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第三章 悪役令嬢は学院生活を送る

155.悪役令嬢を狙った者達の末路

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 男は真っ暗な閉鎖空間で考えていた――

「一体何が起こった?」

 小さな呟きだが、何度考えても意味が分からない。依頼主からの情報ではとある国から逃げて来たという者達だと聞いていた。確かに貴族や騎士団に所属しているような者達ばかりだったが、年若い娘や少女などもいた。

 情報よりも仲間が多かったのは魔導洞窟ダンジョンに入る前か入った後に仲間になったのか――いや、その辺りはなんとも言えぬ話だ。

 それ以上に現在閉じ込められているような罠がこの魔導洞窟ダンジョンにあった事だ。獲物ターゲット達を分断出来たのも偶然ではあるが、我が閉じ込められているのも果たして偶然か?

 考えれば考える程に分からない。あの時、まるで魔導洞窟ダンジョンに意思があるように思えた。完全に狙われていたような感覚――そうだ。何者かに見られているような感覚を感じた。

 我が『白金』の冒険者となったのも、この超感覚を持っていたからなのだが、現在も監視されているような不快感を感じ続けている。どの魔導洞窟ダンジョンでもこのようなことを感じた事は無い。初めての経験だ。

 それに魔導洞窟ダンジョンというのは何故かある程度の明るさを持った特異空間だと認識していたが、今はひとつの灯さえもない真っ暗な空間だ。密閉空間であれば空気が無くなっていくハズなのだが、それも無く既に一日以上経過している。

 薄い壁であれば破壊するという方法もあるのだろうが、残念ながらそういった破壊的な方法論は我は得意では無い。しかし、このままここでジッとする意味も見いだせない――のだが、どう考えても脱出路は存在していない。

「ふむ……まさか、このようなところで……」

 と、我は思わず呟きながら座り大きな溜息を吐きつつ、これからどうするのか、どうなるのかを延々と考えて不安を紛らわすのであった。



 ■ ◇ ■ ◇ ■



「た、助けてくれぇ!!!」
「ったく、うるせぇ。いい加減にしろ!」

 どちらも煩いと思いながら、暗闇の中で男は小さく息を吐く。正直、思いっきり溜息を吐いてやってもいいのだ――が、現状を思えばそれどころではない。

 俺達はあの男に騙されたのだろうか? 極上の餌とあの男を信じてしまったのが運の尽きか?

 もしかすると、今回の作戦に乗った奴ら全員が同じように閉じ込められている可能性を考えて、即座に否定する。

 どう考えてもあり得ねぇ。はぁ、全くついてねーな。

 男はそんなことを考えながら、未だにやかましくしている奴らの声を聞きながら、小さく溜息を吐くのだった。



 ■ ◇ ■ ◇ ■



 暗闇の中、男は深く深呼吸をする。


 思考を巡らすほどに落ち着く事が出来たことで、腰を落ち着けて状況を再確認する。

 『白金』の冒険者である『幻魔』――それは一人の冒険者を指す言葉では無い。それを知る者は本当に少ない。誰か一人でも罠に掛かっていなければ助けが来るに違いないと思うのだが、経過した時間を考えると難しい状況という事を示している。

「……全く」

 と、呟くが、状況が良くなるとは思えない。依頼主からの情報ではどこかの国から逃げて来た逃亡者で、子娘を確保出来れば他はこちらの自由に出来るという話であったが、完全に我々はしくじった可能性が高い。

 しかし、この魔導洞窟ダンジョンが特殊なのは幾度も来たことがあるから知っているが、目の前で魔導洞窟ダンジョンが動くような現象は初めてだった。

 しかも、アレは意思を持っているかのように自分と閉じ込めたのだ。正直、理解が追い付かない現象が起こったのだ。

「何かの魔法か? しかし、魔導洞窟ダンジョンに影響を及ぼす魔法など存在するのか?」

 全くもって分からないが、ここに閉じ込められ死を待つだけと考えると絶望感がある――が、そのような気持ちは既に通り越した。ひととおり叫び、暴れても意味が無い。そう、もうそういう時間は通り過ぎたのだ。

「ふむ、どこで間違った? 見知らぬ罠でターゲットを分断した時か? いや、分からないな。誰か助かったヤツはいるのか?」

 声に出してみるが、意味は無いだろう。

 しかし、声に出さねばまた不安に駆られるからだ。思考を巡らせ、声を出し、考え、声を出す。高い魔力を持った者であれば二日くらいは狂う事無く耐えれると思うが、そうでない者は確実に狂うだろう。こんな場所に閉じ込められてしまえば。

 そんな事を考えつつ、再度深く深呼吸をする。

 どうにか、助かる方法を考えるのだ――
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