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第三章 悪役令嬢は学院生活を送る
100.悪役令嬢は突然の招待に首を傾げる
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「はい?」
私は意味が解らなくて思わず素っ頓狂な声を上げて首を傾げた。
「エステリア様、不思議そうな顔をされるのは些か問題ではありませんか? まさか、殿下からの招待をお断りになる――なんて事はありませんよね?」
別に断る理由はないけれど、朝、ビバル氏の大したことの無い連絡事項を聞いた後、サロンに向かおうかと席を立った時、パルプスト公爵令息であるアーネストから「話があるので聞いて頂きたい」と、言われ、返答を待つ前にいきなり招待状を差し出されて、且つ「クリフト殿下の誕生日に開催されるお茶会への招待状だと」渡されたのだ。
意味が解らなくて首を傾げても誰も文句は言うまいて!
それに、我が家へ直接送ればいいものを何故、アーネストが持ってくる? 意味が全くもって分からない。と、いうかパルプスト公爵令息も顎で使われて文句は無いのか、色々と疑問符が浮かぶ。随分失礼な話だと私は思うのだけど?
「ひとつ、聞いてもよろしいでしょうか?」
「はい、なんでしょうか?」
うーん、なんだか間の抜けた返答をされた気もするのだけど、彼自身も何も疑問に思っていないのか、ますます私は混乱してしまいそうだ。
「なぜ、殿下の小間使いみたいなマネをパルプスト公爵令息がしているのでしょうか? それに本来、こういった招待は――特に王族ともなれば、我が家に送るのが普通ではないのですか?」
「こ、小間使いですって? なんと失礼なっ! 私は生涯のライバルでもある殿下から大事な頼み事を受けて態々話しかけてやったというのに、その私に向かって小間使いとは無礼な!」
えー、そこでキレるの? わかんない、わかんないって。事実、ただの小間使いやってんじゃん。
「――ともかくだ、これは渡したからな」
そう言って彼は招待状を私に叩きつけて去って行く。アーネストもあんなキャラだったかしら? と、私はマリーやリンリィに視線を向けると彼女達も微妙な表情を出さないようにしてはいたけれど、私と同じように視線を泳がせていた。
「大丈夫ですかエステリア様……」
ジェニーが心配そうに私に声を掛けてくる。私はソッと手で彼女を制止させる。
「大丈夫よ。とりあえずサロンに行ってから確認するとしましょう」
そう言って私は落ち着いた雰囲気を漂わせながら教室を出る事にした。先程の騒動を遠巻きに見ていた他の生徒達は私達が通るのを見つつ、邪魔にならないように道を開けて行く。
うん、モーセの気分ね。
そんな微妙な気持ちになりつつ、私達はサロンへ向かった。
「全く、全く持って失礼な男でしたね。思わず剣を取り出そうかと思いましたよ」
「ダメよ、そんな事をしたらルアーナが一方的に罪に問われるじゃない」
「くっ、公爵令息でなければ無礼打ちですよ。言動だけもアレですが、最後のアレは無いです!」
と、いうか側近のファルリオ君やマルコを使いに出した方がマシだと思うのだけど、態々アーネストを小間使いに使う意味が全くわかんないわ。
「招待状の中身は確認しなくてもいいんですか?」
ウィンディは招待状の方が気になっているみたいね。見た目は普通に王家が使っている封筒にリボン、封緘はクリフト殿下が使っている紋ね。とりあえず封を解いて中身を確認しますか。
えっと、中身は普通ね。どちらかというと古風な文章ね。とっても遠回しに誕生日の記念に茶会を開くので婚約者として来るのは当然の事だろう――と、なんか微妙に偉そうな感じの文面なのが、少しイラっとするわ。と、いうか日程が平日なのだけど、これは学院を休んで来いという事なのかしら? うーん、取り敢えず持ち帰って家で確認が必要な案件よね、どう考えても。
「普通に殿下の誕生日に茶会を開くから、婚約者は当然出席に決まってんでしょ? みたいな内容だったわ」
「なんだか、偉そうな感じ――あ、王族だから偉くて当然ですよね」
それはそう。でも、女性を誘う手紙ってもう少し言葉を飾ってくれてもいいじゃない?
「女の子を誘う手紙にそれは無いわ。私ならブチキレるわよ? 因みにファルリオ様の手紙は終始私を褒めてくれるから、逆に不安になる時があるけど……」
「その辺りのバランスは大切ですよね。って、リア様はどうして遠い目をされているのでしょうか?」
「いやぁ、分かるけど分からないというか。上から目線で誘われるとイラっとするけど、美辞麗句を並びたてられても嫌だと思ったのよね。ハッキリ言って、事実を淡々と報告してくれる方が私としてはいいかしら」
結局のところ、もっと簡潔に『~に誕生日の茶会を開くので参加出来るなら来てください』でいいじゃない? まぁ、行かないってのも不敬にあたる可能性があるから、行かないとマズそうだけど。参加メンバーとかの情報を持ってる人はいるのかしら?
「って、気になったのだけど、ここにいる皆は招待されてないわよね?」
私がそう言うと、皆は目を合わせて「確かに」と、呟く。
「うわぁ、なんだか罠みたいで嫌ですね」
「ウィンディ、さすがにそんなワケはないでしょう。まぁ、家には招待状が届いている場合もあるかもしれないから、分かったら教えて貰えるかしら?」
皆はコクリと頷いて、私は家に帰ってこの件を伝えた上で色々と準備をしないといけないので、今日は早めに解散という流れになった。
私は意味が解らなくて思わず素っ頓狂な声を上げて首を傾げた。
「エステリア様、不思議そうな顔をされるのは些か問題ではありませんか? まさか、殿下からの招待をお断りになる――なんて事はありませんよね?」
別に断る理由はないけれど、朝、ビバル氏の大したことの無い連絡事項を聞いた後、サロンに向かおうかと席を立った時、パルプスト公爵令息であるアーネストから「話があるので聞いて頂きたい」と、言われ、返答を待つ前にいきなり招待状を差し出されて、且つ「クリフト殿下の誕生日に開催されるお茶会への招待状だと」渡されたのだ。
意味が解らなくて首を傾げても誰も文句は言うまいて!
それに、我が家へ直接送ればいいものを何故、アーネストが持ってくる? 意味が全くもって分からない。と、いうかパルプスト公爵令息も顎で使われて文句は無いのか、色々と疑問符が浮かぶ。随分失礼な話だと私は思うのだけど?
「ひとつ、聞いてもよろしいでしょうか?」
「はい、なんでしょうか?」
うーん、なんだか間の抜けた返答をされた気もするのだけど、彼自身も何も疑問に思っていないのか、ますます私は混乱してしまいそうだ。
「なぜ、殿下の小間使いみたいなマネをパルプスト公爵令息がしているのでしょうか? それに本来、こういった招待は――特に王族ともなれば、我が家に送るのが普通ではないのですか?」
「こ、小間使いですって? なんと失礼なっ! 私は生涯のライバルでもある殿下から大事な頼み事を受けて態々話しかけてやったというのに、その私に向かって小間使いとは無礼な!」
えー、そこでキレるの? わかんない、わかんないって。事実、ただの小間使いやってんじゃん。
「――ともかくだ、これは渡したからな」
そう言って彼は招待状を私に叩きつけて去って行く。アーネストもあんなキャラだったかしら? と、私はマリーやリンリィに視線を向けると彼女達も微妙な表情を出さないようにしてはいたけれど、私と同じように視線を泳がせていた。
「大丈夫ですかエステリア様……」
ジェニーが心配そうに私に声を掛けてくる。私はソッと手で彼女を制止させる。
「大丈夫よ。とりあえずサロンに行ってから確認するとしましょう」
そう言って私は落ち着いた雰囲気を漂わせながら教室を出る事にした。先程の騒動を遠巻きに見ていた他の生徒達は私達が通るのを見つつ、邪魔にならないように道を開けて行く。
うん、モーセの気分ね。
そんな微妙な気持ちになりつつ、私達はサロンへ向かった。
「全く、全く持って失礼な男でしたね。思わず剣を取り出そうかと思いましたよ」
「ダメよ、そんな事をしたらルアーナが一方的に罪に問われるじゃない」
「くっ、公爵令息でなければ無礼打ちですよ。言動だけもアレですが、最後のアレは無いです!」
と、いうか側近のファルリオ君やマルコを使いに出した方がマシだと思うのだけど、態々アーネストを小間使いに使う意味が全くわかんないわ。
「招待状の中身は確認しなくてもいいんですか?」
ウィンディは招待状の方が気になっているみたいね。見た目は普通に王家が使っている封筒にリボン、封緘はクリフト殿下が使っている紋ね。とりあえず封を解いて中身を確認しますか。
えっと、中身は普通ね。どちらかというと古風な文章ね。とっても遠回しに誕生日の記念に茶会を開くので婚約者として来るのは当然の事だろう――と、なんか微妙に偉そうな感じの文面なのが、少しイラっとするわ。と、いうか日程が平日なのだけど、これは学院を休んで来いという事なのかしら? うーん、取り敢えず持ち帰って家で確認が必要な案件よね、どう考えても。
「普通に殿下の誕生日に茶会を開くから、婚約者は当然出席に決まってんでしょ? みたいな内容だったわ」
「なんだか、偉そうな感じ――あ、王族だから偉くて当然ですよね」
それはそう。でも、女性を誘う手紙ってもう少し言葉を飾ってくれてもいいじゃない?
「女の子を誘う手紙にそれは無いわ。私ならブチキレるわよ? 因みにファルリオ様の手紙は終始私を褒めてくれるから、逆に不安になる時があるけど……」
「その辺りのバランスは大切ですよね。って、リア様はどうして遠い目をされているのでしょうか?」
「いやぁ、分かるけど分からないというか。上から目線で誘われるとイラっとするけど、美辞麗句を並びたてられても嫌だと思ったのよね。ハッキリ言って、事実を淡々と報告してくれる方が私としてはいいかしら」
結局のところ、もっと簡潔に『~に誕生日の茶会を開くので参加出来るなら来てください』でいいじゃない? まぁ、行かないってのも不敬にあたる可能性があるから、行かないとマズそうだけど。参加メンバーとかの情報を持ってる人はいるのかしら?
「って、気になったのだけど、ここにいる皆は招待されてないわよね?」
私がそう言うと、皆は目を合わせて「確かに」と、呟く。
「うわぁ、なんだか罠みたいで嫌ですね」
「ウィンディ、さすがにそんなワケはないでしょう。まぁ、家には招待状が届いている場合もあるかもしれないから、分かったら教えて貰えるかしら?」
皆はコクリと頷いて、私は家に帰ってこの件を伝えた上で色々と準備をしないといけないので、今日は早めに解散という流れになった。
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