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第三章 悪役令嬢は学院生活を送る

121.悪役令嬢はギルド職員と模擬戦をする

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 模擬戦は冒険者ギルドに併設されている建物の中で行う事になった。ここには失われし遺産アーティファクトによる結界が施されているらしく、多少暴れても建物に被害が出るようにはならないらしい。

 なるほど、後でその失われし遺産アーティファクトを見せて貰おう。

「さて、ルールは簡単だ。どちらかが戦闘不能になったら終わりだ。殺し合いじゃないから、ちゃんと加減はしてやる。回復魔法が使えるヤツも控えているから、傷が残ったりはしないだろう」
「分かりましたわ。武器や魔法は制限ナシでいいのかしら?」
「大規模殲滅魔法なんかは無しだ、さすがに結界が耐えれるか試したことがないからな。まぁ、そんな暇はねぇーだろうが……」

 そう言って、オジ様は私からある程度の距離に離れて行く。そして、何かを思い出したようにポンと手を叩いた。

「忘れてたわ。俺はこの街の冒険者ギルドでギルド長をやっている、ザクス・バークレーだ」
「私は……そうね、ただのリアよ」
「リアね――では、はじめるぞ!」

 そして、ザクス・バークレーと名乗ったギルド長のオジ様は魔法による肉体強化を使って距離を詰めようとする。けれど、そうはならずに不思議そうな顔をする。

「は?」
「あら、遊んでいるのかしら?」

 そう言って私は魔導剣を空間収納アイテムボックスから取り出して魔力の剣を顕現させる。

「……なんだ、その武器? 剣……なのか?」

 と、オジ様は両手剣を構える。お互いの距離は変わらず、ジリジリと緊張感が高まっていく。再びオジ様は魔力を練って魔法を発動させようとする――が、魔法は発動しない。

「な、なぜだ? 魔法が……」
「――それは当然です。私が発動を解除していますから」

 そう言って私は術式展開を素早く行い、超加速でオジ様に斬りかかる。

「っは? じょ、冗談じゃねぇ!」

 オジ様は体勢を崩しながら、紙一重で私の剣を躱す。うーん、アリエルなら確実に仕留められたでしょうね……やっぱり、剣技はそこまでなのよねぇ。

「まさか、避けられるとは思わなかったです」
「ってか、マジで殺す気かよ!」
「それくらいで死なないでしょ、貴方!」

 オジ様は私の剣激を両手剣でいなしながら、舌打ちをする。そして、私の動きをキチンと見ながら剣の柄を当てようと動く。けれども、私も見えているのよね。私はそれに当たらないように体を沈ませ、オジ様の脚をカニバサミの要領で挟みこもうとする。

 それを見て焦ったのか、オジ様は再び身体強化の魔法を発動させようとするけれど、それも私に解除され、魔法は発動せずに私はそのままオジ様の脚を挟んだ両足を身体ごと捻る。オジ様は耐えられずに顔面から地面に着地する。

「ふごっ」
「あら、無様ね? 幼女に転ばされた気持ちはいかが?」
「チッ、ってか、何をやったんだ?」
「魔法を解除しただけですよ?」

 と、いうとオジ様は冗談だろ? と、いった表情をした後に「ちょっと待て……」と言って武器を鞘に納めた。

「嬢ちゃんの勝ちでいいんだが、ひとつ試させてくれないか?」
「あら? いいんですか?」
「ああ、すまないが興味が別のところにいっちまったんでな。気になって仕方ない」

 そう言って、オジ様は再び素早く距離を開けて、今度は高速術式を展開した広範囲の火炎魔法を複数展開する。あら、オジ様なかなか凄い魔術師じゃない。

「コイツは防げないだ――は?」
「いいえ、魔法を解除するだけなら、簡単ですから――私、魔法や魔術は得意なんです。ただ……」

 そう言いながら、一つだけ展開した魔法を生かしてある。

「ってか、わざとか? 死ぬ気か? くらえ獄炎地獄ぅ!? ってぇ~~~~~!!!!」

 オジ様は自分に魔法が返ってくるとは思ってもよらず、全身火達磨になってしまいます。あ、火傷って6割超えたら死んじゃうんですっけ?

 そんな事を考えつつ、魔法を消して回復魔法を掛けてあげる。瞬時にしてオジ様の焼け爛れた皮膚は元通りになる。まぁ、服や装備がボロボロになったのは知りません。回復魔法では治せないのだから、知らん!

「無詠唱で超高速回復――って、どういうこったい??? 人の魔法を乗っ取るなんて、出来るのかよ……」
「まぁ、何をしたかは教えませんが、私、そういうの得意なんです」
「お嬢ちゃん、【鋼】って言ってたよな……アレはウソだろ?」
「嘘じゃありませんよ。あの面子の中で私が一番ランクが低いのですから」
「え? ウソでしょ?」
「嘘を吐く理由はありませんよ?」

 オジ様はとうとう項垂れてしまいました。ちょっと、可哀想な事をしたかしら? と、いうか観覧席で見ていたアホ達は不思議そうな顔で私達の様子を見ていますね。とりあえず、微笑んでおきますか――って、なんでビビって逃げて行くの?
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