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第三章 悪役令嬢は学院生活を送る
90.悪役令嬢は側近達から尋ねられる
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あれから数週間経ち、朝の連絡が終わりサロンでゆっくりと寛ぎながら自習をしている時、ジェニーが思い悩んだように私に声を掛けてくる。
「皆も気になっているとは思いますが――」
私はすぐに察してしまう……察する気は毛頭ないのだけど、なんとなく察してしまったのだ。
「殿下の事かしら?」
「はい――エステリア様はどうしたいのか、ずっと気になっていたのです。婚約の発表があったお茶会の日も殿下のなさりようもですけど、婚約が決まってからひと月以上経っているというのに、その間にエステリア様に会いにもこなければ、お声さえ掛けられないとは……大丈夫なのでしょうか? それにあの感じは……」
うーん、残念。先日、王城で会ったんだよね。アリエルと会ったついでだったので正直どうでもいいレベルではあるんだけど。ジェニーが口を噤んだ内容は殿下の私に対する態度の事よね。ま、アレは何なのか私も知りたいくらいなんだけど、黙っておけば大して害はないので放置しているけど。
「確かに妙ではあるわよね。殿下ってば恥ずかしがり屋なのかしらね?」
「いえいえ、エステリア様! アレはどうみても蔑んだ目じゃないですかぁ! あんな扱いされたら私なら確実に泣きます!」
と、私のすっとぼけにジェニーが反応する。まぁ、私も感情を虚無にして対応しているから平気だけど、普通の女の子なら泣きそうになるわよね。ごめん、たぶん……そこらへん私は普通ではないのだと最近自覚している。
「私も確実に泣くと思います。殿下との婚約も政治的な理由なのは理解していますが、それでも男性には優しくされたいと願うのは間違いなのでしょうか?」
ミーリアはフンワリとウェーブがかった髪の毛を揺らしながらそう言った。正直、モブの取り巻き少女くらいと思っていた時期から考えると私が如何に彼女らに興味がなかったのだと分かるけれど、モブとは思えないくらいに可愛らしい雰囲気のミーリア。ジェニーにしても、少し生意気っぽい雰囲気のある少女だが、とても友人想いの良い子だ。
「確かに、殿下のあの態度は私だって傷つきます。でも、私個人がどうにか出来る事柄ならよいでしょうが、私にだけは何も言われたくないのだと思うのです」
「で、でしたら、私が殿下に――」
「それだけはダメ。私達だって大人ぶっているところはあっても、まだ10歳なのよ。貴女達だってそうだわ。同じように殿下もまだ10歳。まだ、色々とお心が成長されていない事もあるでしょう、時がくればもう少し周囲を見る事だって出来るようになるハズよ。なんと言ってもランパード閣下とキャロライン陛下のお子様なのだから」
そんな事をいいつつ、クリフト殿下も随分拗らせてるよねぇ。などと呑気に考えながら、殿下はたぶん両親に似ている部分を見つけるだけで嫌悪しそうなところがさらに加速度的に変な風に拗らせていくのではないかと少し考えて私は小さく溜息を吐いた。
「とりあえず、私達は遠くから見守るだけでよいと思うのです。こちらから何か言っても余計に相手を怒らせてしまう可能性が高いのですもの。私は何を言われても問題はありませんが、貴女達が言ってしまうと貴女の……貴女達の家にまで問題が影響してしまう可能性もあるわ。私はそれが嫌です。私は今、このサロンにいる皆を友人と思って接しています。友人達が傷つくのを分かっていて、そこに飛び込もうとするならば、全力で全ての力を使ってでも止めます」
私に圧を掛けられたジェニーは俯きながら小さく「ですが……」と言ったが私は席をソッと立ち彼女の側へ向かい頭をソッと撫でる。
「ジェニーの気持ちは大切に思います。でも、気にしないでいいのよ。だって、私は気にしていないのだから、大丈夫です。心配してくれてありがとう」
「エステリア様……」
リンリィと私が編纂した『とにキラ大全』ではこのころのエピソードに関しては何も無く、私と殿下の関係は悪くも無かったらしい記述はあったけれど、『とにキラ』内でほとんど会話したことも無いような話をクリフト殿下がしていたので、可能な限り関わりを持たなくても問題無いという結論に達したのだ。
すでに関係が冷え切っていると言っても過言じゃない状況を考えると、あえて火中の栗を拾いに行く必要など全くないわけなのよね。
私はそんな事を考えつつ、スンスンと泣くジェニーをなだめるのであった。
「皆も気になっているとは思いますが――」
私はすぐに察してしまう……察する気は毛頭ないのだけど、なんとなく察してしまったのだ。
「殿下の事かしら?」
「はい――エステリア様はどうしたいのか、ずっと気になっていたのです。婚約の発表があったお茶会の日も殿下のなさりようもですけど、婚約が決まってからひと月以上経っているというのに、その間にエステリア様に会いにもこなければ、お声さえ掛けられないとは……大丈夫なのでしょうか? それにあの感じは……」
うーん、残念。先日、王城で会ったんだよね。アリエルと会ったついでだったので正直どうでもいいレベルではあるんだけど。ジェニーが口を噤んだ内容は殿下の私に対する態度の事よね。ま、アレは何なのか私も知りたいくらいなんだけど、黙っておけば大して害はないので放置しているけど。
「確かに妙ではあるわよね。殿下ってば恥ずかしがり屋なのかしらね?」
「いえいえ、エステリア様! アレはどうみても蔑んだ目じゃないですかぁ! あんな扱いされたら私なら確実に泣きます!」
と、私のすっとぼけにジェニーが反応する。まぁ、私も感情を虚無にして対応しているから平気だけど、普通の女の子なら泣きそうになるわよね。ごめん、たぶん……そこらへん私は普通ではないのだと最近自覚している。
「私も確実に泣くと思います。殿下との婚約も政治的な理由なのは理解していますが、それでも男性には優しくされたいと願うのは間違いなのでしょうか?」
ミーリアはフンワリとウェーブがかった髪の毛を揺らしながらそう言った。正直、モブの取り巻き少女くらいと思っていた時期から考えると私が如何に彼女らに興味がなかったのだと分かるけれど、モブとは思えないくらいに可愛らしい雰囲気のミーリア。ジェニーにしても、少し生意気っぽい雰囲気のある少女だが、とても友人想いの良い子だ。
「確かに、殿下のあの態度は私だって傷つきます。でも、私個人がどうにか出来る事柄ならよいでしょうが、私にだけは何も言われたくないのだと思うのです」
「で、でしたら、私が殿下に――」
「それだけはダメ。私達だって大人ぶっているところはあっても、まだ10歳なのよ。貴女達だってそうだわ。同じように殿下もまだ10歳。まだ、色々とお心が成長されていない事もあるでしょう、時がくればもう少し周囲を見る事だって出来るようになるハズよ。なんと言ってもランパード閣下とキャロライン陛下のお子様なのだから」
そんな事をいいつつ、クリフト殿下も随分拗らせてるよねぇ。などと呑気に考えながら、殿下はたぶん両親に似ている部分を見つけるだけで嫌悪しそうなところがさらに加速度的に変な風に拗らせていくのではないかと少し考えて私は小さく溜息を吐いた。
「とりあえず、私達は遠くから見守るだけでよいと思うのです。こちらから何か言っても余計に相手を怒らせてしまう可能性が高いのですもの。私は何を言われても問題はありませんが、貴女達が言ってしまうと貴女の……貴女達の家にまで問題が影響してしまう可能性もあるわ。私はそれが嫌です。私は今、このサロンにいる皆を友人と思って接しています。友人達が傷つくのを分かっていて、そこに飛び込もうとするならば、全力で全ての力を使ってでも止めます」
私に圧を掛けられたジェニーは俯きながら小さく「ですが……」と言ったが私は席をソッと立ち彼女の側へ向かい頭をソッと撫でる。
「ジェニーの気持ちは大切に思います。でも、気にしないでいいのよ。だって、私は気にしていないのだから、大丈夫です。心配してくれてありがとう」
「エステリア様……」
リンリィと私が編纂した『とにキラ大全』ではこのころのエピソードに関しては何も無く、私と殿下の関係は悪くも無かったらしい記述はあったけれど、『とにキラ』内でほとんど会話したことも無いような話をクリフト殿下がしていたので、可能な限り関わりを持たなくても問題無いという結論に達したのだ。
すでに関係が冷え切っていると言っても過言じゃない状況を考えると、あえて火中の栗を拾いに行く必要など全くないわけなのよね。
私はそんな事を考えつつ、スンスンと泣くジェニーをなだめるのであった。
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