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第三章 悪役令嬢は学院生活を送る

167.悪役令嬢は不埒者達の様子を見に行く

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「なんだこれ?」

 と、声を出したのは中層に入ってすぐにアリエルが零した言葉だ。

 色々と構造を弄りました結果だ。機能的な部分は複雑すぎて出来る事を出来る方法でやった感が強いせいで、見た目もあまりよいとは言えないし、他の冒険者が入れないようにしているし、まぁ、安全地帯セーフゾーンでは多少問題になっていたようだけど、知ったこっちゃない状況なのよ。

 そんな事を思いつつ私は苦笑するのであった。

「まぁ、明日には元通りに戻るハズだから気にしない方向でお願い」
「で、初めはどいつから?」

 と、アリエルが端末を見ながら訊いて来る。彼女の手元には地図が表示され、魔導洞窟ダンジョン内の侵入者がポインタとして表示されている。私は先ずは地図上の端側にいる一人でいる、性別は男性で魔力量は高め――だったハズだけど、現在の数値表示は私が見た時よりも随分と減っているってレベルじゃないわね。と、思い私は他の者にポイントを合わせて情報を確認する。

「まずはここから近い場所に三人いるところ……かしら。たぶん全員魔力欠乏で倒れてるかも」

 私がそう言うと閣下が「だろうな」と、小さく言った。うん、もっと早く言ってほしかったけど、まぁ、死んでないからいいか。

 そんな事を思いながら、管理者権限を使ってタスク順を入れ替え、目的の場所が開く前に移動する。

 魔導洞窟ダンジョンとは本当に不思議な場所である。そして、とってもファンタジックに目の前で地形が変わっていき、目の前にあった壁がにゅるんと移動して道が開ける。

「な、なんだか、にゅるっと開きましたよ!」

 ウィンディが驚きに声を上げる。うん、にゅるんと移動したわね。全く、にゅるんってなんだ? どう見てもレンガと土を塗ったっぽい壁だったのだが、ジェル状――いや、まるでスライムみたいな感じだった。場所によって状態の設定なんかもあるのかもしれないけど、そこまでは分からない。

「ま、まぁ、そういうこともあるんじゃない?」
「なんで疑問形? リアが分からなかったら、誰も分からないぞ?」
魔導洞窟ダンジョンなんて、そんなもんだと思うしかないわよ。私にだって分かる事と分からない事があるのは当然でしょ」

 などと言い合っていると閣下が「そんな言い合いをしている場合では無いと思うが」と、言われて私とアリエルは「そうだった」と、ハモり目の前に倒れている男達の元へ向かった。

 因みに即座に捕獲用の魔力の鎖を放って倒れている男を縛り上げた上で生存確認をファウィラに頼む。

「典型的な魔力欠乏症の症状ですねぇ。どれくらい持つか分かりませんが、出来るだけ早く魔力が回復できる環境へ連れて行かねばダメでしょう」

 まぁ、だよね。では、どうするか? と、いうことで昨晩アリエル達と実験を行った新製品を取り出す。

「仕方ありませんので、昨晩、実験的に作った魔力回復用の飲料を使用しましょう」

 そう言って、私は小さな小瓶を意識の無い男の口に無理やり突っ込む。効果が如何な感じか、正直分からないけど。男は驚くレベルの刺激物にビクビクと身を震わせ、怪しげな液体が身体中に染み意識を取り戻すに至る。

「な、な!?」

 閣下は思わず驚きの表情を見せる。うん、ポカンとした顔も良いわ。と、男は突然に意識を取り戻して喉を詰まらせ、ジタバタと身悶えしつつ咳込んでいた。

「とりあえず、一人ずつ行きましょうか?」

 私がそう言うと、閣下が手を出して私を制止する。

「いや、ここで時間を使うのは無駄というものだろう。死なれても情報が取れぬから、全員助けれるなら、頼めるか?」
「問題ありません。では、こちらの縄で縛り上げて、猿轡もしておきましょう」

 とりあえず、ここの三名の魔力欠乏症対策の飲料をぶち込んで、縄で縛り上げ、猿轡を噛ませて放置し、次の現場へ向かうのであった。

「それにしても、先程の液体は一体なんなのだ?」
「魔力回復について話を聞いたことで、これは作っておかねばと昨晩色々と実験した結果ですね。元々、似たような物を作ってはいたのですが私だけでは先に進んでいなかったところ、魔物素材など沢山余っていたので丁度良かったです」

 エルーサからも色々と希少な素材を提供を受けたが、ウィンディとアリエルが持つ素材が役に立った。今回の実験で作った液体はマーフィアナの樹海で彼女らが大量に刈り取ったエングリンガゲレルという名のキノコの魔物の体内にある樹液袋から採れる液体を主成分とした、劇的魔力回復薬だ。

 問題点もまだまだあって、マズいというレベルでは無く、癖の強い酸味とカビっぽい臭いが特にヤバかった――のだけど、私やアリエルでさえも魔力がグンと回復するくらいの効力があったからこそ、今回投入したわけだけど。魔力回復付気付け薬となってしまっている。

「気付け薬としても有効でしてよ。オホホホホ」

 とりあえず、ごまかしておこう。しかし、閣下の視線が痛いが、時間的余裕もないので今回は仕方ないと思う事にするのであった。
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