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第三章 悪役令嬢は学院生活を送る
142.悪役令嬢の専属メイドは中層を駆ける?
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私、【白銀】クラスの冒険者であるルーこと、エルーサ・フィンです。
現在、我が敬愛する主であるエステリア・ハーブスト様救出に向けて全力で『アンダンテール大洞窟』の中層11階層を進んでおります。『黒狼』様の部下達を叱咤激励しつつ、そう! 全力で向かっているのです!
「ル、ルーさん! ちょ、ちょっと……ペースを落としましょう!」
そう言いながら私について来れている彼はロディことクーベルト辺境伯領の第三騎士団長であるロベルト・ヒッテンハイム様です。この方は今回の面子では群を抜いてお強いのですが、私の焦りを分かっては下さらないご様子で、幾度もペースを落とせと言ってくるのです。
ああ、その間にお嬢様に何かあったらどうするのでしょうか?
「ああ、そうだぜお嬢ちゃん。アンタのペースに皆がついて来れなくなってきている。アンタが単独で行くってならアレだが俺達に協力を求めたんじゃねーのかい?」
「…………」
ダンことダンディバル・イドリアス様は少し太ましい感じの男ですが、私の速度《スピード》について来れるとはやりますね。しかし、ダンの言う事は間違ってはいませんので、仕方なく私は立ち止まることにしました。
「すまねぇなお嬢ちゃん。焦る気持ちは俺達も同じなんだ」
「……そうでしたね。失礼しました」
「もう一度、キチンと作戦を立てて動きましょう」
私はロディ様の言葉を聞いて静かに頷きます。どれもこれも、全部足手まといの子らが悪いのです。ハッキリ言って苛立ちしかありません。彼らは何故、足手まといになると分かっていながら、連れて来たのか疑問でしかありません。
「一応、私の方から君に謝罪をしておくよ。彼等を連れて来たのは問題があった――が、現状で彼等を上層に帰すわけにもいかない。かと言って、君ひとりで先に行かせるわけにもいかないのは分かってくれ」
確かに独りで先走った私も冷静さに欠いていたかもしれませんね。と、私は小さく息を吐いてから姿勢を正してロディ様に謝罪をする。
「いや、まぁ、謝られても困るが……受け取っておくよ」
そんな事を言っている間に彼等のメンバーが追い付いて来る。
「盾役の私を置いて行くなんて、酷いですわ」
「そいつはお前さんが重てぇから、しゃーない」
「くっ、ダン様酷いですわっ!」
それでも、巨大な盾と重そうな胸当て、手甲と足鎧を装備していても他の面子よりも早く追い付いて来ている事を考えると身体強化と運動能力はかなり高いでしょう。逆に小太りなのに動きがとても素早いダン様が少しおかしいと私は思います。
「ふぅ、やっと追いつきました」
と、ウィラさんが小脇に男の子ふたりを抱えてやって来ました。と、いいますか、なんだか申し訳無いですね。回復支援が得意と言っていたようですが、流石パルパスフィ家の人間ですね。身体強化、身体能力共に非常に高いようです。腰に下げている武器もメイスですし、腕力には自信があるのかもしれませんね。
「おい、コイツら大丈夫か?」
ダン様がウィラさんに心配そうに聞きましたが、彼女は極めて冷静に「大丈夫ですよ」と、言った。見た感じ、何らかの方法で眠らせたようです。私は少し方法に興味を持ったので彼女にどうやったのか確認を取る。
「はい、色々と喚いて面倒でしたので、叩いて脳を揺らしておきました。一応、回復魔法も掛けてあるので大丈夫かと思いますが、しばらくは起き上がってはこないでしょう」
「ウィラ、流石に起きないのは問題だと思うのだが……」
と、ロディ様が言いました。まぁ、確かにそうですよね。彼らが起きてくれないと先に進めない――と、いうか私はここらに放置して行ってもいいと思うレベルなのですが、それは色々と問題もありそうですから仕方ありませんね。
現在、我が敬愛する主であるエステリア・ハーブスト様救出に向けて全力で『アンダンテール大洞窟』の中層11階層を進んでおります。『黒狼』様の部下達を叱咤激励しつつ、そう! 全力で向かっているのです!
「ル、ルーさん! ちょ、ちょっと……ペースを落としましょう!」
そう言いながら私について来れている彼はロディことクーベルト辺境伯領の第三騎士団長であるロベルト・ヒッテンハイム様です。この方は今回の面子では群を抜いてお強いのですが、私の焦りを分かっては下さらないご様子で、幾度もペースを落とせと言ってくるのです。
ああ、その間にお嬢様に何かあったらどうするのでしょうか?
「ああ、そうだぜお嬢ちゃん。アンタのペースに皆がついて来れなくなってきている。アンタが単独で行くってならアレだが俺達に協力を求めたんじゃねーのかい?」
「…………」
ダンことダンディバル・イドリアス様は少し太ましい感じの男ですが、私の速度《スピード》について来れるとはやりますね。しかし、ダンの言う事は間違ってはいませんので、仕方なく私は立ち止まることにしました。
「すまねぇなお嬢ちゃん。焦る気持ちは俺達も同じなんだ」
「……そうでしたね。失礼しました」
「もう一度、キチンと作戦を立てて動きましょう」
私はロディ様の言葉を聞いて静かに頷きます。どれもこれも、全部足手まといの子らが悪いのです。ハッキリ言って苛立ちしかありません。彼らは何故、足手まといになると分かっていながら、連れて来たのか疑問でしかありません。
「一応、私の方から君に謝罪をしておくよ。彼等を連れて来たのは問題があった――が、現状で彼等を上層に帰すわけにもいかない。かと言って、君ひとりで先に行かせるわけにもいかないのは分かってくれ」
確かに独りで先走った私も冷静さに欠いていたかもしれませんね。と、私は小さく息を吐いてから姿勢を正してロディ様に謝罪をする。
「いや、まぁ、謝られても困るが……受け取っておくよ」
そんな事を言っている間に彼等のメンバーが追い付いて来る。
「盾役の私を置いて行くなんて、酷いですわ」
「そいつはお前さんが重てぇから、しゃーない」
「くっ、ダン様酷いですわっ!」
それでも、巨大な盾と重そうな胸当て、手甲と足鎧を装備していても他の面子よりも早く追い付いて来ている事を考えると身体強化と運動能力はかなり高いでしょう。逆に小太りなのに動きがとても素早いダン様が少しおかしいと私は思います。
「ふぅ、やっと追いつきました」
と、ウィラさんが小脇に男の子ふたりを抱えてやって来ました。と、いいますか、なんだか申し訳無いですね。回復支援が得意と言っていたようですが、流石パルパスフィ家の人間ですね。身体強化、身体能力共に非常に高いようです。腰に下げている武器もメイスですし、腕力には自信があるのかもしれませんね。
「おい、コイツら大丈夫か?」
ダン様がウィラさんに心配そうに聞きましたが、彼女は極めて冷静に「大丈夫ですよ」と、言った。見た感じ、何らかの方法で眠らせたようです。私は少し方法に興味を持ったので彼女にどうやったのか確認を取る。
「はい、色々と喚いて面倒でしたので、叩いて脳を揺らしておきました。一応、回復魔法も掛けてあるので大丈夫かと思いますが、しばらくは起き上がってはこないでしょう」
「ウィラ、流石に起きないのは問題だと思うのだが……」
と、ロディ様が言いました。まぁ、確かにそうですよね。彼らが起きてくれないと先に進めない――と、いうか私はここらに放置して行ってもいいと思うレベルなのですが、それは色々と問題もありそうですから仕方ありませんね。
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