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目の前に現れたのは……、私の最推し?
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「こ……これは夢だよね。勉強で疲れてるせいかも……! うん、二度寝しよ」
そうしてブツブツと呟き、ばさりとベッドに寝転んだその時だった。
「お……! お待ちください! まだお嬢様はおやすみ中で……」
「黙れ。もう日は昇っている。今日が何の日か分かっているだろう? 俺が来たというのにこの体たらくでは……」
ドアの外で何かガヤガヤしてるっぽい?
足音からして二人? くらいかな。
なんだろう……、妙にリアリティのある夢だ。
しかもなんか聞いたことのある声だな。
私の好きなキャラに似てる。
いやいや、推しの声が聞こえるだなんて私も高まってるな。
好きが高じると、夢にまで影響してしまうらしい。
「あー……。でも私はやりかけのルート攻略しなきゃいけないから。……寝よ寝よ」
夢から覚めるには、夢の中ではもう一度眠ればいい。
いわゆるフィクションのセオリーに沿って、布団と一体化した私は眠りに誘われる……ことはできなかった。
「起きろ! 寝坊助!」
「ひっ……!」
バタンとドアが開いて、部屋中に凛としたイケメンボイスが響き渡る。
そして間髪入れずカツカツと布団に近づいて来る足音。
「へ……?」
ばさりと羽毛布団が取り去られる。
ふにゃりと瞼を開けると、至近距離にまるで顔面兵器のようなイケメンがいた。
イケメンはイケメンだ。
だが、顔はまるで悪役さながらに殺意を滾らせている。
「俺にここまでさせるとはいい度胸だな、リーザ。お前は、自分の立場を分かっていないようだ」
「あ……貴方は」
弾かれたように一気に目がさめる。
私の体をベッドに押さえつけるかのような体制で私を睨みつける青年。
鋭い眼差しに射抜かれそうになる。
ある種危機的な状況なのにドキドキしてしまうのは、仕方ない。
誰だって推しキャラが目の前にいたら、理性とか吹っ飛ぶに決まってるでしょ?
「あああああ……! アルフレッドぉ!!!!」
「様をつけろ。寝坊助。不敬だぞ? それに俺のことを気安く呼ぶのはやめろと言ってるはずだ」
氷のように冷たい眼差しを向けながら彼は言った。
アルフレッド・アシュフィールド。
ハッピネス王国の王位第二位の継承者にして、原作では人気一位のキャラで青い髪の王子だ。
冷酷俺様系キャラをしておきながら、攻略ルートではドロドロに甘いセリフのオンパレードで目も耳も肥えた乙女ゲーユーザーの心を鷲掴みにしている。
かく言う私も最推しであり、誕生日には親に隠れてグッズで祭壇を作り祝ったものだ。
目の前に本人がいるなんて……、これは夢か幻なのか?
「でも……どうして?」
思わず呟いた私にアルフレッドが片眉を釣り上げる。
「は? 招待状を出しただろう?」
「しょ……招待状?」
「今日は茶会だと忘れたのか? ふん……、本来なら他の人間を寄越すところだが……」
「え……、でもなんで私に?」
困惑する私にアルフレッドが吐き捨てる。
「仕方ないだろう? お前は曲がりなりにもハッピネス王国に連ねる名門貴族、シャルトワース家の令嬢なのだからな。俺だってこんな面倒なこと好き好んでするか」
「ちょ……ちょっと待って!」
ハッピネス……?
シャルトワース?
聞き慣れた単語に私の頭がひやりと活動停止する。
もしかして……、もしかして!
ベッドから跳ねるように飛び起きて、部屋の隅にある大きな姿見に体を映す……。
「んなっ! 何これええええ!」
鏡に映った自分の姿。
平凡な女子高生というにはあまりにもアップデートした容姿に絶句する。
亜麻色の髪に透き通る様な白い肌、そして少しつり上がった青い瞳。
顔立ちものっぺりとした日本人顔じゃあない。
(う……嘘でしょ!?)
なんども見たから言わずとも分かる。
ロマプリの悪役令嬢にして主人公の最大のライバルキャラ。
リーザ・シャルトワースがそこにいた。
そうしてブツブツと呟き、ばさりとベッドに寝転んだその時だった。
「お……! お待ちください! まだお嬢様はおやすみ中で……」
「黙れ。もう日は昇っている。今日が何の日か分かっているだろう? 俺が来たというのにこの体たらくでは……」
ドアの外で何かガヤガヤしてるっぽい?
足音からして二人? くらいかな。
なんだろう……、妙にリアリティのある夢だ。
しかもなんか聞いたことのある声だな。
私の好きなキャラに似てる。
いやいや、推しの声が聞こえるだなんて私も高まってるな。
好きが高じると、夢にまで影響してしまうらしい。
「あー……。でも私はやりかけのルート攻略しなきゃいけないから。……寝よ寝よ」
夢から覚めるには、夢の中ではもう一度眠ればいい。
いわゆるフィクションのセオリーに沿って、布団と一体化した私は眠りに誘われる……ことはできなかった。
「起きろ! 寝坊助!」
「ひっ……!」
バタンとドアが開いて、部屋中に凛としたイケメンボイスが響き渡る。
そして間髪入れずカツカツと布団に近づいて来る足音。
「へ……?」
ばさりと羽毛布団が取り去られる。
ふにゃりと瞼を開けると、至近距離にまるで顔面兵器のようなイケメンがいた。
イケメンはイケメンだ。
だが、顔はまるで悪役さながらに殺意を滾らせている。
「俺にここまでさせるとはいい度胸だな、リーザ。お前は、自分の立場を分かっていないようだ」
「あ……貴方は」
弾かれたように一気に目がさめる。
私の体をベッドに押さえつけるかのような体制で私を睨みつける青年。
鋭い眼差しに射抜かれそうになる。
ある種危機的な状況なのにドキドキしてしまうのは、仕方ない。
誰だって推しキャラが目の前にいたら、理性とか吹っ飛ぶに決まってるでしょ?
「あああああ……! アルフレッドぉ!!!!」
「様をつけろ。寝坊助。不敬だぞ? それに俺のことを気安く呼ぶのはやめろと言ってるはずだ」
氷のように冷たい眼差しを向けながら彼は言った。
アルフレッド・アシュフィールド。
ハッピネス王国の王位第二位の継承者にして、原作では人気一位のキャラで青い髪の王子だ。
冷酷俺様系キャラをしておきながら、攻略ルートではドロドロに甘いセリフのオンパレードで目も耳も肥えた乙女ゲーユーザーの心を鷲掴みにしている。
かく言う私も最推しであり、誕生日には親に隠れてグッズで祭壇を作り祝ったものだ。
目の前に本人がいるなんて……、これは夢か幻なのか?
「でも……どうして?」
思わず呟いた私にアルフレッドが片眉を釣り上げる。
「は? 招待状を出しただろう?」
「しょ……招待状?」
「今日は茶会だと忘れたのか? ふん……、本来なら他の人間を寄越すところだが……」
「え……、でもなんで私に?」
困惑する私にアルフレッドが吐き捨てる。
「仕方ないだろう? お前は曲がりなりにもハッピネス王国に連ねる名門貴族、シャルトワース家の令嬢なのだからな。俺だってこんな面倒なこと好き好んでするか」
「ちょ……ちょっと待って!」
ハッピネス……?
シャルトワース?
聞き慣れた単語に私の頭がひやりと活動停止する。
もしかして……、もしかして!
ベッドから跳ねるように飛び起きて、部屋の隅にある大きな姿見に体を映す……。
「んなっ! 何これええええ!」
鏡に映った自分の姿。
平凡な女子高生というにはあまりにもアップデートした容姿に絶句する。
亜麻色の髪に透き通る様な白い肌、そして少しつり上がった青い瞳。
顔立ちものっぺりとした日本人顔じゃあない。
(う……嘘でしょ!?)
なんども見たから言わずとも分かる。
ロマプリの悪役令嬢にして主人公の最大のライバルキャラ。
リーザ・シャルトワースがそこにいた。
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