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頭の芯が熱い。心臓が脈打つ回数が数十倍で、胸が苦しく眩暈がする。何も触れられていないのに膣口から愛液が溢れ濡れた感触が気色悪い。それに喉が乾いて飢えている。
「……ん、……み、ず」
水が飲みたい。ぼんやりと霞む頭で掠れた声が無意識に出る。私はここが何処か理解していない。
風邪を引いてしまった悪夢を見ていると思い込んでいた。
顎が上向かされると柔らかな感触を感じたあと、冷たいものを流し込まられた。
水だ、瞬時に理解すると躊躇うことなくこくんと喉をならして飲む。もっと欲しい、と願うと一度柔らかなものが離れ再び塞がれ、水が注ぎ込まれる。
はあ、と満足の息を洩らすと唇を吸われた。今度は熱いもので舌を絡み取られる。口腔を擦られ心地がよい。
瞳を開けるとジュランがいた。
夢の中でジュランとキスしている、夢だから現実に起こり得ない事を見る。
きっと、私は淫乱な悪夢を見ているのだ。王子達はどんなに魅力的な女でも自らの進んでは、口づけをしないときく。ヤり捨てられるのが当たり前、王子のキスは何よりも極上であると噂され、夜伽に選ばれた花達は愛らしくキスをせがんで一時の夢を見るのだ、ときいた。
何の娯楽もないここでは、王子様の話題が何よりも面白いらしい。少し性格に難があり、みんなに避けられている女騎士仲間のリンのお喋りの相手をしている。それで、私は王子達の噂を最新版まで把握しているのだ。
適当に相槌をうち聞き流している。もしかしたらその中に感動の涙を誘う噂もあるだろうが、興味がない。双子が悪魔だろうが天使だろうが私の腹が満たされるわけでもないし、世界が平和になるわけでもない。
しかし、ジュランは私に水を与えた。この悪魔はいい悪魔かもしれない。夢だから辻褄が合わなくても仕方がない。
「…ジュラン。お前のキスは噂通り気持ちがいい」
口づけの合間に名前を呼ぶとようやくジュランは私の唇を離して視線を合わせた。
「噂?へえ、お前は俺達には興味がないと思っていたが」
「飯の時聞かせられるから逃げることが出来ないからな、…でも、噂は所詮噂話。事実とは異なる。お前らはキス魔だ。昨日、ランジュが私のキスした。初めてをあのクソガキに、奪われて不快だった」
ランジュへの苦情をジュランに言った。
まあ、あれも夢かもしれない。
筋肉質でゴリラみたいな私を果たして抱くだろうか、記憶が曖昧になってくる。
「それはすまなかった。くっ、…今まで俺達を見破るやつがいなかったからあいつをしたことで俺にとばっちりが食らう事などなかったが…しかし、面白くないな。俺はいい思いをしていない」
不満げな顔で私を見る。そして、再び深く口付けて舌を絡める。激しく甘いキス。とろん、と蕩ける巧みな口付けだ。
「……ん、……み、ず」
水が飲みたい。ぼんやりと霞む頭で掠れた声が無意識に出る。私はここが何処か理解していない。
風邪を引いてしまった悪夢を見ていると思い込んでいた。
顎が上向かされると柔らかな感触を感じたあと、冷たいものを流し込まられた。
水だ、瞬時に理解すると躊躇うことなくこくんと喉をならして飲む。もっと欲しい、と願うと一度柔らかなものが離れ再び塞がれ、水が注ぎ込まれる。
はあ、と満足の息を洩らすと唇を吸われた。今度は熱いもので舌を絡み取られる。口腔を擦られ心地がよい。
瞳を開けるとジュランがいた。
夢の中でジュランとキスしている、夢だから現実に起こり得ない事を見る。
きっと、私は淫乱な悪夢を見ているのだ。王子達はどんなに魅力的な女でも自らの進んでは、口づけをしないときく。ヤり捨てられるのが当たり前、王子のキスは何よりも極上であると噂され、夜伽に選ばれた花達は愛らしくキスをせがんで一時の夢を見るのだ、ときいた。
何の娯楽もないここでは、王子様の話題が何よりも面白いらしい。少し性格に難があり、みんなに避けられている女騎士仲間のリンのお喋りの相手をしている。それで、私は王子達の噂を最新版まで把握しているのだ。
適当に相槌をうち聞き流している。もしかしたらその中に感動の涙を誘う噂もあるだろうが、興味がない。双子が悪魔だろうが天使だろうが私の腹が満たされるわけでもないし、世界が平和になるわけでもない。
しかし、ジュランは私に水を与えた。この悪魔はいい悪魔かもしれない。夢だから辻褄が合わなくても仕方がない。
「…ジュラン。お前のキスは噂通り気持ちがいい」
口づけの合間に名前を呼ぶとようやくジュランは私の唇を離して視線を合わせた。
「噂?へえ、お前は俺達には興味がないと思っていたが」
「飯の時聞かせられるから逃げることが出来ないからな、…でも、噂は所詮噂話。事実とは異なる。お前らはキス魔だ。昨日、ランジュが私のキスした。初めてをあのクソガキに、奪われて不快だった」
ランジュへの苦情をジュランに言った。
まあ、あれも夢かもしれない。
筋肉質でゴリラみたいな私を果たして抱くだろうか、記憶が曖昧になってくる。
「それはすまなかった。くっ、…今まで俺達を見破るやつがいなかったからあいつをしたことで俺にとばっちりが食らう事などなかったが…しかし、面白くないな。俺はいい思いをしていない」
不満げな顔で私を見る。そして、再び深く口付けて舌を絡める。激しく甘いキス。とろん、と蕩ける巧みな口付けだ。
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