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第三章 悪役令嬢は学院生活を送る

95.悪役令嬢は新規プロジェクトを立ち上げる

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「また、面白そうな事を考えているのか?」

 と、アリエルが悪戯っ子な表情で言った。まぁ、そう言われればその通りだ。

「リンリィ、さっきの質問の返答は?」

 リンリィは戸惑いつつも「不得意ではありません」と、答えた。「得意だと」答えないあたりが彼女らしいのだけどね。

「ただ、機械というより……プログラムとかロボット工学とかそっちの方が得意でして、何が違うとツッコミを入れられると困るんですが、科学的な技術発展でも考えているんですか?」
「科学的というよりも、魔法科学って言った方がそれっぽいと思うのよ」

 と、私は空間収納アイテムボックスから、失敗作を取り出しテーブルに置く。

「なにこれ?」

 そう言ったのはアリエルだ。ってか、弄んな! 壊そうとするな! 私は素早く魔力拘束でアリエルを縛る。

「やめな、壊れるから」
「ってか、実力行使してから言うな! 触んないからほどいてよ! って、助かった……」
「抜けようと思ったら抜けれるのにやらないところが、とても偉いわ」
「やったら、ここを吹っ飛ばすくらいの魔力がいるじゃない。さすがに犠牲を払ってするべきじゃない場面でしょ。それに褒められても嬉しくない」

 と、アリエルは拗ねて口を『3』みたいに尖らせる。

「リア様、これって計算機ですか?」
「そう……失敗作だけど。6桁までの計算は出来るけど、たぶんソロバンで計算した方が早いわよ」
「魔術……魔法? どういう理論ですか?」
「まだ、皆には教えていないけど、こういうのを作る基礎理論になっているのが応用魔術理論なのよ」

 基礎部分は簡単で気付くかどうか、って話だ。魔法にしても魔術にしても、この世の理を動かす為には魔法陣と魔力を媒介にして、現象を発現させる技術で、魔法陣というのはその端々に描かれる模様に意味が存在する。それを分離して一つの魔法陣としても、それはその効果を発揮する。そして、その極小の魔術を魔石に入れて、魔晶石で繋ぎ、組み合わせるのが魔導回路――なんだけど、小さく複雑な回路を作ると突然、動きが緩慢になったり、動かなくなったりするせいで、複雑な術式組む方に最近は力をいれがちなんだけど、を実現する為には魔導回路の技術発展が何よりも必要になる。

「簡単に説明するけど、魔法陣ってのは魔法陣全体で意味を持つんじゃなくて、細かい模様や型に意味があって、それ単体でも其々の効果を生み出すの。結局、魔術における魔法陣は細かい効果の組み合わせによって一つの魔術とする技術系統なの」
「と、いう事はリア様やハーブスト公爵夫人が次々に魔道具を生み出しているのは、その技術を使って……ですか?」
「そうよ。複雑で細かい術式を組んでさらにそれを組み合わせて、多層術式や多重術式、最近では圧縮術式なんかもあるわ」

 皆が感心というか、納得するような顔をしている。どこか予想はしていた感じだけど、逆にこれで彼女達は新たな魔法や魔術を創製するかもしれない。そうなると、私が持っているアドバンテージを簡単に失うかもしれない――でも、私はそれでも構わないと思っている。

「これから言う話は絶対に口外しないで欲しいし、まだ外には出せない技術になるけど、数年内に必ず表に出るから、それまでにさらに高いところまで私達は技術的に掴んでおかないといけないの」

 私の言葉に皆が真剣な表情で頷く。彼女達もこの技術でさらに生活が便利になるのが想像に簡単だったのだろう。特にマリーなんかは商会で使う魔道具の大半が我が家から買っているのだから、その便利さは最も知っていると言える。

「魔石に込める事が出来る術式は一つ。これは絶対的な価値観であり、理論であると思って。魔晶石には魔石と魔石を繋ぐ媒介に出来る。術式理論で構築した術式と魔石、魔晶石による組み合わせによって魔導回路という仕組みに出来る。これが我が家の魔道具の強みよ。そして、これから私達が目指したい未来――」

 私はそう言って、一枚の資料を空間収納アイテムボックスから取り出す。

「これよ」

 これは誰にも見せたことは無い、私のだたの目標を書いただけの紙だ。資料と思っているけれど、資料とは呼べないメモみたいなものだ。

「スマホの再現……」
「パソコンの再現……」
「電話の再現……」

 皆がその紙をマジマジと見つめる。メモ書きで目標が書かれており、さらにその補足としてこうすれば出来るのでは無いかが全て『日本語』で書いてある。

「パソコンはいる?」

 そう言ったのはアリエルだ。コイツわかってないわね――重要なんだからね? スマホだけじゃ色々と不便なのよ、パソコンを当たり前に使ってるとパソコン無いと本当に困るんだから、スマホだけあれば他いらなくね? 的な世代なわけ???

「あった方がいいと思いますよエル様」
「それは私も思う、売上の管理とか細かい資料作りとかもそうだけど、PCあると無いじゃ全然違うから」

 そう言ったのはリンリィとマリーだ。まぁ、そっち系の人達はみんないるよね、必要だよね?

「それに、パソコンが実現出来れば、さらに複雑な魔法陣が造れる可能性もありますよね?」
「その通りよ、リンリィ。順番は分からないけど、電話、パソコン、スマホって感じにはなると思うけどね技術的には……いや、私が勝手に思ってる理論だから、まだ実証していかないといけない事も沢山あるのよね。出来れば、リンリィに――ううん、皆にも協力して欲しいの」

 そうよ。これは我々全員で臨むべきプロジェクトにしちゃえばいいじゃない!
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