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第三章 悪役令嬢は学院生活を送る

150.悪役令嬢の専属メイド達はあり得ないモノを見る

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 そして、私達は敵を嵌める為に敢えて袋小路へ向かった――

 筈なのですが、不思議な事が起こったのです。

「どうして……だ?」

 袋小路へ入った途端に入った側の道がふさがり、目の前は行き止まりだったハズなのに道が広がっていく。

「変化していく? そんなこと、ありますか?」
「い、いや……滅多に無いワケではないけど、こんなに都合よく道が変わる現象が起こるなんて、普通は無いハズ」

 ロディ様も困惑している様子。人が焦っていると、ふと自分は冷静になったりしますよね。はい、今の私がまさにそうです。不思議な現象が起こったのは、まぁ、いいでしょう。気のせいです。と、いうことにしておきましょう。

 なんとなく、この意図的な動きというのが、私にはお嬢様が関わっているような気がしてならないのです。だからこそ、妙に落ち着いているのかもしれません。いえ、落ち着いているわけではありません、妙な高揚感があります。

「皆様、道が真っ直ぐに下の階層へ続く道に繋がっています」
「……だが、行っても大丈夫だろうか?」

 ロディ様はこういう時でも慎重派です。そういう部分は好感が持てますね。でも、ここは行くべきだと私の直感が言っています。

「はい、ここは行くべきだと思います。壁に囲まれていて、先に道があそこしかないのであれば、逆にチャンスなのではないでしょうか?」

 私の言葉にロディ様はハッとして、焦りや不安が薄らいだようです。目の輝きが戻っていく感じがあります。思ったより目力ありますね。まつ毛も長くて――と、何を考えているのでしょうか、まったく。

「確かに君の言う通りだね。皆、進もう!」

 と、彼の号令に皆が警戒をしつつも、先へ進んだ。


 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 不思議な現象は此処では終わらない。次のフロアも何故か一本道になっており、まるで誰かが私達を導いているとしか思えない状態で、逆に不安になってきます。

「ルーさん、本当に大丈夫だと思うかい?」
「はい、多分ですが大丈夫かと思います」

 私はハッキリと答える。普通、こんな返事をしたら頭がどうにかなったのかと思われるかもしれませんが、私は確信めいたモノを感じています。なんというか、現在、この魔導洞窟ダンジョンが持っている意思みたいなモノが分かります。と、いうか思考的クセというか、優しすぎる感じとか……。はぁ、お嬢様。一体何をやっているのでしょう。

「このままいけば、本日中に下層まで行けるかもしれませんね」

 そう言うと、ウィラ様が楽しそうに手に持っていたメイスを腰のベルトに固定して「ですねぇ」と、少し気の抜けた声で言った。

「でも、気になったのですけど、敵と目された【白金】クラスの冒険者『幻魔』はどうなったのでしょうか?」
「さぁ、とりあえずよほどの事がなければ、私達が来た道には出れないのでアレ以上は追ってこれないのでは無いでしょうか?」

 なんとなくではありますが、我が主がなんとかしていると思うのですよね。あくまでも直感で、としか言えませんが。しかも、こういうのは凄い機密性の高い事象が起きているヤツですよね。正直、助かったという気持ちもありますが、お嬢様は何かを必ず起こしてしまうのですよね。

 私はとりあえず面倒な事は後回しに考えようと思考を切り替える。

「魔物もいないようですので、急いで先へ進みましょう」
「確かに、それがいいのかもね」

 そう言うと、ロディ様は少し考えるような仕草をしてから剣を鞘に納める。それを見た皆が警戒態勢を解いて、皆、歩を進める速度を速めた。
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