22 / 67
21 ランジュ①
しおりを挟む
***
数分の遅れが人生を大きく左右したって思わない。
ただ、母親の腹から出る順番がジュランの後だったからこの国の王にはなれない、なんて悲観してジュランを恨んで生きるのなんて馬鹿らしい。
僕は人生楽して暮らせる身分だ。
精々、僕はジュランの傍らで他人事のように楽しむだけ。
だけど、手首に結ばれる青い紐がたまに重く感じる事があった。
城のものはまず僕の顔を見ないで手首の紐を見る。
それから僕の顔を見る。
それが苛立つ。
見分けなくてもいい、僕をまっすぐ見ろ。
間違ってもいい、許してやるから。
僕を見てくれ。
僕らしくもない事を大声で叫びたくなる時があった。
それは僕が今より少し幼かった頃の話だ。
「可哀想なランジュ様、もう少し早く生まれたなら貴方が次の王様でしたのに」
もう、名前を忘れたが何処ぞのお姫様だったと思う。僕の気を引こうとしてか同情するような顔でそんな事を言ってきた。
何故、僕が王様になれないから可哀想なんだろう。
僕が王様になりたかったなら、ジュランを殺せばいいだけの話だ。
心の中が冷たくなる。
「ありがとう、君だけだよ。僕の気持ちを分かってくれるのは」
僕は微笑んだ。心にもないことは笑って話せた。
そうすると決まって相手は頬を赤く染めて恥じらうようにして微笑む。
身を寄せて甘えてくる。二人っきりの部屋。
僕の雄は早熟で酷く飢えていたから、獲物を捕獲して定期的に食っていた。
女はこう思う。どちらの子供を生んでも、ジュランとの子供だと言い張ればそうなる。
顔は同じだから、血は同じだから。
「わたくし、ランジュ様のお嫁さんになりたいですわ」
こいつも僕を見ていない。僕がジュランの代わりをやってるときは、ジュランの嫁になりたいと甘えていた。
どいつもこいつも僕よりも王様が欲しいらしい。
次の王様に取り入って、自分の欲望を満たしたいらしい。
誰も僕を見てくれない。
大人になろうと自分で自分に言い聞かせていた事はは、その時の幼い僕にはまだ少しだけ早かった。溜まっていたモノがある時爆発してしまった。
僕は誰にも何も言わずに城を飛び出た。
雨が降っていたけど、全身ずぶ濡れになったけど、どうでも良かった。
僕を心配してくれる人は何処にもいない。
大声を出して泣いても雨がそれを掻き消してくれた。
服に雨が染み込んで重くなる。荒れ狂った川が目の前にあった。
死ぬつもりはなかった。
だけど、暗く渦巻く川の流れを見ているうちにそこへと誘われて僕は身を投げ出していた。
数分の遅れが人生を大きく左右したって思わない。
ただ、母親の腹から出る順番がジュランの後だったからこの国の王にはなれない、なんて悲観してジュランを恨んで生きるのなんて馬鹿らしい。
僕は人生楽して暮らせる身分だ。
精々、僕はジュランの傍らで他人事のように楽しむだけ。
だけど、手首に結ばれる青い紐がたまに重く感じる事があった。
城のものはまず僕の顔を見ないで手首の紐を見る。
それから僕の顔を見る。
それが苛立つ。
見分けなくてもいい、僕をまっすぐ見ろ。
間違ってもいい、許してやるから。
僕を見てくれ。
僕らしくもない事を大声で叫びたくなる時があった。
それは僕が今より少し幼かった頃の話だ。
「可哀想なランジュ様、もう少し早く生まれたなら貴方が次の王様でしたのに」
もう、名前を忘れたが何処ぞのお姫様だったと思う。僕の気を引こうとしてか同情するような顔でそんな事を言ってきた。
何故、僕が王様になれないから可哀想なんだろう。
僕が王様になりたかったなら、ジュランを殺せばいいだけの話だ。
心の中が冷たくなる。
「ありがとう、君だけだよ。僕の気持ちを分かってくれるのは」
僕は微笑んだ。心にもないことは笑って話せた。
そうすると決まって相手は頬を赤く染めて恥じらうようにして微笑む。
身を寄せて甘えてくる。二人っきりの部屋。
僕の雄は早熟で酷く飢えていたから、獲物を捕獲して定期的に食っていた。
女はこう思う。どちらの子供を生んでも、ジュランとの子供だと言い張ればそうなる。
顔は同じだから、血は同じだから。
「わたくし、ランジュ様のお嫁さんになりたいですわ」
こいつも僕を見ていない。僕がジュランの代わりをやってるときは、ジュランの嫁になりたいと甘えていた。
どいつもこいつも僕よりも王様が欲しいらしい。
次の王様に取り入って、自分の欲望を満たしたいらしい。
誰も僕を見てくれない。
大人になろうと自分で自分に言い聞かせていた事はは、その時の幼い僕にはまだ少しだけ早かった。溜まっていたモノがある時爆発してしまった。
僕は誰にも何も言わずに城を飛び出た。
雨が降っていたけど、全身ずぶ濡れになったけど、どうでも良かった。
僕を心配してくれる人は何処にもいない。
大声を出して泣いても雨がそれを掻き消してくれた。
服に雨が染み込んで重くなる。荒れ狂った川が目の前にあった。
死ぬつもりはなかった。
だけど、暗く渦巻く川の流れを見ているうちにそこへと誘われて僕は身を投げ出していた。
0
お気に入りに追加
481
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~
一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、
快楽漬けの日々を過ごすことになる!
そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!?
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
【完結】やさしい嘘のその先に
鷹槻れん
恋愛
妊娠初期でつわり真っ只中の永田美千花(ながたみちか・24歳)は、街で偶然夫の律顕(りつあき・28歳)が、会社の元先輩で律顕の同期の女性・西園稀更(にしぞのきさら・28歳)と仲睦まじくデートしている姿を見かけてしまい。
妊娠してから律顕に冷たくあたっていた自覚があった美千花は、自分に優しく接してくれる律顕に真相を問う事ができなくて、一人悶々と悩みを抱えてしまう。
※30,000字程度で完結します。
(執筆期間:2022/05/03〜05/24)
✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
2022/05/30、エタニティブックスにて一位、本当に有難うございます!
✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
---------------------
○表紙絵は市瀬雪さまに依頼しました。
(作品シェア以外での無断転載など固くお断りします)
○雪さま
(Twitter)https://twitter.com/yukiyukisnow7?s=21
(pixiv)https://www.pixiv.net/users/2362274
---------------------
【完結】堕ちた令嬢
マー子
恋愛
・R18・無理矢理?・監禁×孕ませ
・ハピエン
※レイプや陵辱などの表現があります!苦手な方は御遠慮下さい。
〜ストーリー〜
裕福ではないが、父と母と私の三人平凡で幸せな日々を過ごしていた。
素敵な婚約者もいて、学園を卒業したらすぐに結婚するはずだった。
それなのに、どうしてこんな事になってしまったんだろう⋯?
◇人物の表現が『彼』『彼女』『ヤツ』などで、殆ど名前が出てきません。なるべく表現する人は統一してますが、途中分からなくても多分コイツだろう?と温かい目で見守って下さい。
◇後半やっと彼の目的が分かります。
◇切ないけれど、ハッピーエンドを目指しました。
◇全8話+その後で完結
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる