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第三章 悪役令嬢は学院生活を送る

112.悪役令嬢は夏の計画を立てる

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 面倒なイベントが終わった後は特に大きな事は何も起こらず、まったりと忙しい日々を送っていた。

 そして、気が付けば夏がやって来る。そう、夏と言えば学院は長期の休みに入る。

 前世では大体1ヶ月程度だったけれど、この世ではどの国も2ヶ月くらいの休みになる。多くの貴族は領地に戻る時期なので、領地を持たない貴族以外は概ね王都から居なくなる。

 小学の生徒達も騎士や魔術師を目指す者以外は実家に帰る事になっている。かくいう私も休みの後半は両親と共に領地へ戻る予定ではある。

 そう、ここで問題になるのは前半をどういうスケジュールで過ごすか? と、いうところなのだけど――アリエルからも相談されている件があるのよねぇ。

「そういえば、エステリア様は夏休みは如何お過ごしになる予定ですか?」

 ミーリアが私にお茶を差し出しながら、そう言った。

「ミーリアも領地へ帰るのでしょう?」
「はい、学院の休みに入った翌日に領地へ向かう予定です」

 それを聞いていたジェニーやルアーナも話に加わってくる。

「我が家は前半は領地、後半は王都ですわ」
「ジェニー嬢と同じで我が家も前半は領地、後半は王都ですね。皆様はどういった風に休みを過ごす予定なのですか?」

 それぞれが夏の予定を口にする。リンリィは領地持ちの貴族ではないので基本的に王都で過ごすようだけど、休み後半にハーブスト領にある避暑地へ旅行する予定があるらしい。

「リア様も後半自領にいるのですね」
「ええ、もしタイミングが合うのならアーマリア侯爵家で我が家に来て頂いても……」
「な、な、なんて、羨ましいっ! ハッ……す、すいません」

 ジェニーが顔を真っ赤にして両手を顔に伏せてしまう。まぁ、そう思っても仕方ないのは――仕方ないのかもしれないよね。うーん、でも、皆を同時に誘うにはスケジュールが合わないだろうし。個別でなんとかするしかなさうね。うーん、両親にも相談しないとダメかな?

「では、皆とそれぞれ休みの間にお茶をする約束をしましょう」
「本当ですか!?」
「ええ、ただし――家の事情もあるでしょうから、我が家から招待を出させて貰う事になると思いますので、よろしくお願いしますね」

 因みに前半スケジュールについては、まだ調整が必要で確定という状態には至っていないのよね。何をするか――と、いう点については簡単に言うと『冒険』だ。

 しかも、一週間を予定した魔導洞窟ダンジョンアタックなんだけど、候補地がレシアス領の『マーフィアナの樹海』か、ハーブスト領の『アンダンテール大洞窟』、後は直轄領の『バーレモントの大穴』で、『マーフィアナの樹海』と『アンダンテール大洞窟』は一級魔導洞窟ダンジョンで冒険者ランクがある程度以上でないと入ることが出来ない。なお、『バーレモントの大穴』はある程度の強さであれば許可があれば、ミストリア騎士団の訓練に合わせて入ることが出来るらしい。こちらも下層は冒険者ランクでいえば【銀】相当でないとダメなのは確認済みだ。

 まぁ、それ以外にも一緒に行く面子なんかも、色々と許可が必要になる案件だからなぁ。

 現在、アリエルが考えているメンバーはアリエル、私、ウィンディとアリエルの専属メイドのナスターシア、私の専属メイドのエルーサを含めた5名だ。因みにウィンディの専属は戦闘向きでは無いらしいので、基本はソロか、両親のどちらかなどと冒険に出ているらしい。

 私個人的には『マーフィアナの樹海』に行きたいところなのだけど、アリエル達は最近行ったところだからって、微妙な反応だったのよね。そうなると『アンダンテール大洞窟』になりそうなんだけど、その場合は王都から向かって、帰りはそのまま公爵領の屋敷に帰るのがいいんだけど……それもスケジュール次第よねぇ。

 そんな事を考えつつ、私達は夏の予定を決めて行くのであった。
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