ぽかぽか、になろうよ。

遊虎りん

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第1話

8

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「いや、もう少しお前と一緒に居たいと思う」

ルビアの真っ直ぐな言葉に思わずヨロンの顔が赤らむ。そして、嬉しそうに笑った。女性の騎士団員はやはり男性に比べて少ないし、最近仲が良かった子が妊娠休暇に入ってしまったのだ。新しく知り合えた同性と仲良くできたら毎日が楽しくなる。

それに、辛い任務についても気が許せる仲間がいるといないとでモチベーションも違う。
職場は友達を作る場所ではない、と仕事に厳しい父親は言うがやはり人が集まる場所だ。
言葉をかわす、必要があるなら心も寄せたい。

「よし!じゃあ、ランチに出発!」

大人女子二人は物々しい建物を出ると繁華街へと向かった。

***

シシドは普段着に着替える為、一旦家に戻っていた。黒いシンプルな服。久しぶりの休日のお父さんの姿にリナは嬉しそうにはしゃいだ。

手を繋いで家を出る。

「おとうさんとてをつなぐのすき!」

ぎゅと小さな手でシシドの手を掴むとリナはずっと話したかった事を喋る。
騎士団長であるシシドは家を空けるのが多かった。この地は平和のようだが、魔物が生息しており命を奪われるケースは月に1件はある。
痛ましく命を奪われる事態が稀にあり、警備や鍛練は怠ることを許されない。
最近、魔物達が人里に現れた、と目撃情報もあり油断出来ない状況だ。

副団長のリュト、それに優秀な騎士団員達がいる。団長がいなくとも平和を守ることは出来る。信頼している。だが、守りたい人達を安心させたい思いが強いため休日でも巡回に回ってしまう質だった。

「私もリナと手を繋ぐの好きだ。リナは赤ん坊の時、私の指をぎゅっと握ってくれた…愛しいと思ったよ」

白く丸い頬をピンク色に染めてあーうー、と声をあげながら指を握る赤ん坊の時のリナを思い出してシシドは微笑んだ。

そして、負担を掛けている事が申し訳なくなる。

「……リナ、寂しい思いをさせてすまない」

ぽかぽか、太陽が二人を包み込んでいる。穏やかな風が二人の頬を撫でた。

「さっきね。リナ、かぜがおかあさんみたいだっておもってなきそうだったの。でも、いまはへいき!おとうさんとおかさんがなでてくれたのかなぁ?ってわらえるから」

ね!とリナは笑った。感情は一瞬で塗り替えることが出切る。二人一緒だと思い出が悲しいものだけにならない。

「おしごとがんばっている、おとうさんすき。リナだけじゃなくてリナがすきなみんなをまもってくれてる……おかえりなさい、ってリナがおとうさんのかえりをまつのがリナのいまできるしごとだから」

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