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第一章 悪役令嬢は動き出す

41.悪役令嬢は事の顛末を聞く

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 私が意識を戻したのは三日後の昼頃だった。

 目覚めると、お母様が傍にいてくれた。なんだかとても安心して、また涙を流した。

「……どう、なりましたか?」

 私は精一杯の声を出してお母様に聞いてみた。お母様は私を優しく抱きしめてから「大丈夫よ」と、言った。

「キャロラインから、誰も死ぬような事無く収めたのは貴女のおかげだと」
「アリエルは……アリエルはどうなるのですか?」
「ひとまず、二週間は謹慎です。貴女がいなければ確実に実の兄であるリストリア殿下を殺していたでしょう。まだ5歳ですから、罪にするには難しいと判断しました。ただ、立太子の件は先送りに……いいえ、現状は白紙といっても良いでしょうね」
「そう……ですか」

 色々と気になる事が多いけれど、誰も死ぬような事は無かった。それで妙にホッとした。皆は大丈夫だろうか。そんな事を考えているとお母様が真剣な表情をする。

「あの子は本当に末恐ろしいわね。身体強化も魔法も、貴女より数倍早く、威力も高い。あれでまだ5歳なのだから」
「ホントですね。私、魔法障壁には自信持ってたんですけど、紙切れみたいに割られました。割られるたびに魔力を強く込めても……」
「そうね。でも、貴女も頑張ったわ。貴女の障壁がなければ、確実に即死でしたもの。貴女が彼女を護ったとも言えるわ」
「はい……アリエルは大丈夫でした? 私と一緒に倒れた……ような気がしたのですけど」

 そうだ、あの時、正気に戻ったアリエルはあの状況に疑問を思っていたような雰囲気があった。いくらアホの子でも、あんな直情的に動くのはおかしいのだ。

「貴女と同じで魔力が足りなくなって意識を失っていたわ。今朝、目覚めたと城から連絡を受けているわ」
「会えますか?」

 と、私が聞くとお母様は首を横に振った。まぁ、二週間は謹慎って言ってたものね。会いに行ったり来たりするのは無理でしょうね。

「ひとつ、心配なのですけど……」
「殿下が抜け出さないか……ってことね」

 そう、残念ながらそういうところは、ちょっぴり抜けているのだ彼女は。しかも、絶対に突飛な事を言いだしそうな気がする。

「せめて、手紙でのやり取りは……」
「それくらいは問題ないでしょう。ただ検閲はされるものとして考える事いいわね?」
「はい」
「今日はこれくらいにしましょう。まだ完全に魔力が回復したわけではありませんからね……ゆっくりとお休みなさい」

 そう言って、お母様は私から離れ優しい笑顔を見せて部屋から出て行った。

 久方ぶりのベッドの上で過ごす日か。なんともかんとも……と、いった感じよね。後でエルーサにアリエルに手紙を書くと伝えておかないと。

 などと考えている間に再び私は意識を手放し、次に意識が戻ったのは翌日の夕方だった。

「んー、寝すぎた……」

 昨日に比べて随分と頭がスッキリする。視界にエルーサを確認して私は身を起こす。

「お嬢様、御加減は如何ですか?」
「うん、昨日はボーっとしてたけど、今日は靄が掛かった状態から妙に明瞭な感じがするわ」
「魔力欠乏による意識の喪失は生命にも関わります。見た感じ、問題無いように見受けられますが、まだ病み上がりですから気を付けて下さい」
「はぁ~い」

 そんなやり取りをしながら、私はベッドから出て寝巻から部屋着へ着替えさせて貰う。

 昨日は意識を手放してしまった所為でアリエルへの手紙が書けていないから、今日は絶対に手紙を書かないといけないのだ。既に着替えの途中でエルーサには伝えてある。ただ、ここ数日に届いた手紙が何通かあるらしいので、そちらも確認して返事をしたためないといけない。

 寝室から出て、部屋に用意されている机には既に手紙が置かれており、私は席について誰から届いたものか確認していく。

 二羽の鷹に撫子の花は王家の紋章だ。そして、添えられているリボンの色が紫に金。これは女王キャロラインからだ。後は、マリーとリンリィ嬢、ウェンディ嬢からも来ている。後一通も王家の紋章だ。リボンが紫紅だからアリエルからだ、昨日の段階で手紙を書いたのかな。

 とりあえず、面倒なところから片付けて行こう。と、私は気合いを入れて女王キャロラインからの手紙の封を開けた。
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