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第三章 悪役令嬢は学院生活を送る

130.悪役令嬢は魔導洞窟で何があったか説明する

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 私達は順調に中層を進み13階まで降りて来ていた。

 このフロアは中層の中では道幅が狭く複雑であるということから、慎重に慎重を期して進んでいたのだけど、途中でかなりの人数が近くにいる事が魔力探知で分かり、私達はその場から移動して安全を確保しようとしていた。

 しかし、私達は少しだけ勘違いをしていた。彼等の目的が私達だということには気が付いて無かった――と、いうよりさすがにそんなアホはいないだろうと思っていたのです。

「と、いうことは……どこからか君達の情報が漏れていた?」
「はじめは疑いましたが、どうやらそういう事では無かったのです」

 そう、私達が何者か? そこは問題ではなく、私達が女子供しかいない――と、いうところが重要だったようです。これは彼等が妙に女が女がと連呼するので憶測でしかありませんが、大人数で魔導洞窟ダンジョンを攻略するというのは彼等にとって利点が多い。特に彼等は常習的に他の冒険者を襲っていたと考えます。

 妙な罠と、ダンジョン内を20人ばかりで上手く4、5人の人間を特定の場所へと誘導する技には少し感心したくらいです。しかし、彼等にとって随分と想定外の事が起きたのです。

「確かに普通は【白銀】がいるとは思わないだろうし、全員が強さの桁が違うとは普通は考えないだろう」

 彼は私の話を聞きながらそう言った。まぁ、当然といえば当然な話だけど――彼等は自分達が追い詰めてると信じて疑わなかった。こちらが反抗するまでは。

 袋小路に行くことで私達は後方からの攻撃を防ぎ、敵を前面に集めることに成功した。

「流石にそこに罠があるとは思って無かったと、言うことか」
「ええ、その通りです。特定の行動を鍵として動くタイプの罠で敵が仕掛けた罠では無く魔導洞窟ダンジョンの元から存在する罠のようでした」
「君が後方にいたから?」
「いえ、どうやら敵に罠の存在を知る者が居たのです」

 なるほど、と彼は興味深そうに言った。因みに本来は上層9階の安全地帯セーフゾーンを出るときに冒険者ランクの照合を何等かの方法で抜けた奴が潜んで居たのです。彼は自分のパーティーメンバーが倒される事などどうでもいいといった雰囲気でした。そして、罠が起動して私達は閉じ込められました。

「なるほどな。私はたまたま付近で魔物と戦闘中だったのだが、他の冒険者がたまたま私達に忠告してくれたのだ。冒険者同士が魔導洞窟ダンジョン内で戦っているから注意を――とな」
「閣下には本当に感謝しかありませんわ」
「しかし、偶然私が来なければどうしていたのか……」

 それに関しては本当に申し訳ないとしか言えませんね。ただ多少の危険はあっただろうけど皆で力を合わせればどうにかなったという希望的観測も無くは無い。けれども、クーベルト辺境伯もとい【白金】クラスの冒険者『黒狼』様がにも助けてに来てくれたお陰で短時間で脱出出来たと言えるでしょう。

「そういえば、閣下はどうやってあの壁を破壊したのですか?」
「それは私が得意とする魔法の一つを多重発動した上で壁を剣で斬り刻んだだけさ」
「土系統の魔法でしたね。効果としては振動と衝撃ですか? 魔法というか、魔術ですよね?」
「想像に任せるよ。まぁ、君の武器のおかげともいえるよ。多重発動も以前は苦労していたのだけど、あの武器のおかげで色々と応用が利くようになったからね」
「でしたら良かったですわ」

 ただ、その後に多重の罠が発動するとは思いもよらず、巻き込まれそうになったアリエルを閣下が庇って下さったのだけど、私は咄嗟にクーベルト辺境伯を掴もうと手を伸ばして、一緒に転送されてしまった。

「そうだ。で、そこからは覚えているかい?」
「実は――」

 転送先に驚いて思わず気を失ってしまったのよね。あんな大きな穴、それは怖いって。

「私と君は巨大な縦穴に転送されて、落ちたまでは良かったんだが、私は君を庇っていても上手く着地出来ると高を括っていたんだが……途中でトカゲ野郎に邪魔をされてしまってね。残念ながら着地に失敗して、かなりのダメージを追ってしまったよ」
「それでも、あの竜種の魔物を倒したのですね」

 既に竜の死体は空間収納アイテムボックスへ移動させた。けれど、ドラゴンを私を抱きかかえたまま落下しつつ仕留めるなんて、さすが……と、いうところよね。

「いや、本当に君がいてくれて助かったよ」
「それは閣下が私を守ってくれたからです。それにしても、この場所の通路を土魔法で塞いだのはどうしてなんでしょう?」
「ああ、それは徘徊者がいたからだ」
「徘徊者ですか?」

 彼は何やら難しそうな表情をする。徘徊者とは一体なんのでしょうね。

「『アンダンテール大洞窟』の下層に棲む、迷惑極まりない魔物だよ。おかげで、場所が分かったくらいさ。下層の32階から38階付近を周回している危険超級指定されている魔物で、多数の触手を持つとても強力な魔物だ」
「閣下でも、厳しいですか?」
「手負いだったからね、あの時は――とりあえず、この空間に入ってこれないように手を尽くすので精一杯だったよ」
「倒せますか?」

 二人なら……可能かどうかを訊いたつもりだったけど、クーベルト辺境伯の様子はイマイチな雰囲気だった。
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