3人play。

遊虎りん

文字の大きさ
上 下
46 / 67

45 悪夢⑦

しおりを挟む
***

我蛇が率いるこの盗賊の一味は名はなかった。8人の男により形成されていた。

この世界では住む家の大きさがその人物の器を現していた。立派な建物ほど地位や権力を持つ。
しかし、財力を持つようになると感覚が麻痺して、人々が生活を良くして欲しいと願い汗水垂らして稼いで預けられた金を自分のもののように使うようになる。
むろん、堅実に人々の願いを受け止めて約束を果たす者もいるが稀な存在だった。
最初はいいが途中で腐っていくのが大半である。
貧しいが干からびて死ぬほどではない。豊かな生活を夢見るのが馬鹿らしい、と人々は諦めている。

「痛みを感じるのが鈍くなった肥えた豚に、死ぬほどの痛みを与える…脂をそぎ落としててめぇも喰われるだけの畜生であることを思い出させる」

我蛇は正義のために動いているわけではない。金を搾り取りぶくぶくと肥えた権力を持つ豚のように成り下がった醜い人間を痛め付けるのが好きなだけだ。奪い取った金はそこの街で全て使う。
料理に使う食材がないなら、この金で仕入れてこい、と投げ渡すこともある。
盗賊と恐れられるが、一部の人間からは感謝されていた。

強い存在を壊すのを好むため厄介な魔物を討伐すると声が掛かった時は手を貸している。
まるで英雄のように見ている者達もいた。
我蛇一行は目立つ。
屈強な体躯で顔の作りは荒削りな者でもそれなりに整っている。近付けない雰囲気の我蛇と使気は女達が遠くから憧れの眼差しを送り頬をピンク色に染めるほどの美丈夫である。

我蛇を見つけて駆け寄ろうとするが、胸を押えため息を洩らしている女が見えてユイは立ち止まる。

(……声をかけれないんだ)

面識がない女だ。熱心に我蛇を見つめてはいるが声をかける気配がない。ほっとする、が、すぐに安心する自分が不思議に思う。

「…ユイ、あまり我蛇様になつかない方がいい」

後ろから声をかけられユイは驚いて飛び上がった。後ろを振り向くと細身の中性的な美しい顔立ちの男が立っていた。

「それはどういう意味?」

理解が出来ずユイは眉を寄せた。

「……あの方はお前の気持ちを何れ裏切るだろう」

「なんで?」

「……お前が女だからだ」

「男とか女とか関係ない!」

ユイはかあっとなって言い返した。恥ずかしいと思った。この場から逃げ出したくなりユイは走り出した。

「…っ、…魚でも盗んできたのか?」

首根っこを捕まれる。上から降ってくるのは我蛇の声だ。

「我蛇、わたしと遊んで!」

ユイは我蛇の腕を掴んで足を振り上げて勢いをつけると宙で一回転する。直ぐに体勢を整えて攻撃を仕掛けた。拳を受け流し、額を指先でつく。呆気なくよろけてユイは地面に尻餅をついた。

「…ほら、ユイ…飯食いに行くぞ」

手を差し伸ばされる。ユイは我蛇の手を掴んで立ち上がった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~

一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、 快楽漬けの日々を過ごすことになる! そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!? ※この物語はフィクションです。 R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

王女、騎士と結婚させられイかされまくる

ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。 性描写激しめですが、甘々の溺愛です。 ※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。

【完結】やさしい嘘のその先に

鷹槻れん
恋愛
妊娠初期でつわり真っ只中の永田美千花(ながたみちか・24歳)は、街で偶然夫の律顕(りつあき・28歳)が、会社の元先輩で律顕の同期の女性・西園稀更(にしぞのきさら・28歳)と仲睦まじくデートしている姿を見かけてしまい。 妊娠してから律顕に冷たくあたっていた自覚があった美千花は、自分に優しく接してくれる律顕に真相を問う事ができなくて、一人悶々と悩みを抱えてしまう。 ※30,000字程度で完結します。 (執筆期間:2022/05/03〜05/24) ✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼ 2022/05/30、エタニティブックスにて一位、本当に有難うございます! ✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼ --------------------- ○表紙絵は市瀬雪さまに依頼しました。  (作品シェア以外での無断転載など固くお断りします) ○雪さま (Twitter)https://twitter.com/yukiyukisnow7?s=21 (pixiv)https://www.pixiv.net/users/2362274 ---------------------

【完結】堕ちた令嬢

マー子
恋愛
・R18・無理矢理?・監禁×孕ませ ・ハピエン ※レイプや陵辱などの表現があります!苦手な方は御遠慮下さい。 〜ストーリー〜 裕福ではないが、父と母と私の三人平凡で幸せな日々を過ごしていた。 素敵な婚約者もいて、学園を卒業したらすぐに結婚するはずだった。 それなのに、どうしてこんな事になってしまったんだろう⋯? ◇人物の表現が『彼』『彼女』『ヤツ』などで、殆ど名前が出てきません。なるべく表現する人は統一してますが、途中分からなくても多分コイツだろう?と温かい目で見守って下さい。 ◇後半やっと彼の目的が分かります。 ◇切ないけれど、ハッピーエンドを目指しました。 ◇全8話+その後で完結

処理中です...