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第三章 悪役令嬢は学院生活を送る

99.悪役令嬢ののんびりとした日常

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 皆にスパルタして満足した結果、試験も終わり私はサロンでのんびりお茶をしていた。

 そうえいば、試験と言えば順位が職員室前の掲示板に張り出されるらしいのだけど、私は全く興味が無かったので見に行く事さえしていない――のだけど、ウィンディやルアーナは気になるらしく、ほとんどのメンバーが現在、結果を見に行っている。

「そういえばリアは知ってると思うけど、殿下ってば試験にも来なかったみたいね」

 と、順位の発表を見に行っていないマリーはお茶菓子を食べるかどうか迷いつつも、思い出したかのように言った。

「ええ、当然知っているわ。試験最終日にビバル氏にも嫌味を言われたわよ」
「あら? 大した話はしていないと言ってなかったかしら?」
「実際、大した話では無いでしょ? 本来は小学自体通う必要だってないのだから……まぁ、本来は人間関係や将来の部下を見繕う場でもあるから、来る方が普通なんだけど」

 学院が出来てから王族でも幾人か通っていない人が居るのは聞いているけど、さすがにクリフト殿下の状況で通わない理由が実はよく分からない。と、いうか殿下が何を考えているのか全くもって私には分からない。

「婚約者様からは何か聞いて無いの?」
「ファルリオ様もよく分からないと言ってたわ。先日、王城で会ったらしいんだけど、剣の訓練にはかなり熱を上げているらしいわ。一応、殿下の専属教師達も殿下は優秀だから小学など通わなくても問題無いと言っているらしいわ。それにしても、リアには全く交流を持つ気が無いのも問題じゃない?」

 それは確かにそうなんだけど、私から会いに行ったりするのも違うと思うのよね。そもそも、私とすれば、女王キャロラインとの約束もあるし破局したらしたで、問題無いのだから放置してても……まぁ、私の責任を言う人間は出てきそうだけど、それくらいは何とでも出来そうだしなぁ。

「まぁ、そう言われると困るけど、嫌われてるのに会いたい?」
「――ま、無いわね」
「でしょ。そうだ、話は変わるけど印刷業に手を出したいって話してたわよね?」

 以前から相談はされていたけれど、正直言って活版印刷に関して知識はあれども機械ってどう作んの? って、状態なんだよね。仕組み的には作れなくはないけど、実のところ素材回りとインク製法を考えて、一気に平版印刷出来た方がいいんじゃない? とか思ってるんだよね。

「どう? 結構な雇用を創出出来そうだしさ、紙の本の価格もジワジワだけど下げれるんじゃない?」
「活版印刷ってさ、活字作るのが凄く手間なんだよね。確かに工業製品の力が格段に上げれる可能性はあるんだけど。私的には平版印刷したい」
「えー、いきなりオフセットは無理なんじゃない? そもそも、活字もデータ化したりするのが当たり前なら出来るかもだけどさ。PCがあるような時代ならアレよ、文明的に中世よ? いきなりすっ飛ばしすぎでしょ」
「やっぱり、そう思う?」
「思うー」

 色々とマリーの依頼で工業用機械を幾つか作っては来ているけど、技術的なところを言えばかなりクローズな技術が多くて現状からさらに先を目指すのであればハード面だけでは無くソフト面の技術も技術者という形で育てなければいけないのは分かってはいるけど、私ってば我儘かしら?

「うーん、私も急ぎすぎた?」
「……そこまでは思わないけど、そうねぇ、少し事業を拡げすぎとは思っているわよ。飲食、化粧品、服飾、これに印刷業でしょ。どの産業もやれば上手くいくとは思うし、協力はするわよ。当然、工業機材や素材関連もそうだけど、ウチの商会は大儲けなのは間違いなしだもの」
「まぁ、そうよねぇ。うーん、アレかなぁ、お互いが出資して新しい商会を立ち上げるのはどう? 最終的に複合巨大企業みたいな感じで……」

 なるほど、そう来たか。マリーの提案も正直言って悪くない話なんだけど、一番の問題は事業を手広くするほど、他の貴族や商人が持っている既得権に触れちゃうのよね。後は国の法的整備をしないと前世みたいな企業形態を作らないとダメよね。

「あら? 他の娘達が戻って来たみたいね。さっきの話はまた別の時にじっくり話しましょう」
「そうね。他にも色々と考えてるから聞いてもらいたいし」

 うん、マリーってば止まる気は全くなしね。とりあえず、長期計画の流れを作って将来的にどうこうってところが落としどころかな。

 そんな事を考えていると、サロンに皆が入ってくる。

「遅くなりました、エステリア様」
「いいえ、気にしなくていいわよ。で、どうだったのかしら?」

 私がそう言うと、ジェニーとミーリアが目をキラキラと輝かせて身を乗り出す。

「さすがエステリア様です。順位は当然のように1位でしたわっ!」
「本当にさすがとしか言えませんね」

 そう言われると少し恥ずかしい。しかし、初歩の初歩しかない問題では上位貴族では満点の者も少なくは無いと思うのだけど。そんな事を考えているのがリンリィには分かったのか、クスリと彼女は笑う。

「リア様。全教科満点なのはリア様一人でしたよ。ちなみに次席はマリー様でした」
「うそ? ファルリオ様は???」

 と、驚いたのはマリーだった。意外なのはマリーって魔法も体術も思ってるより得意なことだった。一度、苦手自体は無いと言っていたけど本当に不得意が無いのって凄いわよね。

「第3席がファルリオ様でした。因みにその次は私ですね――と、言っても小学までは魔法も体術も基礎でしょうから、苦手といっても大きな差は無いでしょう」

 確かに魔法は筆記と実技があるけど、どちらも小さい頃からやっている範囲にも届いていない場合が多いし、体術に関してもある程度は皆、護身の為に覚えているものね。

「他の面々はどのような感じでしたか?」
「ルアーナ様が第4席、第5席が私リンリィで、次がウィンディ。その次にパルプスト公爵令息のアーネスト様、ミーリア様、ジェニー様と続きます。このサロン内は全員が10席内に入っていましたね。面白いところでは、リフィール侯爵令嬢のリリアーナ様は算術がさっぱりのご様子で10席には入ってませんでしたね」

 ああ、あの悪役令嬢っぽい感じの子かぁ。正直、同じクラスにいたのを忘れてたレベルだわ。

「そういえば、上位貴族以外で上位に入っていたのは?」
「ジェニー様の次がフィレーヌ様でした。次がハーフェリア様ですね。彼女の場合、歴史、文学が苦手な様子でしたが、算術、兵法は満点でした」

 と、リンリィから細かい情報を聴きながら私は意外と全教科満点を取るのが難しいという事を聞かされて思わず唸ってしまう。

「人間誰しもミスはあるもの、私、全教科満点取るつもりで挑んだのだけど、算術で一か所間違えたっぽいのよね」
「そつないマリーでもミスをする……と、なるほどね」
「でも、いつもなら下位貴族や平民の特待生も上位に入ってくるらしいですが、エステリア様と勉強したおかげで彼らを蹴落としてしまったみたいです」

 ルアーナが少し申し訳なそうにそう言った。

「もしかして、同点だった場合は家格で順位が変わるのかしら?」
「それは当然かと……」

 と、ルアーナは言った。まぁ、平等とはいかないわよね。特に学院の意義がそういうモノでは無いし、そもそも貴族社会にある程度なじむ目的もあるわけだし。

「ま、そうよね。とりあえず試験も終わったわけですし、今日はゆっくりとお茶をしながらのんびりと過ごしましょう」

 私がそう言うと、皆が「そうですね」と、答えて私達は姦しくお茶を楽しむのであった。
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