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第二章 悪役令嬢は暗躍する
68.悪役令嬢は第一王子の側で憂鬱な時間を過ごす
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お茶会は初めの一杯が終わり、皆は自由に動き始める時間となり、続々と王族の席へ貴族令息、令嬢達が挨拶へやって来る。
本来は私個人へと挨拶へ来たい者達もいるだろうけど、この雰囲気ではクリフト殿下への挨拶とアリエルへの挨拶が主になるだろう。うーん、仲の良い娘達には事前に伝えておくべきだったかもね。
「エステリア嬢、キミは私の側でただにこやかにしていればいい」
私には黙って立っていろと? ま、いいですけど。挨拶しないと後から問題になりそうな気がしなくもないけど、まぁ、殿下がそう言ったと言い訳出来るし、アリエルが証人になってくれるだろうしいいか。
はじめにやって来たのはパルプスト公爵令息のアーネストだ。まだ眼鏡はしていないようだけど、やや顰めた顔をしているので随分と視力に問題がありそうだ。ミストリア国内の公爵家でも非常に珍しい黒髪で王家の血筋も入っている事で出る瞳の色も少しだけ見える深い紫色だ。
所作も非常に美しく、下手をすると殿下より王子様っぽい雰囲気を持っている。
「よく来たアーネスト、久しいな」
「クリフト殿下、お久しぶりで御座います。本日はご招待頂き恐悦至極に御座います」
「うむ、ゆるりと楽しんで行くがいい」
「はい、有難う御座います」
そう言って再度、臣下の礼を取り去って行く。ちらりとアリエルの方を見て会釈だけして去るところ、私はそれでいいのか? と、思いつつ。私にも挨拶せずに去って行くところを見るとそういうことになっているのだと、チクリと心が痛んだ。
次にやって来たのはリブロス侯爵令息のファルリオとレシアス侯爵令嬢であるマリーことアンネマリーがやって来る。クリフト殿下のところに来る途中でアリエル王女と彼等は目を合わせているのに気が付いたけど、彼女には挨拶せずにクリフト殿下の前にやって来る。
「クリフト殿下におかれましては初にお目にかかります。現宰相にして筆頭侯爵家リブロス侯爵の長男ファルリオで御座います。また、殿下とハーブスト公爵令嬢エステリア様とのご婚約おめでとう御座います。私も今回、侯爵家第二位レシアス侯爵令嬢であるアンネマリーとの婚約をしたこと、殿下にもご紹介させて頂きたく――」
「それはよい、分かった。ゆるりと楽しむがよい」
と、クリフト殿下は厄介払いをするように冷たく言い放った。と、いうか中々に嫌味の利いた挨拶になっていたところ、やるなファルリオ君。と、褒めてあげたい。俺も婚約したし紹介したいから、ちゃんと婚約者紹介してよ的な事を言いたかったのだろうけど、途中で完全に止められちゃったけど、クリフト殿下には随分ダメージを与えたようだ。
ファルリオ君とマリーは私に頑張ってというような視線を送って、早々にその場を去って行く。アリエルは小さく息を吐いたけれど、殿下には聞こえていないようだ。
次にやって来たのはリフィール侯爵令嬢のリリアーナ嬢だ。ゲームには登場さえしてないモブ令嬢だけど、見た目は立派な悪役令嬢風――どちらかと言えば可愛い感じが強いので、もう少しキツメの見た目なら完璧な悪役令嬢って感じ――の明るい緋色の髪が特徴の縦ロール装備のお嬢様だ。
「クリフト殿下、お久しぶりでございますわ」
「ああ、そうだねリリアーナ嬢。今日はゆっくりと楽しんで行くといいよ」
「ええ、本日はお呼びいただきありがとうございます」
と、何故か去り際に私を睨んで去って行くリリアーナ嬢。敵視される意味は分からなくもないけど、私的には知らんがな状態である。彼女も私には挨拶無しだ。うーん、なんだろうコレ。
そして、次にやって来たのはグラファス侯爵家の次男坊マルコと妹のルアーナだ。短髪の深い緑色の髪の毛と紺色の瞳が特徴で、同世代と比べて体格が随分と大きい。妹のルアーナ嬢はアリエルと同じ歳だけど、私も背が高い方だが既に私よりも随分と高い。
「殿下、本日はお招き頂き有難う御座います。グラファス侯爵家、次男マルコと我が妹でエステリア様の護衛騎士候補のルアーナで御座います」
「エステリア様、本日はおめでとう御座います。ルアーナと申しま――」
「もうよい、本日はゆるりと過ごすがよい」
と、殿下はルアーナ嬢の言葉を遮ってしまう。マルコとルアーナ嬢は仕方ないといった風に去って行くが、ルアーナ嬢は随分とションボリしている。うん、面白そうなので後からコンタクトを取ってみるか。
その後も、多くの貴族令息令嬢がやって来たけれどヒロインちゃんのジゼットバス伯爵家など、幾つかの家は欠席していた。私の取り巻きちゃん達はアリエルが連れ去ってしまったので、挨拶には来なかった。リンガロイ伯爵家のウィンディは今日は魔導洞窟に行っているらしいので欠席だ。っつーか、知っているからあれだけど病弱って設定は無理がありすぎるんじゃないか、ウィンディ!
本来は私個人へと挨拶へ来たい者達もいるだろうけど、この雰囲気ではクリフト殿下への挨拶とアリエルへの挨拶が主になるだろう。うーん、仲の良い娘達には事前に伝えておくべきだったかもね。
「エステリア嬢、キミは私の側でただにこやかにしていればいい」
私には黙って立っていろと? ま、いいですけど。挨拶しないと後から問題になりそうな気がしなくもないけど、まぁ、殿下がそう言ったと言い訳出来るし、アリエルが証人になってくれるだろうしいいか。
はじめにやって来たのはパルプスト公爵令息のアーネストだ。まだ眼鏡はしていないようだけど、やや顰めた顔をしているので随分と視力に問題がありそうだ。ミストリア国内の公爵家でも非常に珍しい黒髪で王家の血筋も入っている事で出る瞳の色も少しだけ見える深い紫色だ。
所作も非常に美しく、下手をすると殿下より王子様っぽい雰囲気を持っている。
「よく来たアーネスト、久しいな」
「クリフト殿下、お久しぶりで御座います。本日はご招待頂き恐悦至極に御座います」
「うむ、ゆるりと楽しんで行くがいい」
「はい、有難う御座います」
そう言って再度、臣下の礼を取り去って行く。ちらりとアリエルの方を見て会釈だけして去るところ、私はそれでいいのか? と、思いつつ。私にも挨拶せずに去って行くところを見るとそういうことになっているのだと、チクリと心が痛んだ。
次にやって来たのはリブロス侯爵令息のファルリオとレシアス侯爵令嬢であるマリーことアンネマリーがやって来る。クリフト殿下のところに来る途中でアリエル王女と彼等は目を合わせているのに気が付いたけど、彼女には挨拶せずにクリフト殿下の前にやって来る。
「クリフト殿下におかれましては初にお目にかかります。現宰相にして筆頭侯爵家リブロス侯爵の長男ファルリオで御座います。また、殿下とハーブスト公爵令嬢エステリア様とのご婚約おめでとう御座います。私も今回、侯爵家第二位レシアス侯爵令嬢であるアンネマリーとの婚約をしたこと、殿下にもご紹介させて頂きたく――」
「それはよい、分かった。ゆるりと楽しむがよい」
と、クリフト殿下は厄介払いをするように冷たく言い放った。と、いうか中々に嫌味の利いた挨拶になっていたところ、やるなファルリオ君。と、褒めてあげたい。俺も婚約したし紹介したいから、ちゃんと婚約者紹介してよ的な事を言いたかったのだろうけど、途中で完全に止められちゃったけど、クリフト殿下には随分ダメージを与えたようだ。
ファルリオ君とマリーは私に頑張ってというような視線を送って、早々にその場を去って行く。アリエルは小さく息を吐いたけれど、殿下には聞こえていないようだ。
次にやって来たのはリフィール侯爵令嬢のリリアーナ嬢だ。ゲームには登場さえしてないモブ令嬢だけど、見た目は立派な悪役令嬢風――どちらかと言えば可愛い感じが強いので、もう少しキツメの見た目なら完璧な悪役令嬢って感じ――の明るい緋色の髪が特徴の縦ロール装備のお嬢様だ。
「クリフト殿下、お久しぶりでございますわ」
「ああ、そうだねリリアーナ嬢。今日はゆっくりと楽しんで行くといいよ」
「ええ、本日はお呼びいただきありがとうございます」
と、何故か去り際に私を睨んで去って行くリリアーナ嬢。敵視される意味は分からなくもないけど、私的には知らんがな状態である。彼女も私には挨拶無しだ。うーん、なんだろうコレ。
そして、次にやって来たのはグラファス侯爵家の次男坊マルコと妹のルアーナだ。短髪の深い緑色の髪の毛と紺色の瞳が特徴で、同世代と比べて体格が随分と大きい。妹のルアーナ嬢はアリエルと同じ歳だけど、私も背が高い方だが既に私よりも随分と高い。
「殿下、本日はお招き頂き有難う御座います。グラファス侯爵家、次男マルコと我が妹でエステリア様の護衛騎士候補のルアーナで御座います」
「エステリア様、本日はおめでとう御座います。ルアーナと申しま――」
「もうよい、本日はゆるりと過ごすがよい」
と、殿下はルアーナ嬢の言葉を遮ってしまう。マルコとルアーナ嬢は仕方ないといった風に去って行くが、ルアーナ嬢は随分とションボリしている。うん、面白そうなので後からコンタクトを取ってみるか。
その後も、多くの貴族令息令嬢がやって来たけれどヒロインちゃんのジゼットバス伯爵家など、幾つかの家は欠席していた。私の取り巻きちゃん達はアリエルが連れ去ってしまったので、挨拶には来なかった。リンガロイ伯爵家のウィンディは今日は魔導洞窟に行っているらしいので欠席だ。っつーか、知っているからあれだけど病弱って設定は無理がありすぎるんじゃないか、ウィンディ!
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