同志、求む！

第１話 人攫いあらわる！

６

「神様ならもっとスマートに人攫い出来そうなものだけどな」

米俵担ぎでスタコラサッサと逃げる後ろ姿があまりにも滑稽だったので、不謹慎だと思いながらもわたしは心に思い浮かんだことをそのまま口に出した。

「僕、瞬間移動系がめっちゃ苦手なんだよね。酔い止めの薬飲まないと酔っちゃうから無理。」

首を横に振る仕草がどこか幼い。苦いものが含んだ笑みが男の口元に滲んだ。確かに、瞬間的にぐにゃり、と目の前の光景が歪んで見えたり、揺れを感じるから人によっては瞬間移動の魔法で酔ってしまう事がある。人それぞれ与えられる影響が違う。火の熱さに堪えられなかったり、風に吹き飛ばされたり、過剰に影響されたり、不得意なものを補うために、魔法だけではなく文明も進歩させていった。

「お前の得意系はなんだ？」

そもそもこいつは何ができるんだ、と思ってしまう。
甘い評価をするならば年上の男だが庇護欲をそそられる、と備考欄に書くだろう。
辛い評価をするならば、一言。
頼りない。
本当に神様なのだろうか、と疑問だ。だけど、不思議と惹き付ける何かを持っている。それは言葉に上手く表現できないのがもどかしい。

「人のペースを狂わす系かな」

少し考える表情をして答えた。