悪役令嬢同盟 ―転生したら悪役令嬢だった少女達の姦しい日々―

もいもいさん

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第三章 悪役令嬢は学院生活を送る

161.悪役令嬢は母へ通信の準備をする

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 ひと通り話を終えて、私は多重の防音と認識阻害を解いて、ナスターシアに待たせて悪かったわね。と、伝えると彼女は申し訳なさそうな表情をして問題無いと伝えて来る。うーん、随分ションボリしているわね。まぁ、仕方ないか。

 そして、既に戻って来ていたエルーサがすぐに閣下がやってくる旨を伝えて来る。

「ありがとう。で、あのダンって人は?」
「クーベルト閣下と合流してから、再び外で監視に就くそうです」
「――まぁ、いいわ」

 そんなやり取りをしていると、戸を叩く音が聞こえ動こうとしたエルーサとナスターシアを私は止めて、自身の手で部屋の戸へ向かう。まぁ、誰の魔力かといのを感知するのって簡単な方法はあるけれど、相手に気付かれずにするというのにはコツがいるのだ。そう、戸の前に立つのが誰なのか、私は既に察知出来ている――まだまだ精進が必要だけど、これはこれで結構面白い。

 そして、戸を静かに開け、私の姿を見た閣下が驚きの表情を一瞬だけ浮かべ、苦笑する。

「さすがに不用心ではないかい?」
「いいえ、閣下がそこに立っているのは分かっていましたから。あら、ファウィラ様意外の皆様は?」
「ああ、彼等には別にやる事があるので、後で外で集合するように伝えてある」

 なるほど、まだアレ等の処理が終わってない。と、いうことですか――ま、それは私が考える必要は無いので思考を即座に止めて閣下を部屋の中へ入れる。一応、ひとり連れて来るとすれば盾役のルーティラか回復役のファウィラのどちらかだとは思っていたけど、まぁ、何にせよ過剰戦力な私達を考えると閣下一人でも問題は無かったと思うけれど、風聞とかの問題で連れて来た可能性が高いだろう。

「では、ひとまずあちらのテーブルの方に席を用意しますので、お座りください」

 と、私の言葉に閣下は「うむ」と短く言って席へ座る。エルーサは素早く防音の魔道具を使用して室内に結界を張る。

「ファウィラ様に一々申し上げる必要は無いとは思いますが――」
「はい、分かっておりますエステリア様」

 彼女の柔らかい雰囲気の声がいつもよりキリリとしているのは冒険者としてよりも、貴族の閣下の部下としての返答だからだろう。まぁ、それでもおっとりした雰囲気はそのままだが、彼女が腰にぶら下げている物騒な武器を見れば回復役というより戦闘要員だな。と、私は思うのであった。

「では、閣下。こちらの魔道具を使いますね」

 下層や中層で幾度か私が使ったのを見ていた閣下はやや緊張した面持ちでコクリと頷き、私はそれを見て、通信の魔道具をテーブルに出し、起動する。

 魔力の波がバッと広がり、相手の魔力が飛んでくるのを私は感じ――なるほど。と、思いつつ魔道具に向き合う。

「お母様、エステリアです。クーベルト辺境伯閣下をお連れしました」

 そして、即座に返事が聴こえる。うーん、魔力波の送受信って意外と魔力の波を直に感じる事が出来ることを考えると、簡単にハッキング出来そう――だけど、かなりの技術が必要ではあるけど、知識と気付きさえあれば理解する人間が出てきそうな雰囲気はある。今後はそう言った部分の暗号化的な考えが必要かもしれない。

「丁度良いタイミングでしたね。周囲に人はどれくらいいるのかしら?」
「聞いても大丈夫な面子を仰って下されば」

 私がそう言うと、少し間を置いて返事が返ってくる。

「クーベルト辺境伯と貴女、後はアリエル殿下以外は席を外して貰えるかしら?」

 それを聞いて私が視線を向けるとアリエルが小さく息を吐き、私の傍へやって来る。エルーサとナスターシアはスッと私達から離れ、ウィンディはオロオロしつつそれを見て同じように離れ、ファウィラもそれに合わせる。それを確認してから、防音の魔道具を――今日は二重起動しまくりだ。と、思いつつさらに認識阻害の魔法を行使した上で通信の魔道具に出力強化ブーストの術式を組み込む。

「お母様。準備出来ました」
「ありがとう。では、今回の件についてクーベルト辺境伯から報告頂けるかしら?」

 と、お母様の声はどこまでも冷たい雰囲気を感じた。随分怒っている感じが伝わってくる。

 そして、これまでの経緯を閣下は落ち着いた雰囲気でゆっくりと報告していくのであった。
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