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第二章 悪役令嬢は暗躍する
54.悪役令嬢は冒険者となる
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「いやぁ、まさかまさかよね」
アリエルは上機嫌でそう言った。それもその筈で、現在、私達がいるのはリンガロイ伯爵領にある魔導洞窟のある街でクラスタリアムに来ている。当然、ここに来るまでには色々と問題もあったし、時間も掛かった。
ちなみにアリエルが悪役令嬢同盟を宣言してから3ヶ月ほど経っている。今回、許可が出たのは丁度、リンガロイ伯爵領に視察の用があった女王キャロラインの視察団に組み込まれることになったからだ。
現在は自由時間というわけでは無いけれど、私とアリエルは時間が空いたので、現在宿泊先として使用しているリンガロイ伯爵が持っている別邸の客間にてお茶を飲みながら話をしていた。
「そうね。ただ、護衛付きの魔導洞窟アタックというのは微妙な気持ちになるけれどね」
「それは仕方ないところでしょ。そう言えば、今回変わった物を持ち込んでるって聞いてるけど、それってもしかして……」
アリエルがアレの事が気になっているようだ。どうせ見たら分かるわけだけど、今はそれが何かを周囲に知らせる事はしたくないので、彼女の言葉を止める。ウィンディ嬢が不思議そうな顔をしているがニッコリと微笑むことで黙らせる。
「もう一つ、懸念があるのだけど、たぶんどうする事も出来ないでしょうから言っても仕方ないわね……」
「エステリアってば、そんなに色々と思い悩んでいると剥げちゃうわよ」
「アリエルみたいにお気楽な性格じゃないから仕方ないじゃない。と、いうかウィンディももっと気楽にすればいいのよ」
「いやぁ、なかなか難しいです……」
周囲から失礼のないようにとか色々と言われているのを見ちゃったせいもあるけど、周囲の目を気にしすぎじゃないかしら?
「そういえば、今回はウィンディも来るのよね」
「はい! 私がアリエル殿下とエステリア様の従者です! おまかせください。ただ、護衛で凄く強い方が来るという噂ですが、どこの誰が呼ばれたのかは知らないんですよね」
この国で凄い強いに含まれる人物って意外な事に結構いるのよね。ここ最近は周辺国の情報とかもお父様から教えて貰っているけれど、ミストリアって周囲の国からはかなり警戒されている理由としては優秀な魔導師が多くいる事なのよね。因みにだけど、騎士も魔導師とイコールで、騎士は職業で、魔導師は職業というより魔法を様々な事に利用できる者的な扱いなのだ。
だから、基本的に魔法や魔術を使う者を魔導師と呼ぶ事が普通で私達の概念では魔導師も騎士と同じような職業だと思っていたので、知った時は大いに混乱した。職業的な魔導師も存在するせいで本当に最近まで理解していなかった。
たぶんだけど、この国でNo.1とNo.2の魔導師は女王キャロラインとお母様であるハーブスト公爵夫人であり、キャロラインの双子の姉であるステファニーだ。どちらが上かに関しては考えるまでも無く魔法だけならキャロラインで魔術であればお母様だ。
ただし、戦闘には様々なシチュエーションが存在するから魔法や魔術の実力や魔力量が高いという理由では判断出来ない。例えば王配であるランパード・ティルムス・ラパスティ・ミストリア公やクーベルト辺境伯のように単騎での剣技や身体強化に特化した対魔導師や対魔獣戦においてはその評価も変わってくる。
と、いってもお母様達は集団戦から単騎戦、どちらも国内上位の戦闘力を持っているのでトップは変わらないと思うけど。
「と、いうか誰が来るのかしらね。近衛からか、騎士団からだと思うんだけど……」
「近衛や騎士団からってのが普通よね。団長クラスはお父様と一緒に王都でお留守番みたいだけど、うーん、他に実力者って冒険者って可能性は? そもそも冒険者登録を持っている人間じゃないとダメでしょ?」
「まぁ、そこは確かにね。でも、魔導師や騎士になっている人間の内、結構な人数が冒険者登録はしてるハズだから、気にしていなかったわ。そういえば、リンガロイ伯爵領に滞在中の上位ランクの冒険者っているのかしら?」
ウィンディは首を傾げて「うーん」と唸る。現在、冒険者登録されている人物で上位ランクの冒険者というのは実は国はどこに滞在しているのかという情報を持っている。ちなみに今回用にお父様から貰った資料を読んだので大体の上位ランク冒険者は把握している……ハズなんだけど、時折、流れだったり、把握し難い動きをする冒険者がいるのは確かなんだよね。
有名なのはミストリア近隣諸国をうろついている冒険者で『黒狼』という人物がいる。分かっているのは男性ってことだけで、実はその実在もよく分かっていないのよね。まぁ、そんな有名人がいきなり現れることはないでしょうけど。
「私の記憶だと、【金】までの冒険者しかいなかったと思います。【白金】【白銀】は現状では把握されていないかと」
冒険者のランクは最高位が【白金】【白銀】【金】【銀】【鋼】【鉄】【銅】とある。【白銀】より上位ランク冒険者は各国の関所を通れたり、貴族位を持っていなくても貴族扱いを受けたりと優遇される。代わりに様々な制約を受ける。各国のどこにいるか冒険者ギルドへの報告や災害などが起こった際に滞在国からの要請によって仕事を請け負わなくてはいけない。
ただ、これも形骸化している部分も多く、上位クラスの冒険者で特に有名な者の多くは制約を無視して自由にやっている事が多い。これって結構問題なのよね……冒険者ギルドが甘く見られている――と、いうより帝国の力の権威が落ちていると言えるわね。
「と、いうことは冒険者という線もなさそうね」
「ですねー」
「そうだ、ウィンディ。今回のお出かけ先である魔導洞窟の詳細を教えて欲しいのだけど」
と、私が言うとウィンディ嬢は『よくぞ聞いてくれました』と、いう勢いで目を輝かせた。
アリエルは上機嫌でそう言った。それもその筈で、現在、私達がいるのはリンガロイ伯爵領にある魔導洞窟のある街でクラスタリアムに来ている。当然、ここに来るまでには色々と問題もあったし、時間も掛かった。
ちなみにアリエルが悪役令嬢同盟を宣言してから3ヶ月ほど経っている。今回、許可が出たのは丁度、リンガロイ伯爵領に視察の用があった女王キャロラインの視察団に組み込まれることになったからだ。
現在は自由時間というわけでは無いけれど、私とアリエルは時間が空いたので、現在宿泊先として使用しているリンガロイ伯爵が持っている別邸の客間にてお茶を飲みながら話をしていた。
「そうね。ただ、護衛付きの魔導洞窟アタックというのは微妙な気持ちになるけれどね」
「それは仕方ないところでしょ。そう言えば、今回変わった物を持ち込んでるって聞いてるけど、それってもしかして……」
アリエルがアレの事が気になっているようだ。どうせ見たら分かるわけだけど、今はそれが何かを周囲に知らせる事はしたくないので、彼女の言葉を止める。ウィンディ嬢が不思議そうな顔をしているがニッコリと微笑むことで黙らせる。
「もう一つ、懸念があるのだけど、たぶんどうする事も出来ないでしょうから言っても仕方ないわね……」
「エステリアってば、そんなに色々と思い悩んでいると剥げちゃうわよ」
「アリエルみたいにお気楽な性格じゃないから仕方ないじゃない。と、いうかウィンディももっと気楽にすればいいのよ」
「いやぁ、なかなか難しいです……」
周囲から失礼のないようにとか色々と言われているのを見ちゃったせいもあるけど、周囲の目を気にしすぎじゃないかしら?
「そういえば、今回はウィンディも来るのよね」
「はい! 私がアリエル殿下とエステリア様の従者です! おまかせください。ただ、護衛で凄く強い方が来るという噂ですが、どこの誰が呼ばれたのかは知らないんですよね」
この国で凄い強いに含まれる人物って意外な事に結構いるのよね。ここ最近は周辺国の情報とかもお父様から教えて貰っているけれど、ミストリアって周囲の国からはかなり警戒されている理由としては優秀な魔導師が多くいる事なのよね。因みにだけど、騎士も魔導師とイコールで、騎士は職業で、魔導師は職業というより魔法を様々な事に利用できる者的な扱いなのだ。
だから、基本的に魔法や魔術を使う者を魔導師と呼ぶ事が普通で私達の概念では魔導師も騎士と同じような職業だと思っていたので、知った時は大いに混乱した。職業的な魔導師も存在するせいで本当に最近まで理解していなかった。
たぶんだけど、この国でNo.1とNo.2の魔導師は女王キャロラインとお母様であるハーブスト公爵夫人であり、キャロラインの双子の姉であるステファニーだ。どちらが上かに関しては考えるまでも無く魔法だけならキャロラインで魔術であればお母様だ。
ただし、戦闘には様々なシチュエーションが存在するから魔法や魔術の実力や魔力量が高いという理由では判断出来ない。例えば王配であるランパード・ティルムス・ラパスティ・ミストリア公やクーベルト辺境伯のように単騎での剣技や身体強化に特化した対魔導師や対魔獣戦においてはその評価も変わってくる。
と、いってもお母様達は集団戦から単騎戦、どちらも国内上位の戦闘力を持っているのでトップは変わらないと思うけど。
「と、いうか誰が来るのかしらね。近衛からか、騎士団からだと思うんだけど……」
「近衛や騎士団からってのが普通よね。団長クラスはお父様と一緒に王都でお留守番みたいだけど、うーん、他に実力者って冒険者って可能性は? そもそも冒険者登録を持っている人間じゃないとダメでしょ?」
「まぁ、そこは確かにね。でも、魔導師や騎士になっている人間の内、結構な人数が冒険者登録はしてるハズだから、気にしていなかったわ。そういえば、リンガロイ伯爵領に滞在中の上位ランクの冒険者っているのかしら?」
ウィンディは首を傾げて「うーん」と唸る。現在、冒険者登録されている人物で上位ランクの冒険者というのは実は国はどこに滞在しているのかという情報を持っている。ちなみに今回用にお父様から貰った資料を読んだので大体の上位ランク冒険者は把握している……ハズなんだけど、時折、流れだったり、把握し難い動きをする冒険者がいるのは確かなんだよね。
有名なのはミストリア近隣諸国をうろついている冒険者で『黒狼』という人物がいる。分かっているのは男性ってことだけで、実はその実在もよく分かっていないのよね。まぁ、そんな有名人がいきなり現れることはないでしょうけど。
「私の記憶だと、【金】までの冒険者しかいなかったと思います。【白金】【白銀】は現状では把握されていないかと」
冒険者のランクは最高位が【白金】【白銀】【金】【銀】【鋼】【鉄】【銅】とある。【白銀】より上位ランク冒険者は各国の関所を通れたり、貴族位を持っていなくても貴族扱いを受けたりと優遇される。代わりに様々な制約を受ける。各国のどこにいるか冒険者ギルドへの報告や災害などが起こった際に滞在国からの要請によって仕事を請け負わなくてはいけない。
ただ、これも形骸化している部分も多く、上位クラスの冒険者で特に有名な者の多くは制約を無視して自由にやっている事が多い。これって結構問題なのよね……冒険者ギルドが甘く見られている――と、いうより帝国の力の権威が落ちていると言えるわね。
「と、いうことは冒険者という線もなさそうね」
「ですねー」
「そうだ、ウィンディ。今回のお出かけ先である魔導洞窟の詳細を教えて欲しいのだけど」
と、私が言うとウィンディ嬢は『よくぞ聞いてくれました』と、いう勢いで目を輝かせた。
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