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第三章 悪役令嬢は学院生活を送る

93.悪役令嬢は魔王の候補者について説明する

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「まず、様々な可能性を考えた上で最有力候補なのが、アリエルと女王キャロライン。これはそもそもヒロインとクリフト殿下のルート時に限った話になるけど、2作目であるスーリアルを舞台にした話の後半でクリフト殿下が王になったようなエピソードが語られる部分があるの」

 と、私がいうとアリエルは訝し気な顔をする。

「だったら、余計に関係ないんじゃないの?」

 そう言いたくなる気持ちも分からなくは無いんだけど、そもそもクリフト殿下が王になるってのは色々と条件が必要になるんだよね。

「いいえ、考えてみてよ。まだ女王キャロラインも若いし、武力だって政治力だって遥かに上にいる人物よ? そんな短期間でクリフト殿下が王になれるかしら」

 描かれてはいないけど、これは政変――王子によるクーデターの可能性も考えないと、どう考えてもあり得なかった。と、いうか、考えれなかった。たとえ、成長したアリエルが女王と対峙しても勝負可能か? うーん、難しいでしょ。と、思うくらい不思議な話なのよね。

「うーん、普通の方法ではお母様の地盤をどうにか出来るような気はしないわ。それにハーブスト公爵や王家絶対主義で特にお母様の信奉者であるヴィジタリア公爵をどうにか出来るなんて全く想像つかないわ」

 アリエルはそう言ったけれど、ハーブスト公爵家に関してはエステリアが断罪される事でクリフト殿下に対して良い感情を持っていないし、女王キャロラインとお母様の絆は双子の姉妹というだけあって、それは強固なものだ。でも、ヴィジタリア公爵に関しては確かに女王の信奉者であるってのは間違いないんだけど、それ以上に王家絶対主義で王室の血さえ守れれば誰に仕えても問題無いってところがあるのよね。

 それを考えるとヴィジタリア公爵家を上手く引き込めるかが勝負所なのかもしれないわね。ただ、それでもクリフト殿下が王となる為には障害となるのが女王キャロライン、第二王子は……まぁ、放っておいてもいいとして、アリエルなのよね。

「で、ゲーム内で第二王子ルートの時、アリエルって断罪されても幽閉くらいなのよね。クリフト殿下のルートで言えば、他の皆は描かれていないけど、アリエルは出奔したような話があったハズなのよ」
「――確かにあったわね。他の悪役令嬢達の記述は無かったから、なんで? ってなった記憶があるわ」
「そもそも、アリエルが第二王子であるリストリア殿下に固執していた理由もよく分からないんだけど、私は考えてた時にもしかして、自分自身を守るために演技をしていたのではないかと思ったのよね」

 原因は分からないけど、ゲームのシナリオ上でアリエルは何かをやらかして王位継承権を外されていた節があるんだけど、リストリア殿下に好意があったと聞かれると、分からないのよね。超絶我儘で尊大なキャラではあったせいで、当時はちょっと無理やり悪役令嬢として組み込んだっぽい感じだとか言われていたキャラでもある。

 ――結構、謎の多いキャラだったのよ。アリエルって。

「結構、謎なキャラですよね。アリエル王女って。一応、ソシャゲで私も育ててましたけど、強さは上位ランクに絶対入ってくる人権キャラではありましたけど、ストーリー背景とかも結構あやふやで、女王キャロラインの娘で1作目で悪役令嬢として登場。リストリア王子に妙な固執をしていたけれど、何故ヒロインの邪魔をしていたのかは不明でその後、行方不明になったという噂もある。みたいなフレーバーで、このキャラの設定だけ妙にメタいって思ってました」

 私の考えている事を代弁するかのようにウィンディが話す。魔法の素質においては群を抜いているし、本当は優秀――いや、実際、今のアリエルも優秀なのよ。でも、ゲーム内のアリエルってすごいチグハグでよく分からないキャラだったのよね。

「と、いうか……ゲーム上のアリエルってヒロインの事、ただ単純に気に入らないって思ってただけな気がしてきた」
「何よソレ、私ってばそこまでバカじゃないわよ?」

 直感的で直情型のアリエルって、ゲームでも今でも人物像で言えば大きく外れてはいないのよね。正直、転生前の性格がどこまで影響しているのかってところを考えると実は分からない。

 そう、ずっと靄が掛かってたところの一つではあるんだけどね。
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