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第一部
第6話 崩落、古代の遺跡
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――翌日。
「今日の朝食はカレーですよ」
リノは三人にそう言って、カレーを四皿、食堂のテーブルに並べる。
そして、オレンジジュースをコップに注ぎ、皆に配った。
「カレーはいつ食べてもおいしいなぁ」
「朝食にカレー、って思うけど、おいしいから食べちゃうよね」
「よほど変な作り方をしないかぎり、失敗しないよね~」
エリーはそう言ってオレンジジュースを一口飲み、カレーを口にする。
「うっわ、カレーとオレンジジュースって死ぬほど合わない。まずい!」
「そう? ……本当だ、口の中で混ぜるとオレンジの渋さと酸味が強調されるわね」
「……本当ですね、おいしくないです。次回は気をつけます」
クロウはカレーとオレンジジュースを口に含み、呟いた。
「……畳の味がする」
「畳食ったことないからわからん!」〝ダンッ〟とエリーがテーブルを叩く。
リノは目を丸くして固まってしまい、フェイは〝ブハッ〟っと盛大に噴き出した。
フェイの顔が一瞬でおかしな方に歪んだ――つまりアヘ顔――のように。
そしてそのまま両手で自身の顔を覆って〝ゲホッゲホッ〟っとむせこんでしまう。
(AHEGAO……?)
クロウはフェイのその顔を見て唖然とする。
(今の顔は……?)
リノもフェイの顔を見て硬直してしまう。
エリーはフェイの背中をさすりながら言った。
「驚かせてごめんな~。フェイは笑いのツボに入ると、アヘ顔みたいになっちゃうんだ。しかも一度ツボに入ると中々抜けないし」
エリーは再びフェイの背中をさすりながら続けて言う。
「フェイはさ、美人じゃん? スタイルもいいじゃん? モテそうなのにって思うけど、これがあるからね……」
「ああ、そうですか……」
クロウはまだ唖然としていた。
「驚きました……」
リノは突然のことに驚いたが、気を持ち直したようだ。
「フェイ、ごめんな~、急に変なこと言って」
フェイは両手で顔を隠しながら、肩を震わせて笑いをこらえつつ、首を横に振り、そして再び〝ゲホッゲホッ〟と咳込んだ。
「フェイはこうなると中々抜けなくなるから、今日はもう期待しない方がいいよ」
((…………))
クロウとリノはフェイを見ながら、沈黙してしまう。
その後、みんなでおいしくカレーを食べ(一名を除く)、次の冒険へと向かった。
――『寂れた古代遺跡』
今回のクエスト、『古代遺跡の財宝を見つけ出せ!』の舞台である。
地上部分は壊れた石畳の道路、折れた石柱、建物の基礎部分しか見えない。
崩れた建物の陰に地下へと降りる階段があり、そこから遺跡の奥へ行けるようだ。
この遺跡には、魔法を使うモンスター『インプ』が生息している事が知られている。
さらに、侵入者を撃退する為の罠などが設置してあり、冒険者の行く手を阻むのだ。
一行は緊張した面持ちで遺跡へ降りて行った。
エリーは慎重に床を調べながら進んでいたが、怪訝そうな顔で言った。
「あれ? 罠が解除してある……」
「先客がいるのかしら?」
「クエスト中に他のプレイヤーと鉢合わせすることもあるんだ?」
「あるよ。低ランクのクエストはかかる時間が少ないから、滅多に会わないけど」
「へぇ~、どんな人がいるんだろ?」
「ウチらの邪魔をしてくるかもしれないよ~?」
「他のプレイヤーが私たちに好意的とは限らないからね」
「そっか、気をつけて行こう」
四人は慎重に奥へと進んでいく、通路を進み、小部屋を抜け、再び奥へ進む。
ここまでの罠はすべて解除されていた。やはり誰かいるようだ。
さらに通路を進むと小部屋があり、そこには見知らぬ男が立っていた。
「なんだ? お前らは」
その男は小部屋に入って来た一行を見て言った。
「俺達はクエストでここまで来たんだけど、そちらは?」
「フン、そうか。俺の名は『博明のライシス』と言う。トレジャーハンターだ。この遺跡に眠る秘宝『赤燐の腕輪』を探しに来た」
「白米のライス?」
「違う! ライシスだ!」
その話を聞いたフェイは再び〝ブフッ〟と噴き出す。
顔を下に向け、両手を顔で隠して笑いをこらえて肩を震わせている。
「笑うな! 不愉快な奴らだ。俺は先に進む、邪魔はするなよ。じゃあな!」
そう言って、ライシスと名乗る男は、一人で奥へと進んで行った。
「あ~あ、怒らせちゃったよ」
「スマン」
「まあ、フェイがツボに嵌ってるだけなんだけどね」
「私達の目的は『イムの首飾り』という物です。同じ物じゃなくて良かったですね」
「あたしらはあたしらで行こっか」
そう話していると、奥の方からこちらへ向かって走って来る足音が聞こえてくる。
その足音の主は先程のライシスだ。
彼の背中のマントは、あちこち焦げ付いていて煙が出ている。
何者かに焼かれたのだろうか。彼はこちらを見て言った。
「ハァ、ハァッ、この先にドラゴンフライの群れがいた。いきなり火を吹かれて服が燃えるところだった。クソッ」
「背中焦げてるけど大丈夫?」
「おこげ?」
三度フェイは〝ブフッ〟と吹き出す。かなりの重症のようだ。
「クソッ!」
ライシスはこの状況にイラつき、背を向けて座り込んだ。
「まあ、あたしらが先に行くから、あんたは休んでな」
エリーはそう言い、皆と一緒に奥へ進んだ。
ライシスの言う通り、通路の先の小部屋にはドラゴンフライが群れている。
小部屋の中に入って来た四人を侵入者とみなし、襲い始めた。
だが、今のクロウ達にとっては大した敵では無く、あっさりと倒された。
さらに奥へと進む一行。
その後ろにはライシスが付いて来ているようだ。
「なんか付いて来てるけど、どうする?」
「目的は別だし、放っておこ」
そう言い、後ろを気にせずに奥へ進んで行く。
通路の先は二手に分かれていて、どちらかに向かわなければならないようだ。
「どっちがいいと思う?」
「ん~、右」
「じゃ、そっち行こう」
「お前らは右か、俺は左へ向かう、どっちが先に手に入れられるか勝負だ!」
そう言って、ライシスは左の通路へ駆けて行った。
「目的のアイテムが違うんですけどね……」
「いいよいいよ、あいつはほっとこう」
フェイはまだ笑いをこらえて肩を震わせている。
一行は右の通路へと進んで行った。
奥へ行き罠を解除して進み、さらに階段を降りて進む。
その通路の先の方は小部屋になっているらしく、そこには魔物の姿があった。
小さい体、灰色の肌、背中には灰色の翼を持つ悪魔の子供、『インプ』である。
そのインプが三匹、小部屋の中にいたのだ。
四人は遠くからインプ達の様子を見ながら、作戦を練る。
「あれが『インプ』か」
「魔法を使ってくるわね」
「どんな魔法でしょうか?」
「火の玉とかだね。インプによって違いはあるけど、弱い魔法だよ」
「じゃあ楽勝かな?」
「ウチの魔法で足止めしても、魔法を飛ばしてくるから注意ね」
「一匹ずつ倒したほうがいいね」
「よし、じゃあ左のやつからいこうか」
「補助魔法をかけますね。聖なる盾!」
「よし、行こう」
こうして彼らはインプのいる部屋に入って行った。
インプ達はこちらに気づくと、炎の玉や氷の槍で攻撃してきた。
「氷結飛槍!」
フェイの魔法で右のインプを足止めすると、クロウとエリーが左のインプに向かって斬りかかる。
クロウの雷神剣の雷撃に加え、エリーの急所を狙った攻撃で一匹を仕留めると、次に二人は中央にいたインプに攻撃した。
だがその時、右の足を凍らされたインプが、光線のような魔法を出してきたのだ。
その魔法の速さに思わず魔法を浴びてしまうクロウ。
「くっ!」
するとクロウの頭の上に、二つの丸い耳がついてしまった。
エリーは中央のインプを倒すと、クロウの頭を見て思わず言った。
「何これ? ミッ〇ー?」
「えっ?」
クロウは頭の丸い耳を触って確認してしまう。
「ダメよ! その姿は著作権的にマズイわ! 耳を隠して!」
クロウはとりあえず、丸い両耳を手で押さえて隠した。
あっけにとられてるエリーにも、左のインプは光線を放った。
「あっ!」
エリーもクロウに気を取られているうちに光線を浴びてしまい、その姿は青と白のネコ型ロボットになってしまった。
「ドラ〇もんですか……」
「えっ! うそ!?」
エリーも自分の体を障り、姿が変わってしまったのを確認し始めた。
突然の出来事に動揺している彼らに、さらにインプは光線を放つ。
リノがその光線を浴びると、おかっぱ頭に赤いスカートの小学生になってしまった。
「きゃっ!?」
「あれは……、ちび〇子ちゃんか?」
「伏せ字になってないよ!」
フェイがその光線を浴びると、唇の厚いサラリーマンになってしまった。
「えっ!?」
「あれ? ア〇ゴさんか!?」
「そうみたいね……」
「なんでウチだけ脇役なのよ!」
フェイは怒るも、その声は渋い声に変っていた。
「まずい、手を離したら権利者に訴えられてしまう……」
「指が無くなったのに短剣持ってるよ……」
「なんでウチが脇役……、でも主役の髪形もイヤ……」
「あたしゃもう困ったもんだよ……」
四人それぞれ魔法を浴びてしまい、インプはこちらを見てせせら笑ってる。
だがクロウは片手で雷神剣を持ち、そのインプをさっくり斬って倒した。
するとすぐに四人の姿が元に戻った。それほど強い魔法ではなかったらしい。
「変身の魔法があんなに恐ろしいものだったとは……」
「権利者に怒られそうだったね……」
「せめてもうちょっとマシなキャラに……」
「しん〇すけの方が良かった?」
「尻だけダンス踊りたくないので結構です……」
ともかくインプ三匹を倒した彼らであったが、思ったより疲弊してしまった。
四人は少し休憩を取ってから、奥へ進むことにした。
一行は少し休んでから奥へ向かうと、そこは何もない行き止まりの小部屋だった。
「行き止まりかな?」
「どうだろ? 壁を調べてみるよ」
エリーはそう言って壁を調べ始める。……何か見つけたようだ。
彼女が壁のスイッチらしきものを操作すると、壁の一部が動き出し、通路が現れた。
「よしっ!」
エリーが隠し通路を見つけ、四人がさらに通路を奥へと進もうとすると、再び彼女がが足元何かを発見した。
「待って、何かの罠がある……」
エリーはそう言って、罠を解除し始める。
「……やばっ」
だが、彼女がそう呟くと、背後の小部屋から何かが崩れる大きな音が聞こえてきた。
後ろの小部屋を見ると、天井が次々落ちてきたのだった。
天井が崩れる轟音と共に砂埃が舞い上がり、一行の視界を遮る……。
砂埃が徐々に落ち着いてくると、〝キィーキィーッ〟と魔物の声が聞こえてきた。
後ろの小部屋の崩れた天井の瓦礫の上には、二匹のインプとライシスがいて、インプ達はライシスめがけて襲いかかる。
だが彼は足を怪我をしているらしく、立ち上がれないまま短剣を振るい、インプ達を追い払おうとした。
「行くぞ! 助けよう!」
そのクロウの掛け声で四人は瓦礫まみれの部屋に入り、インプ達を蹴散らした。
その戦闘が終わると、リノはライシスの怪我の手当を始める。
彼は怪我の痛みに耐えながら言った。
「すまない、助けられたようだ」
「気にしないで下さい」
「そうそう、困ったときはなんとやらっていうやつさ」
リノとクロウはライシスを気遣って言った。
……エリーとフェイは少し離れたところでヒソヒソ話してた。
(天井が落ちてきたのって、エリっちが罠解除に失敗したせいだよね?)
(そうかも……)
(そのせいでライスが上から落ちてきたんじゃない?)
(うぐっ、そうだとしたら悪いことしちゃったな……)
リノがライシスの手当を終えると、彼は一行に頭を下げて礼を言った。
「すまない、助けられたな。お礼という程でもないが、これを貰ってくれ、途中で拾ったものだ。俺は道具が無くなったので一旦引き返す。今回の勝負はこれでおあずけだ。では、さらばだ」
そう言ってライシスは一行に小箱を渡すと、一人で外へ歩いて行った。
ライシスが残していった小箱には、一行のクエストの目的になっている物、『イムの首飾り』が入っていた。
「これ、俺達のクエの目的の物だな……」
「なんでライスが持ってるんだろ?」
彼らは唖然としていたが、どのような過程や結果であれクエストを達成したのだ。
四人はリベルタスの街へ戻って行った。
その後、一行はクエストを報告して報酬を受け取った。
ここで四人の職業ランクが上がってDランクとなり、明日からはより難しいクエストに挑戦するのだろう。
こうして今日の冒険を終わらせた彼らは、明日の準備をしてから休む事にしたのだ。
「今日の朝食はカレーですよ」
リノは三人にそう言って、カレーを四皿、食堂のテーブルに並べる。
そして、オレンジジュースをコップに注ぎ、皆に配った。
「カレーはいつ食べてもおいしいなぁ」
「朝食にカレー、って思うけど、おいしいから食べちゃうよね」
「よほど変な作り方をしないかぎり、失敗しないよね~」
エリーはそう言ってオレンジジュースを一口飲み、カレーを口にする。
「うっわ、カレーとオレンジジュースって死ぬほど合わない。まずい!」
「そう? ……本当だ、口の中で混ぜるとオレンジの渋さと酸味が強調されるわね」
「……本当ですね、おいしくないです。次回は気をつけます」
クロウはカレーとオレンジジュースを口に含み、呟いた。
「……畳の味がする」
「畳食ったことないからわからん!」〝ダンッ〟とエリーがテーブルを叩く。
リノは目を丸くして固まってしまい、フェイは〝ブハッ〟っと盛大に噴き出した。
フェイの顔が一瞬でおかしな方に歪んだ――つまりアヘ顔――のように。
そしてそのまま両手で自身の顔を覆って〝ゲホッゲホッ〟っとむせこんでしまう。
(AHEGAO……?)
クロウはフェイのその顔を見て唖然とする。
(今の顔は……?)
リノもフェイの顔を見て硬直してしまう。
エリーはフェイの背中をさすりながら言った。
「驚かせてごめんな~。フェイは笑いのツボに入ると、アヘ顔みたいになっちゃうんだ。しかも一度ツボに入ると中々抜けないし」
エリーは再びフェイの背中をさすりながら続けて言う。
「フェイはさ、美人じゃん? スタイルもいいじゃん? モテそうなのにって思うけど、これがあるからね……」
「ああ、そうですか……」
クロウはまだ唖然としていた。
「驚きました……」
リノは突然のことに驚いたが、気を持ち直したようだ。
「フェイ、ごめんな~、急に変なこと言って」
フェイは両手で顔を隠しながら、肩を震わせて笑いをこらえつつ、首を横に振り、そして再び〝ゲホッゲホッ〟と咳込んだ。
「フェイはこうなると中々抜けなくなるから、今日はもう期待しない方がいいよ」
((…………))
クロウとリノはフェイを見ながら、沈黙してしまう。
その後、みんなでおいしくカレーを食べ(一名を除く)、次の冒険へと向かった。
――『寂れた古代遺跡』
今回のクエスト、『古代遺跡の財宝を見つけ出せ!』の舞台である。
地上部分は壊れた石畳の道路、折れた石柱、建物の基礎部分しか見えない。
崩れた建物の陰に地下へと降りる階段があり、そこから遺跡の奥へ行けるようだ。
この遺跡には、魔法を使うモンスター『インプ』が生息している事が知られている。
さらに、侵入者を撃退する為の罠などが設置してあり、冒険者の行く手を阻むのだ。
一行は緊張した面持ちで遺跡へ降りて行った。
エリーは慎重に床を調べながら進んでいたが、怪訝そうな顔で言った。
「あれ? 罠が解除してある……」
「先客がいるのかしら?」
「クエスト中に他のプレイヤーと鉢合わせすることもあるんだ?」
「あるよ。低ランクのクエストはかかる時間が少ないから、滅多に会わないけど」
「へぇ~、どんな人がいるんだろ?」
「ウチらの邪魔をしてくるかもしれないよ~?」
「他のプレイヤーが私たちに好意的とは限らないからね」
「そっか、気をつけて行こう」
四人は慎重に奥へと進んでいく、通路を進み、小部屋を抜け、再び奥へ進む。
ここまでの罠はすべて解除されていた。やはり誰かいるようだ。
さらに通路を進むと小部屋があり、そこには見知らぬ男が立っていた。
「なんだ? お前らは」
その男は小部屋に入って来た一行を見て言った。
「俺達はクエストでここまで来たんだけど、そちらは?」
「フン、そうか。俺の名は『博明のライシス』と言う。トレジャーハンターだ。この遺跡に眠る秘宝『赤燐の腕輪』を探しに来た」
「白米のライス?」
「違う! ライシスだ!」
その話を聞いたフェイは再び〝ブフッ〟と噴き出す。
顔を下に向け、両手を顔で隠して笑いをこらえて肩を震わせている。
「笑うな! 不愉快な奴らだ。俺は先に進む、邪魔はするなよ。じゃあな!」
そう言って、ライシスと名乗る男は、一人で奥へと進んで行った。
「あ~あ、怒らせちゃったよ」
「スマン」
「まあ、フェイがツボに嵌ってるだけなんだけどね」
「私達の目的は『イムの首飾り』という物です。同じ物じゃなくて良かったですね」
「あたしらはあたしらで行こっか」
そう話していると、奥の方からこちらへ向かって走って来る足音が聞こえてくる。
その足音の主は先程のライシスだ。
彼の背中のマントは、あちこち焦げ付いていて煙が出ている。
何者かに焼かれたのだろうか。彼はこちらを見て言った。
「ハァ、ハァッ、この先にドラゴンフライの群れがいた。いきなり火を吹かれて服が燃えるところだった。クソッ」
「背中焦げてるけど大丈夫?」
「おこげ?」
三度フェイは〝ブフッ〟と吹き出す。かなりの重症のようだ。
「クソッ!」
ライシスはこの状況にイラつき、背を向けて座り込んだ。
「まあ、あたしらが先に行くから、あんたは休んでな」
エリーはそう言い、皆と一緒に奥へ進んだ。
ライシスの言う通り、通路の先の小部屋にはドラゴンフライが群れている。
小部屋の中に入って来た四人を侵入者とみなし、襲い始めた。
だが、今のクロウ達にとっては大した敵では無く、あっさりと倒された。
さらに奥へと進む一行。
その後ろにはライシスが付いて来ているようだ。
「なんか付いて来てるけど、どうする?」
「目的は別だし、放っておこ」
そう言い、後ろを気にせずに奥へ進んで行く。
通路の先は二手に分かれていて、どちらかに向かわなければならないようだ。
「どっちがいいと思う?」
「ん~、右」
「じゃ、そっち行こう」
「お前らは右か、俺は左へ向かう、どっちが先に手に入れられるか勝負だ!」
そう言って、ライシスは左の通路へ駆けて行った。
「目的のアイテムが違うんですけどね……」
「いいよいいよ、あいつはほっとこう」
フェイはまだ笑いをこらえて肩を震わせている。
一行は右の通路へと進んで行った。
奥へ行き罠を解除して進み、さらに階段を降りて進む。
その通路の先の方は小部屋になっているらしく、そこには魔物の姿があった。
小さい体、灰色の肌、背中には灰色の翼を持つ悪魔の子供、『インプ』である。
そのインプが三匹、小部屋の中にいたのだ。
四人は遠くからインプ達の様子を見ながら、作戦を練る。
「あれが『インプ』か」
「魔法を使ってくるわね」
「どんな魔法でしょうか?」
「火の玉とかだね。インプによって違いはあるけど、弱い魔法だよ」
「じゃあ楽勝かな?」
「ウチの魔法で足止めしても、魔法を飛ばしてくるから注意ね」
「一匹ずつ倒したほうがいいね」
「よし、じゃあ左のやつからいこうか」
「補助魔法をかけますね。聖なる盾!」
「よし、行こう」
こうして彼らはインプのいる部屋に入って行った。
インプ達はこちらに気づくと、炎の玉や氷の槍で攻撃してきた。
「氷結飛槍!」
フェイの魔法で右のインプを足止めすると、クロウとエリーが左のインプに向かって斬りかかる。
クロウの雷神剣の雷撃に加え、エリーの急所を狙った攻撃で一匹を仕留めると、次に二人は中央にいたインプに攻撃した。
だがその時、右の足を凍らされたインプが、光線のような魔法を出してきたのだ。
その魔法の速さに思わず魔法を浴びてしまうクロウ。
「くっ!」
するとクロウの頭の上に、二つの丸い耳がついてしまった。
エリーは中央のインプを倒すと、クロウの頭を見て思わず言った。
「何これ? ミッ〇ー?」
「えっ?」
クロウは頭の丸い耳を触って確認してしまう。
「ダメよ! その姿は著作権的にマズイわ! 耳を隠して!」
クロウはとりあえず、丸い両耳を手で押さえて隠した。
あっけにとられてるエリーにも、左のインプは光線を放った。
「あっ!」
エリーもクロウに気を取られているうちに光線を浴びてしまい、その姿は青と白のネコ型ロボットになってしまった。
「ドラ〇もんですか……」
「えっ! うそ!?」
エリーも自分の体を障り、姿が変わってしまったのを確認し始めた。
突然の出来事に動揺している彼らに、さらにインプは光線を放つ。
リノがその光線を浴びると、おかっぱ頭に赤いスカートの小学生になってしまった。
「きゃっ!?」
「あれは……、ちび〇子ちゃんか?」
「伏せ字になってないよ!」
フェイがその光線を浴びると、唇の厚いサラリーマンになってしまった。
「えっ!?」
「あれ? ア〇ゴさんか!?」
「そうみたいね……」
「なんでウチだけ脇役なのよ!」
フェイは怒るも、その声は渋い声に変っていた。
「まずい、手を離したら権利者に訴えられてしまう……」
「指が無くなったのに短剣持ってるよ……」
「なんでウチが脇役……、でも主役の髪形もイヤ……」
「あたしゃもう困ったもんだよ……」
四人それぞれ魔法を浴びてしまい、インプはこちらを見てせせら笑ってる。
だがクロウは片手で雷神剣を持ち、そのインプをさっくり斬って倒した。
するとすぐに四人の姿が元に戻った。それほど強い魔法ではなかったらしい。
「変身の魔法があんなに恐ろしいものだったとは……」
「権利者に怒られそうだったね……」
「せめてもうちょっとマシなキャラに……」
「しん〇すけの方が良かった?」
「尻だけダンス踊りたくないので結構です……」
ともかくインプ三匹を倒した彼らであったが、思ったより疲弊してしまった。
四人は少し休憩を取ってから、奥へ進むことにした。
一行は少し休んでから奥へ向かうと、そこは何もない行き止まりの小部屋だった。
「行き止まりかな?」
「どうだろ? 壁を調べてみるよ」
エリーはそう言って壁を調べ始める。……何か見つけたようだ。
彼女が壁のスイッチらしきものを操作すると、壁の一部が動き出し、通路が現れた。
「よしっ!」
エリーが隠し通路を見つけ、四人がさらに通路を奥へと進もうとすると、再び彼女がが足元何かを発見した。
「待って、何かの罠がある……」
エリーはそう言って、罠を解除し始める。
「……やばっ」
だが、彼女がそう呟くと、背後の小部屋から何かが崩れる大きな音が聞こえてきた。
後ろの小部屋を見ると、天井が次々落ちてきたのだった。
天井が崩れる轟音と共に砂埃が舞い上がり、一行の視界を遮る……。
砂埃が徐々に落ち着いてくると、〝キィーキィーッ〟と魔物の声が聞こえてきた。
後ろの小部屋の崩れた天井の瓦礫の上には、二匹のインプとライシスがいて、インプ達はライシスめがけて襲いかかる。
だが彼は足を怪我をしているらしく、立ち上がれないまま短剣を振るい、インプ達を追い払おうとした。
「行くぞ! 助けよう!」
そのクロウの掛け声で四人は瓦礫まみれの部屋に入り、インプ達を蹴散らした。
その戦闘が終わると、リノはライシスの怪我の手当を始める。
彼は怪我の痛みに耐えながら言った。
「すまない、助けられたようだ」
「気にしないで下さい」
「そうそう、困ったときはなんとやらっていうやつさ」
リノとクロウはライシスを気遣って言った。
……エリーとフェイは少し離れたところでヒソヒソ話してた。
(天井が落ちてきたのって、エリっちが罠解除に失敗したせいだよね?)
(そうかも……)
(そのせいでライスが上から落ちてきたんじゃない?)
(うぐっ、そうだとしたら悪いことしちゃったな……)
リノがライシスの手当を終えると、彼は一行に頭を下げて礼を言った。
「すまない、助けられたな。お礼という程でもないが、これを貰ってくれ、途中で拾ったものだ。俺は道具が無くなったので一旦引き返す。今回の勝負はこれでおあずけだ。では、さらばだ」
そう言ってライシスは一行に小箱を渡すと、一人で外へ歩いて行った。
ライシスが残していった小箱には、一行のクエストの目的になっている物、『イムの首飾り』が入っていた。
「これ、俺達のクエの目的の物だな……」
「なんでライスが持ってるんだろ?」
彼らは唖然としていたが、どのような過程や結果であれクエストを達成したのだ。
四人はリベルタスの街へ戻って行った。
その後、一行はクエストを報告して報酬を受け取った。
ここで四人の職業ランクが上がってDランクとなり、明日からはより難しいクエストに挑戦するのだろう。
こうして今日の冒険を終わらせた彼らは、明日の準備をしてから休む事にしたのだ。
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