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第二部
第38話 占見、イトの国の巫女
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――翌朝。
リベルタスの街の広場に人が集まっていた。
街の広場にNPCが現れ、ハッカーを倒すためのアイテムを配っているらしいのだ。
エリーはその話を聞きつけ、早速そのアイテムを貰い、ギルド拠点へ戻った。
「……ていうわけで、これがそのハッカーを倒す為のアイテム」
「首輪みたいだな……」
「首輪そのものね」
「この首輪をハッカーにつければ、追跡できたり逃げられないようするんだって」
「そうなのですか、以前、街でマオさんが倒した時は逃げられたみたいですしね」
「ふむ、だがどうやって其奴を見つけるのだ?」
「まずそこからだよね~」
「とりあえず、一人一個貰っておいた方が良さそうだな」
「本人しか貰えないみたいよ?」
「じゃあ、今から貰ってくるよ」
クロウはそう言って街の広場へ向かい、例の首輪を貰いに行った。
街の広場は依然として人混みに溢れていた。
広場にいるNPCに話しかけ、その首輪を貰う。
そして帰ろうとすると、目の前に以前会った巫女がいたのだ。
「あなた、何か知ってるでしょ?」
彼女はクロウにそう聞いてきた。
「えっ? 何を?」
突然そう言われたクロウは困ってしまう。
確かに、二度ほど話しかけられたが、彼女の名前を知っている訳でも無い。
「私ね、イトの国を崩壊させた犯人を捜しているの」
「犯人? 誰かがわざとやったのか?」
「そうらしいの、私は『占筮』の才能スキルを持っててね、あなたが何か知ってるとにらんでるのだけど、違う?」
「そう言われても、心当たりは無いし……」
「ふ~ん、おかしいわね……」
彼女はクロウの顔をじっと見つめた。
「立ち話も何だし、俺達のギルドで話そうか、お茶くらい出すよ」
そう言って、クロウは巫女を連れて、ギルド拠点へ戻って行った。
「クロ、その人だれ?」
「……そういや名前も聞いてなかったな」
クロウは彼女の顔を見て言った。
リノが彼女に席を勧め、紅茶を出す。
「私は『イヨ』っていうの。永遠の十六歳よ」
「……歳はいいとして、どうしてここへ来たのかしら?」
「さっきそこでナンパされて」
クロウはそう答えたが、
「違うわ」
「ナイナイ」
「隕石が降ってもありえないわ」
「失礼だな、世の中にはゲテモノ食いという……」
皆に一斉に否定されてしまう。
「……冗談は置いといて、イヨさん、話しをどうぞ」
「……そうね、私はイトの国を崩壊させた犯人を捜しているの」
一瞬、エリーの表情に陰が見えたのは、気のせいだろうか。
「犯人……? 誰かがそれをやったというのか?」
ヒナはイヨに尋ねた。
「確信がある訳じゃないけど、私は『占筮』ってスキルを持っててね。彼にその手がかりがあるらしいの」
全員クロウの顔を見つめる。
「俺に言われても、心当たりは無いしな……。例のハッカーがやったんじゃない? この街も結構やられたし」
「それならそうでやり方はあるわ。でも、私の占いが違うって言ってるのよ」
エリーは目を逸らして、彼女の話を聞こうとせず、口を閉ざしている。
「う~ん、じゃあ、クロっちに手掛かりがあるってこと?」
「多分、ね」
「そうなのですか、私達も犯人探しに協力しましょうか?」
「ふむ、例のハッカーを探すのにも何か手掛かりは欲しい、手伝おう」
「そうだな、でもどうしたらいい?」
クロウはイヨに尋ねた。
「そうね……、私の占いには、あなたと、城と、魔王が手掛かりと出てるのよね」
「城って、『王都ルティア』か『ベルギス騎士団領』かな?」
「前のシーズンでウチらが行った、旧魔王の城もあるわね」
「旧魔王の城は、今回どこにあるのでしょうか?」
「某は、その話を聞いたことは無いな……」
「その占いで場所は分からないのか?」
「待ってね、今やってみるわ」
イヨはそう言い、袖口から筮竹を取り出すと、それを握り、何かの占いを始めた。
……そして彼女の占いが終わると、再び話し始めた。
「ここから北東ね、そこに何かあるかもしれないわ」
「イヨの占いって、どれくらい信用あるの?」
今まで口を閉ざしていたエリーが喋りだした。
「当たるも八卦、当たらぬも八卦って言うし、絶対当たるものでは無いわ。精々参考にしている程度かしら」
「うん、分かった、ありがとう」
エリーはまたそう言って、口を閉ざした。
「ここから北東って言うと、『ベルギス騎士団領』かな?」
「そこからもっと北か東かもしれないわ」
「そこからの東に行くと『ドワーフ族の洞窟』がありますよね」
「その騎士団領の北には、『滅びの大地』という荒野があって、昔はそこに魔王の城があったらしいな」
「じゃあ一旦ベルギス騎士団領に行って、そこでまた占うってのはどうだろう?」
「それがいいわね。皆さん、よろしくお願いしますね」
こうして五人は、イヨと共にベルギス騎士団領へ向かった。
――『ベルギス騎士団領』
『王都ルティア』の東にあり、『ベルギス騎士団』の領地である。
入り口には町があり、戦士や騎士の訓練場になっているので、人の出入りは多い。
一行がこの町に着く頃には日も暮れてきたので、ここで宿を取り、イヨの占筮を見てから、次の行先を決める事にした。
「……ここより北ね」
「というと、『滅びの大地』か」
「そうみたいね、明日に備えて準備しましょうか」
六人はここで宿を取り、旅の準備をしてから、休みを取った。
翌日。一行はそれぞれ数日分の食糧を持ち、馬に乗って滅びの大地を進んだ。
この場所は荒野になっていて、日差しは厳しく、他のプレイヤーは一切見えない。
昔はこの荒野のどこかに魔王の城があったらしいが、今はどこにあるのだろうか。
六人はイヨの占筮を頼りに進んで行った。
しばらく進んだ後、岩と木の影になっている所を見つけ、馬を休ませた。
「ふ~、暑いな。水が足りなくなりそうだ」
「三日分は持って来たはずだけど」
「いざとなったら、この剣から出る水を飲むしかないか」
「それだけは嫌ね……」
「私もですね……」
「酷いな……、俺の愛剣なのに」
「そんな変な名前を付けるからだ」
「どんな名前なの?」
「『フルティン』だ」
「それは私も嫌ね……」
「しょうがないだろ……、泉の女神から奪った物なんだし」
「どうやったらそんな名前になるのかと……」
こうして彼らは休憩を取ると、馬に乗り、目的地を探す。
日が高くなり、空に雲が出てきた頃、それらしき物を見つけた。
古くなった廃墟のような石造りの建物である。
その建物に近づくと、それはどうやら城の上層のようなものだと分かった。
地面から突き出た塔のような物もあり、ここから中に入れるようだ。
一行はここに馬を繋ぎ、下へと降りて行くことにした。
塔の中にある螺旋階段のようなものを降りて行くと、そこは通路になっていた。
通路を進んで行くと、曲がり角から不意に魔物が現れた。
この姿は知っている。『上級悪魔』だ。
六人はそれぞれ武器を取り、戦い始める。
イヨの武器は弓のようだ。彼女の背丈程ある長い和弓だ。
その弓で矢を放つのかと思われたが、彼女は袖から札を出し、術を使い始めた。
「壱式物理結界 破っ!」
彼女はそう叫ぶと、六人の体に何か透明な盾のようなものが付与されたようだ。
名前からすると、対物理攻撃の障壁のようなものらしいが。
リノの防御魔法もかかり、戦いは有利に進む。
前にも戦った事のある敵だ。彼らは程なくアークデーモンを倒した。
「イヨ、さっきの術は巫女の術なのか?」
「そうよ、物理攻撃に対するバリアみたいなものよ」
「ふむ、便利だな」
「でも、一撃で貫通されることもあるから、当てにしないでね」
「そうだな、受ける傷を浅くする位に考えておくよ」
こうして、彼らはアークデーモンを倒し、先へと進む。
通路の奥は右に折れており、その手前には例の鉄格子の扉があった。
六人は警戒しつつも、その格子扉の中を覗き込む。
中にいた魔物は、六本足のトカゲのような姿をした竜だった。
そしてその魔物の奥には、『斧』が掛けられていたのだ。
「どうする? 戦う?」
「どうしよ? 斧だしね」
「誰か欲しい人いるかな?」
「斧だったら、ドルフさんへお土産にするのはどうでしょう?」
「某は戦いたい所だな」
「私はどちらでもいいわ」
「じゃあ、貰っておくか」
「そだね」
六人は格子扉を開けて中へ入り、戦うことにした。
一行は、リノの魔法で防御を上げ、イヨの術で障壁を張る。
「健康分析! 彼の名は『タラスク』よ! お腹を壊してるらしいわ!」
「それはいいとして、口から炎を吐きそうだな」
「顔の向きに注意しないとね」
「良し、行くぞ!」
ヒナが斬りかかろうとすると、タラスクは急に腹に力を入れ、ウンコをしだした。
その挙動に驚いて、敵と距離を取るヒナ。
そのウンコは赤く燃えていて、さながら燃える石炭のようだ。
そして、タラスクは前足で赤い燃えるウンコを掴むと、こちらへ投げてきたのだ。
「げぇっ! ウンコ投げてきやがった!」
「サイアクだよ!!」
「逃げるのよ!!」
「あれはやはり燃えているのでしょうか……?」
「どうでもいいけどそんな物投げないでくれ!!」
「もう、なんなのよ~」
六人は予想もしなかった突然の出来事に混乱し、各自逃げ回る。
タラスクはさらに燃えるウンコをひり出し、こちらに投げつけてくる。
「何食ったら燃えるウンコが出るんだよ!」
「知らないよ!」
「原油でも飲んだの!?」
リノは冷静にM16カスタムの準備をしだした。
「くっ、逃げてばかりでは……」
「封じるしか……」
リノは銃の準備が整うと、タラスクを狙撃した。
その弾丸は彼の背中に当たるも、甲羅に弾かれてしまう。
次に彼の頭を狙ったが、頭も固いようで、傷しかつかない。
その隙に、クロウとヒナはタラスクに斬りかかるも、彼の首は硬く、致命傷にはならないようだ。
「氷結飛槍!」
次にフェイがタラスクの尻を狙い、魔法を放つ。
彼の尻は凍り付いたように見えたが、すぐ燃えるウンコで溶かされてしまった。
「くそっ! ウンコ野郎に苦戦するとは!」
「ダジャレかよ!」
「エリー、アレはやらないのか?」
「竜巻じゃウンコまき散らしちゃうよ!」
「くっ……、それは困る!」
「クロっち、水で流して!」
「トイレかよ!」
クロウはそう言ったものの、フルティンを床に擦りつけながら振り上げ、タラスクに向かって水を撒いた。
「氷結吹雪!」
フェイの魔法がタラスクの周辺を凍り付かせる。
彼は足を交互に上げて凍らないようにするも、それには限界があった。
クロウはさらに剣から水を振り撒き、彼を凍らせる。
次第にタラスクの体が霜で包まれ、動きが鈍くなってきた。
リノが彼の脚の付け根を撃ち抜き、ヒナは彼の首を斬りつける。
そこへクロウがタラスクの口めがけて、強烈な突きを放った。
彼の口の中は表皮のように硬くなく、剣はその頭を貫き、ついにタラスクは倒れた。
一行は足元に散らばったタラスクのウンコを避けながら、斧を入手した。
――『タラスクの斧』のようだ。
彼らには使い道が無いかもしれないが、お土産にでもしようか、そう思いながらこの部屋を出て、奥へ向かった。
通路を右に折れると、その先に階段があり、下へ降りる。
そこは通路が奥へ伸びていて、さらに上と下へ向かう階段があった。
「……この景色、見たことあるな」
「魔王の城、二回目だしね」
「……ここ、二階だわ。前にこの階から入ってきたのよ」
「前に来た時にふさがっていた三階から、私達は入ってきたのでしょうか?」
「そうかもしれない、一応この階も調べてみるか」
彼らはそう言って、この階を探索した。
道すがらアークデーモンが出るも、程なく倒して進んで行く。
やはり、ここは以前入って来た時の部屋があり、ここは二階で正しかったようだ。
二階の探索が終わり、何も見つけられなかった六人は、一階へと降りた。
一階。前にここに来たときは、伝説の武器が置いてあったが、今は無いらしい。
この階にもいたアークデーモンを倒し、探索を続ける。
一通り探索すると、昔は土で埋もれて進めなかった所が通れるようになっていた。
その場所を進むと、その先は大広間というか、王の謁見の間のような感じだった。
天井は高く、部屋は広く、床には赤い絨毯が敷いてあり、その奥に何者かが見える。
目を凝らしてよく見ると、壁から上半身だけ出ている魔物の石像らしき物だった。
「あれは……、『魔王・バアル』ね……」
イヨがそう呟いた。
「あれが魔王のバアルなのか……」
「初めて見た……」
「そうね……」
「石像のようですが、封印されているのでしょうか?」
「願っても無い、こんな場所で出会えるとは……」
「どうかしら……? 彼、動くの?」
六人それぞれ思う事はあるようだが、彼らはこの『魔王』に直面して、どうするのだろうか。次回へ続く……。
リベルタスの街の広場に人が集まっていた。
街の広場にNPCが現れ、ハッカーを倒すためのアイテムを配っているらしいのだ。
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「首輪みたいだな……」
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「この首輪をハッカーにつければ、追跡できたり逃げられないようするんだって」
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「とりあえず、一人一個貰っておいた方が良さそうだな」
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「えっ? 何を?」
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確かに、二度ほど話しかけられたが、彼女の名前を知っている訳でも無い。
「私ね、イトの国を崩壊させた犯人を捜しているの」
「犯人? 誰かがわざとやったのか?」
「そうらしいの、私は『占筮』の才能スキルを持っててね、あなたが何か知ってるとにらんでるのだけど、違う?」
「そう言われても、心当たりは無いし……」
「ふ~ん、おかしいわね……」
彼女はクロウの顔をじっと見つめた。
「立ち話も何だし、俺達のギルドで話そうか、お茶くらい出すよ」
そう言って、クロウは巫女を連れて、ギルド拠点へ戻って行った。
「クロ、その人だれ?」
「……そういや名前も聞いてなかったな」
クロウは彼女の顔を見て言った。
リノが彼女に席を勧め、紅茶を出す。
「私は『イヨ』っていうの。永遠の十六歳よ」
「……歳はいいとして、どうしてここへ来たのかしら?」
「さっきそこでナンパされて」
クロウはそう答えたが、
「違うわ」
「ナイナイ」
「隕石が降ってもありえないわ」
「失礼だな、世の中にはゲテモノ食いという……」
皆に一斉に否定されてしまう。
「……冗談は置いといて、イヨさん、話しをどうぞ」
「……そうね、私はイトの国を崩壊させた犯人を捜しているの」
一瞬、エリーの表情に陰が見えたのは、気のせいだろうか。
「犯人……? 誰かがそれをやったというのか?」
ヒナはイヨに尋ねた。
「確信がある訳じゃないけど、私は『占筮』ってスキルを持っててね。彼にその手がかりがあるらしいの」
全員クロウの顔を見つめる。
「俺に言われても、心当たりは無いしな……。例のハッカーがやったんじゃない? この街も結構やられたし」
「それならそうでやり方はあるわ。でも、私の占いが違うって言ってるのよ」
エリーは目を逸らして、彼女の話を聞こうとせず、口を閉ざしている。
「う~ん、じゃあ、クロっちに手掛かりがあるってこと?」
「多分、ね」
「そうなのですか、私達も犯人探しに協力しましょうか?」
「ふむ、例のハッカーを探すのにも何か手掛かりは欲しい、手伝おう」
「そうだな、でもどうしたらいい?」
クロウはイヨに尋ねた。
「そうね……、私の占いには、あなたと、城と、魔王が手掛かりと出てるのよね」
「城って、『王都ルティア』か『ベルギス騎士団領』かな?」
「前のシーズンでウチらが行った、旧魔王の城もあるわね」
「旧魔王の城は、今回どこにあるのでしょうか?」
「某は、その話を聞いたことは無いな……」
「その占いで場所は分からないのか?」
「待ってね、今やってみるわ」
イヨはそう言い、袖口から筮竹を取り出すと、それを握り、何かの占いを始めた。
……そして彼女の占いが終わると、再び話し始めた。
「ここから北東ね、そこに何かあるかもしれないわ」
「イヨの占いって、どれくらい信用あるの?」
今まで口を閉ざしていたエリーが喋りだした。
「当たるも八卦、当たらぬも八卦って言うし、絶対当たるものでは無いわ。精々参考にしている程度かしら」
「うん、分かった、ありがとう」
エリーはまたそう言って、口を閉ざした。
「ここから北東って言うと、『ベルギス騎士団領』かな?」
「そこからもっと北か東かもしれないわ」
「そこからの東に行くと『ドワーフ族の洞窟』がありますよね」
「その騎士団領の北には、『滅びの大地』という荒野があって、昔はそこに魔王の城があったらしいな」
「じゃあ一旦ベルギス騎士団領に行って、そこでまた占うってのはどうだろう?」
「それがいいわね。皆さん、よろしくお願いしますね」
こうして五人は、イヨと共にベルギス騎士団領へ向かった。
――『ベルギス騎士団領』
『王都ルティア』の東にあり、『ベルギス騎士団』の領地である。
入り口には町があり、戦士や騎士の訓練場になっているので、人の出入りは多い。
一行がこの町に着く頃には日も暮れてきたので、ここで宿を取り、イヨの占筮を見てから、次の行先を決める事にした。
「……ここより北ね」
「というと、『滅びの大地』か」
「そうみたいね、明日に備えて準備しましょうか」
六人はここで宿を取り、旅の準備をしてから、休みを取った。
翌日。一行はそれぞれ数日分の食糧を持ち、馬に乗って滅びの大地を進んだ。
この場所は荒野になっていて、日差しは厳しく、他のプレイヤーは一切見えない。
昔はこの荒野のどこかに魔王の城があったらしいが、今はどこにあるのだろうか。
六人はイヨの占筮を頼りに進んで行った。
しばらく進んだ後、岩と木の影になっている所を見つけ、馬を休ませた。
「ふ~、暑いな。水が足りなくなりそうだ」
「三日分は持って来たはずだけど」
「いざとなったら、この剣から出る水を飲むしかないか」
「それだけは嫌ね……」
「私もですね……」
「酷いな……、俺の愛剣なのに」
「そんな変な名前を付けるからだ」
「どんな名前なの?」
「『フルティン』だ」
「それは私も嫌ね……」
「しょうがないだろ……、泉の女神から奪った物なんだし」
「どうやったらそんな名前になるのかと……」
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日が高くなり、空に雲が出てきた頃、それらしき物を見つけた。
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その建物に近づくと、それはどうやら城の上層のようなものだと分かった。
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一行はここに馬を繋ぎ、下へと降りて行くことにした。
塔の中にある螺旋階段のようなものを降りて行くと、そこは通路になっていた。
通路を進んで行くと、曲がり角から不意に魔物が現れた。
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六人はそれぞれ武器を取り、戦い始める。
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その弓で矢を放つのかと思われたが、彼女は袖から札を出し、術を使い始めた。
「壱式物理結界 破っ!」
彼女はそう叫ぶと、六人の体に何か透明な盾のようなものが付与されたようだ。
名前からすると、対物理攻撃の障壁のようなものらしいが。
リノの防御魔法もかかり、戦いは有利に進む。
前にも戦った事のある敵だ。彼らは程なくアークデーモンを倒した。
「イヨ、さっきの術は巫女の術なのか?」
「そうよ、物理攻撃に対するバリアみたいなものよ」
「ふむ、便利だな」
「でも、一撃で貫通されることもあるから、当てにしないでね」
「そうだな、受ける傷を浅くする位に考えておくよ」
こうして、彼らはアークデーモンを倒し、先へと進む。
通路の奥は右に折れており、その手前には例の鉄格子の扉があった。
六人は警戒しつつも、その格子扉の中を覗き込む。
中にいた魔物は、六本足のトカゲのような姿をした竜だった。
そしてその魔物の奥には、『斧』が掛けられていたのだ。
「どうする? 戦う?」
「どうしよ? 斧だしね」
「誰か欲しい人いるかな?」
「斧だったら、ドルフさんへお土産にするのはどうでしょう?」
「某は戦いたい所だな」
「私はどちらでもいいわ」
「じゃあ、貰っておくか」
「そだね」
六人は格子扉を開けて中へ入り、戦うことにした。
一行は、リノの魔法で防御を上げ、イヨの術で障壁を張る。
「健康分析! 彼の名は『タラスク』よ! お腹を壊してるらしいわ!」
「それはいいとして、口から炎を吐きそうだな」
「顔の向きに注意しないとね」
「良し、行くぞ!」
ヒナが斬りかかろうとすると、タラスクは急に腹に力を入れ、ウンコをしだした。
その挙動に驚いて、敵と距離を取るヒナ。
そのウンコは赤く燃えていて、さながら燃える石炭のようだ。
そして、タラスクは前足で赤い燃えるウンコを掴むと、こちらへ投げてきたのだ。
「げぇっ! ウンコ投げてきやがった!」
「サイアクだよ!!」
「逃げるのよ!!」
「あれはやはり燃えているのでしょうか……?」
「どうでもいいけどそんな物投げないでくれ!!」
「もう、なんなのよ~」
六人は予想もしなかった突然の出来事に混乱し、各自逃げ回る。
タラスクはさらに燃えるウンコをひり出し、こちらに投げつけてくる。
「何食ったら燃えるウンコが出るんだよ!」
「知らないよ!」
「原油でも飲んだの!?」
リノは冷静にM16カスタムの準備をしだした。
「くっ、逃げてばかりでは……」
「封じるしか……」
リノは銃の準備が整うと、タラスクを狙撃した。
その弾丸は彼の背中に当たるも、甲羅に弾かれてしまう。
次に彼の頭を狙ったが、頭も固いようで、傷しかつかない。
その隙に、クロウとヒナはタラスクに斬りかかるも、彼の首は硬く、致命傷にはならないようだ。
「氷結飛槍!」
次にフェイがタラスクの尻を狙い、魔法を放つ。
彼の尻は凍り付いたように見えたが、すぐ燃えるウンコで溶かされてしまった。
「くそっ! ウンコ野郎に苦戦するとは!」
「ダジャレかよ!」
「エリー、アレはやらないのか?」
「竜巻じゃウンコまき散らしちゃうよ!」
「くっ……、それは困る!」
「クロっち、水で流して!」
「トイレかよ!」
クロウはそう言ったものの、フルティンを床に擦りつけながら振り上げ、タラスクに向かって水を撒いた。
「氷結吹雪!」
フェイの魔法がタラスクの周辺を凍り付かせる。
彼は足を交互に上げて凍らないようにするも、それには限界があった。
クロウはさらに剣から水を振り撒き、彼を凍らせる。
次第にタラスクの体が霜で包まれ、動きが鈍くなってきた。
リノが彼の脚の付け根を撃ち抜き、ヒナは彼の首を斬りつける。
そこへクロウがタラスクの口めがけて、強烈な突きを放った。
彼の口の中は表皮のように硬くなく、剣はその頭を貫き、ついにタラスクは倒れた。
一行は足元に散らばったタラスクのウンコを避けながら、斧を入手した。
――『タラスクの斧』のようだ。
彼らには使い道が無いかもしれないが、お土産にでもしようか、そう思いながらこの部屋を出て、奥へ向かった。
通路を右に折れると、その先に階段があり、下へ降りる。
そこは通路が奥へ伸びていて、さらに上と下へ向かう階段があった。
「……この景色、見たことあるな」
「魔王の城、二回目だしね」
「……ここ、二階だわ。前にこの階から入ってきたのよ」
「前に来た時にふさがっていた三階から、私達は入ってきたのでしょうか?」
「そうかもしれない、一応この階も調べてみるか」
彼らはそう言って、この階を探索した。
道すがらアークデーモンが出るも、程なく倒して進んで行く。
やはり、ここは以前入って来た時の部屋があり、ここは二階で正しかったようだ。
二階の探索が終わり、何も見つけられなかった六人は、一階へと降りた。
一階。前にここに来たときは、伝説の武器が置いてあったが、今は無いらしい。
この階にもいたアークデーモンを倒し、探索を続ける。
一通り探索すると、昔は土で埋もれて進めなかった所が通れるようになっていた。
その場所を進むと、その先は大広間というか、王の謁見の間のような感じだった。
天井は高く、部屋は広く、床には赤い絨毯が敷いてあり、その奥に何者かが見える。
目を凝らしてよく見ると、壁から上半身だけ出ている魔物の石像らしき物だった。
「あれは……、『魔王・バアル』ね……」
イヨがそう呟いた。
「あれが魔王のバアルなのか……」
「初めて見た……」
「そうね……」
「石像のようですが、封印されているのでしょうか?」
「願っても無い、こんな場所で出会えるとは……」
「どうかしら……? 彼、動くの?」
六人それぞれ思う事はあるようだが、彼らはこの『魔王』に直面して、どうするのだろうか。次回へ続く……。
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さて、VRゲームを始める二人、どんなゲーム・ライフを送ることになるのやら……
*先の長い小説です。のんびり読んで下さい。
*この作品は、「小説家になろう」様、「カクヨム」様でも連載中です。
スペーストレイン[カージマー18]
瀬戸 生駒
SF
俺はロック=クワジマ。一匹狼の運び屋だ。
久しく宇宙無頼を決めていたが、今回変な物を拾っちまった。
そのまま捨ててしまえば良かったのに、ちょっとした気の迷いが、俺の生き様に陰をさす。
さらば自由な日々。
そして……俺はバカヤロウの仲間入りだ。
●「小説化になろう」様にも投稿させていただいております。
空のない世界(裏)
石田氏
SF
働きながら書いてるので更新は不定期です。
〈8月の作者のどうでもいいコメント〉
『本格的な夏になりました。学校では夏休み、部活に励む学生、夏の催し夏祭り……ですが、楽しいことばかりではない夏でもある。山のようにある宿題、熱中症等健康悪化、夏休みのない大人。何が楽しくて、こんな暑い中祭りに行くんだと言いながら、祭りに行く自分。まぁ、色々あると思いますが、特に脱水には気をつけましょう。水分不足で、血液がどろどろになると、脳梗塞の原因になります。皆、熱中症だけじゃないんだよ。ってことで、今月も仕事しながら執筆頑張ります』
完全に趣味で書いてる小説です。
随時、概要の登場人物更新します。
※すいません、途中字数オーバーがありますが、御承知ください。(アルファポリス様更新前の上限一万字の時のことです)
Select Life Online~最後にゲームをはじめた出遅れ組
瑞多美音
SF
福引の景品が発売分最後のパッケージであると運営が認め話題になっているVRMMOゲームをたまたま手に入れた少女は……
「はあ、農業って結構重労働なんだ……筋力が足りないからなかなか進まないよー」※ STRにポイントを振れば解決することを思いつきません、根性で頑張ります。
「なんか、はじまりの街なのに外のモンスター強すぎだよね?めっちゃ、死に戻るんだけど……わたし弱すぎ?」※ここははじまりの街ではありません。
「裁縫かぁ。布……あ、畑で綿を育てて布を作ろう!」※布を売っていることを知りません。布から用意するものと思い込んでいます。
リアルラックが高いのに自分はついてないと思っている高山由莉奈(たかやまゆりな)。ついていないなーと言いつつ、ゲームのことを知らないままのんびり楽しくマイペースに過ごしていきます。
そのうち、STRにポイントを振れば解決することや布のこと、自身がどの街にいるか知り大変驚きますが、それでもマイペースは変わらず……どこかで話題になるかも?しれないそんな少女の物語です。
出遅れ組と言っていますが主人公はまったく気にしていません。
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※VRMMO物ですが、作者はゲーム物執筆初心者です。つたない文章ではありますが広いお心で読んで頂けたら幸いです。
※1話約2000〜3000字程度です。時々長かったり短い話もあるかもしれません。
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