそう焦らずに。これからご案内します」
私はアルフレッドを連れ出して敷地内へと入る。
広大な土地には、煉瓦造りの大きな建物がいくつも並んでいた。
「見た所……ただの工場のようだが?」
「はい。仰る通り、先日までこの煉瓦造りの大きな建物には織物の工場が入っておりました」「先日まで?」
「ええ。私が丸ごと買い取ったんです」
「買っただと?」
驚愕するアルフレッドに私は頷く。
「王宮から遠すぎず、近すぎもしない。それに広大な敷地だけでなく、近くの土地も買収の手はずを進めております」
「な……なぜそんなことを? お前は一体何をする気なんだ?」
「学校を作るんですわ」
「学校?」
「はい。表向きは国内から優秀な学生を集め、国益になる人材を育てるのが目的です。そしてアルフレッド様にはこの学校の後援を務めていただきます」
「なぜ俺が?」
「アルフレッド様が後援すれば、視察という名目がつきます。それにここはシャルトワース家が100パーセント出資する私学ですから。他の貴族が許可なくここに立ち入ることは絶対に許しません。つまり……、アルフレッド様は邪魔が入らずにここで勉強できるってことです」
「しかし……俺が後援になるくらいなら国の金を使っても……」
私はきっぱりと首を振る。
「それはなりません。もし国庫を動かすのであれば他の貴族が立ち入る理由になります。今、アルフレッド様は微妙なお立場。周りをあまり刺激してはなりません。それに……、私のお金だったら好きなようにあれこれ出来ますし、貴族がもしカチコミに来てもぶっ飛ばしてみせますわ!」
「は……はあ。そうか。しかし、これだけ大きな建物だ。金もだいぶかかったことだろう?」
「ふふっ! お任せあれ! このために大口契約を立て続けに制約して参りましたの! 心配する必要はございませんよ!」
「……そうか」
アルフレッドが建物を見上げる。
なんだかその表情は憑き物が取れたようなそんな顔だった。
「講師の選出やら、カリキュラムやら……まだ何も決まっておりませんが商売仲間から色々と紹介していただいているので……。おそらく三ヶ月くらい後には何かしら形になるのではないかと」
「……お前はすごいな」
「へ?」
振り返るアルフレッドの顔は穏やかだ。
王宮で見せたどこか張り詰めた表情ではなく。
きっとこれが彼の素の顔なのだと、感じるくらいに。
「俺はお前よりもはるかに力のある立場なのに出来ないと思って袋小路に入っていた。それをお前はいとも簡単にこうしてやってのける。何故……そこまで出来るんだ? 俺はお前に恥をかかせたんだぞ?」
「え……ええっと」
まあ推しのために頑張るなんてそんな形では言えないけれど。
「以前お伝えした通り。私はアルフレッド様に幸せになっていただきたいのです。そのためならば私、ちょっとくらいの障害など解決してみせます!」
「そこまでされるほど……俺はお前に」
「いえ。私は支えていただきましたよ」
画面の向こう側で何度も恋をして、味気ない日常に色をつけてもらったのだ。
それは何度も私を励ました輝かしい事実。
その恩返しと言ってはなんだけど、キャラクターたちの幸せのために頑張れるなら本望なのだ。
「お任せくださいませ。これからも私、ハッピーエンドのために奮闘いたしますので!」
そう言って私はアルフレッドと笑った。
ちっとも疑わなかった。絶対に上手くいくと、信用していた。
だが、この時すでに私たちを脅かす新たな火種が確実に私に近づいていたのだった。
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