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45 悪夢⑦
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***
我蛇が率いるこの盗賊の一味は名はなかった。8人の男により形成されていた。
この世界では住む家の大きさがその人物の器を現していた。立派な建物ほど地位や権力を持つ。
しかし、財力を持つようになると感覚が麻痺して、人々が生活を良くして欲しいと願い汗水垂らして稼いで預けられた金を自分のもののように使うようになる。
むろん、堅実に人々の願いを受け止めて約束を果たす者もいるが稀な存在だった。
最初はいいが途中で腐っていくのが大半である。
貧しいが干からびて死ぬほどではない。豊かな生活を夢見るのが馬鹿らしい、と人々は諦めている。
「痛みを感じるのが鈍くなった肥えた豚に、死ぬほどの痛みを与える…脂をそぎ落としててめぇも喰われるだけの畜生であることを思い出させる」
我蛇は正義のために動いているわけではない。金を搾り取りぶくぶくと肥えた権力を持つ豚のように成り下がった醜い人間を痛め付けるのが好きなだけだ。奪い取った金はそこの街で全て使う。
料理に使う食材がないなら、この金で仕入れてこい、と投げ渡すこともある。
盗賊と恐れられるが、一部の人間からは感謝されていた。
強い存在を壊すのを好むため厄介な魔物を討伐すると声が掛かった時は手を貸している。
まるで英雄のように見ている者達もいた。
我蛇一行は目立つ。
屈強な体躯で顔の作りは荒削りな者でもそれなりに整っている。近付けない雰囲気の我蛇と使気は女達が遠くから憧れの眼差しを送り頬をピンク色に染めるほどの美丈夫である。
我蛇を見つけて駆け寄ろうとするが、胸を押えため息を洩らしている女が見えてユイは立ち止まる。
(……声をかけれないんだ)
面識がない女だ。熱心に我蛇を見つめてはいるが声をかける気配がない。ほっとする、が、すぐに安心する自分が不思議に思う。
「…ユイ、あまり我蛇様になつかない方がいい」
後ろから声をかけられユイは驚いて飛び上がった。後ろを振り向くと細身の中性的な美しい顔立ちの男が立っていた。
「それはどういう意味?」
理解が出来ずユイは眉を寄せた。
「……あの方はお前の気持ちを何れ裏切るだろう」
「なんで?」
「……お前が女だからだ」
「男とか女とか関係ない!」
ユイはかあっとなって言い返した。恥ずかしいと思った。この場から逃げ出したくなりユイは走り出した。
「…っ、…魚でも盗んできたのか?」
首根っこを捕まれる。上から降ってくるのは我蛇の声だ。
「我蛇、わたしと遊んで!」
ユイは我蛇の腕を掴んで足を振り上げて勢いをつけると宙で一回転する。直ぐに体勢を整えて攻撃を仕掛けた。拳を受け流し、額を指先でつく。呆気なくよろけてユイは地面に尻餅をついた。
「…ほら、ユイ…飯食いに行くぞ」
手を差し伸ばされる。ユイは我蛇の手を掴んで立ち上がった。
我蛇が率いるこの盗賊の一味は名はなかった。8人の男により形成されていた。
この世界では住む家の大きさがその人物の器を現していた。立派な建物ほど地位や権力を持つ。
しかし、財力を持つようになると感覚が麻痺して、人々が生活を良くして欲しいと願い汗水垂らして稼いで預けられた金を自分のもののように使うようになる。
むろん、堅実に人々の願いを受け止めて約束を果たす者もいるが稀な存在だった。
最初はいいが途中で腐っていくのが大半である。
貧しいが干からびて死ぬほどではない。豊かな生活を夢見るのが馬鹿らしい、と人々は諦めている。
「痛みを感じるのが鈍くなった肥えた豚に、死ぬほどの痛みを与える…脂をそぎ落としててめぇも喰われるだけの畜生であることを思い出させる」
我蛇は正義のために動いているわけではない。金を搾り取りぶくぶくと肥えた権力を持つ豚のように成り下がった醜い人間を痛め付けるのが好きなだけだ。奪い取った金はそこの街で全て使う。
料理に使う食材がないなら、この金で仕入れてこい、と投げ渡すこともある。
盗賊と恐れられるが、一部の人間からは感謝されていた。
強い存在を壊すのを好むため厄介な魔物を討伐すると声が掛かった時は手を貸している。
まるで英雄のように見ている者達もいた。
我蛇一行は目立つ。
屈強な体躯で顔の作りは荒削りな者でもそれなりに整っている。近付けない雰囲気の我蛇と使気は女達が遠くから憧れの眼差しを送り頬をピンク色に染めるほどの美丈夫である。
我蛇を見つけて駆け寄ろうとするが、胸を押えため息を洩らしている女が見えてユイは立ち止まる。
(……声をかけれないんだ)
面識がない女だ。熱心に我蛇を見つめてはいるが声をかける気配がない。ほっとする、が、すぐに安心する自分が不思議に思う。
「…ユイ、あまり我蛇様になつかない方がいい」
後ろから声をかけられユイは驚いて飛び上がった。後ろを振り向くと細身の中性的な美しい顔立ちの男が立っていた。
「それはどういう意味?」
理解が出来ずユイは眉を寄せた。
「……あの方はお前の気持ちを何れ裏切るだろう」
「なんで?」
「……お前が女だからだ」
「男とか女とか関係ない!」
ユイはかあっとなって言い返した。恥ずかしいと思った。この場から逃げ出したくなりユイは走り出した。
「…っ、…魚でも盗んできたのか?」
首根っこを捕まれる。上から降ってくるのは我蛇の声だ。
「我蛇、わたしと遊んで!」
ユイは我蛇の腕を掴んで足を振り上げて勢いをつけると宙で一回転する。直ぐに体勢を整えて攻撃を仕掛けた。拳を受け流し、額を指先でつく。呆気なくよろけてユイは地面に尻餅をついた。
「…ほら、ユイ…飯食いに行くぞ」
手を差し伸ばされる。ユイは我蛇の手を掴んで立ち上がった。
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