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第三章 悪役令嬢は学院生活を送る

149.悪役令嬢の専属メイド達は敵に追い詰められる?

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 現在、私達は『アンダンテール大洞窟』の下層を目指して移動している最中ですが、まだ18階層に居ます。本来の予定であれば、一日に4階層から6階層移動する事も視野に入れていたのですが、一日で3階層を進むのがやっとの状況です。

 上層に比べて1階層の広さが倍以上違うというのもありますが、元々魔導洞窟ダンジョンが生み出した罠は良いのですが、敵が設置したであろう罠が組み合わさることで、非常に面倒で慎重に進まなければならなくなったのも原因だ。

 と、いいますか、いつの間に回り込んだのか――もしくは複数の人間がいるのか。非常に考えなければならない事が多い。正直なところ、様々に考えて動くのは私向きでは無いので困りどころです。

 単純に考えれば事前に準備されていた? でも、そうなると『黒狼』様達は事前に中層へ来ていたという話がおかしくなる。彼等がお嬢様を陥れる理由は無く、王女殿下やお嬢様と敵対するにはデメリットが多すぎるワケです。

 【白金】クラスの冒険者『幻魔』が転移の魔法を扱える? いえ、それは有り得ません。伝説でしか語られる事の無い超級クラスの魔法です。お嬢様は論理的には出来そうだと仰っていましたが、この世の理を曲げる魔法という力において、空間転移というのはリスクが高すぎるそうです。

「敵はひとりではないかもしれませんね」

 と、ロディ様は魔物を掃除しつつ言いました。まぁ、そう考えるのが一番素直だと、私も思います。

「ですね。念話のような魔法や魔道具を使っている可能性はあるでしょう」

 【白金】クラスの冒険者と考えれば無いとは言えませんが、可能性としては最も高いと考えるのが良いでしょう。

 私達の後方から来る嫌がらせと私達が行く先に用意されている悪意を考えれば同じように性格は最悪だと思いますが、同一人物とは少し思えない感じがあるのですよね。

「ですね。チラチラと気配を見せる『追跡者』は随分と目立ちたがりな感じがあるのに罠を置いている『罠師』は目立ちたくない癖に承認欲求の高い人物に思えます」

 と、ウィラ様が落ち着いた雰囲気で魔物の血が付いたメイスを一振りして血を払いながら言った。ストレスの所為か完全に前衛のように戦っています。皆様、慣れているようで当たり前のように振る舞っていらっしゃいます。

 私も慣れてきたと言いますか――本当に慣れとは恐ろしいモノです。ええ、なんでしょうウィラ様も行動がとても自然体なのが受け入れやすさを作っているようにも思えます。

 それにしても『追跡者』と『罠師』ですか……なかなかに良い表現ですね。

「……敵が二人以上いると仮定すれば、もう少し動き方を変える事も出来るかな?」
「ロディ様は良い作戦がおありで?」
「良いかどうかは分からないけどね。結果として、どちらかの敵は炙り出せると思うよ」
「では、聞かせて頂きましょう――」

 私はロディ様の作戦がこのパーティー内だけで済むように結界の魔道具を使用し、ロディ様から作戦を聞き出すのでした。


 ◆ ◇ ◆ ◇


「――なるほど」
「理解しました」
「楽しみですね」

 と、私達はヤル気を漲らせ、作戦実行に動き出します。

 私は魔力探知で一定範囲の状況を再度確認し、周囲の情報をロディ様に伝えます。因みにウィラ様は私に支援魔法を掛ける事で一時的に能力の底上げを行ったおかげで、魔力的要素を含め、様々な情報を得る事が出来ました。

 意外と便利ですね。威力強化や魔力増強といった支援魔法――と、感心している場合ではありません。

 ロディ様はこのフロアの地図を確認しながら、地図上で変化があったポイントを確認しつつ、目的の場所へ移動する為の道筋を作っていきます。魔導洞窟ダンジョン『アンダンテール大洞窟』では一定期間ごとに内部の道が変わる不思議な作りになっているのですが、急激に変化するわけでは無く、一定期間ごとに少しづつ変化するのが特徴で、古い地図と突き合わせる事でどこが変化したかが分かるそうです。また、フロア上に必ずある場所というのは絶対的に変化しないという法則も存在するらしいので、そこに罠を事前に仕掛けている可能性などもロディ様は仰っていました。

 だからこその作戦で、私達は敵の動きに合わせてワザと追い込まれたように袋小路へ向かいます。そして、基本的に彼等が使う罠は魔術的な起動術式が仕込んである事は分かっているのです。そもそも、私達は仕掛けられているほとんどの罠を解除して進んでいるのだから、相手もそれくらいは分かっていると思うのですけどね……。

 さぁ、お楽しみはこれからですよ。
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