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第1話 人攫いあらわる!
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「じゃあ頑張ってね、クークちゃん」
軽い調子で手を振って神君は何処かへと車を運転して帰っていった。帰ったら人喰い姫の元へといき彼女の腹時計のペースを狂わせてくれることだろう。
そう信じている。
わたしの腕のなかですやすやと眠る子供を落とさないように抱き直す。くしゅん、とくしゃみをしてしまった。物凄く寒い。
寒さで身震いするとアパートへと駆け足で戻った。
開けっぱなしのドアからお隣さんの部屋へと入る。不法侵入になるが、子供を布団の上に寝かせてあげたかった。
狭く寂しい部屋で一人で眠る子供と過去の自分の姿が重なる。早くお母さん、帰ってくるといいね、と心の中で話しかけた。髪を撫でようとして手を止めた。起こしたら可哀想だ。
人攫いにあったことは忘れてゆっくり眠って欲しい。
子供の母親が仕事から帰ってくる前に戻った。
説明を上手くできそうにない。
「……疲れた」
部屋に戻るとベットの上に倒れ込む。はあ、と深いため息を吐き出した。
神と出会い、人喰い姫という魔物を倒すことになった。これまで選ばれて食事にされた人間は何人いるのだろうか。密かに神によって拐われて、犠牲になっていた人間がいたなんて悔しい。わたしは奥歯を噛み締めた。じんわりと涙が滲んで目を閉ざした。
これからは一人も犠牲にさせない。
心の中で強く誓った。
人間がこの星では主役なのだ。魔物はすべて排除する。わたしは偏見のかたまりだ。
軽い調子で手を振って神君は何処かへと車を運転して帰っていった。帰ったら人喰い姫の元へといき彼女の腹時計のペースを狂わせてくれることだろう。
そう信じている。
わたしの腕のなかですやすやと眠る子供を落とさないように抱き直す。くしゅん、とくしゃみをしてしまった。物凄く寒い。
寒さで身震いするとアパートへと駆け足で戻った。
開けっぱなしのドアからお隣さんの部屋へと入る。不法侵入になるが、子供を布団の上に寝かせてあげたかった。
狭く寂しい部屋で一人で眠る子供と過去の自分の姿が重なる。早くお母さん、帰ってくるといいね、と心の中で話しかけた。髪を撫でようとして手を止めた。起こしたら可哀想だ。
人攫いにあったことは忘れてゆっくり眠って欲しい。
子供の母親が仕事から帰ってくる前に戻った。
説明を上手くできそうにない。
「……疲れた」
部屋に戻るとベットの上に倒れ込む。はあ、と深いため息を吐き出した。
神と出会い、人喰い姫という魔物を倒すことになった。これまで選ばれて食事にされた人間は何人いるのだろうか。密かに神によって拐われて、犠牲になっていた人間がいたなんて悔しい。わたしは奥歯を噛み締めた。じんわりと涙が滲んで目を閉ざした。
これからは一人も犠牲にさせない。
心の中で強く誓った。
人間がこの星では主役なのだ。魔物はすべて排除する。わたしは偏見のかたまりだ。
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