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琉美が遊びに出掛けていた公園から家は歩いて10分程だ。今はお昼時で腹がぐーっと鳴ると腹の虫の音をきいて空腹だと自覚してしまって琉美は眉を下げた。
機嫌が悪くなる。

「ちい兄様、るうはおひめさま!」

「はいはい、左様でございますか」

お姫様抱っこをして千比絽は赤い屋根で白壁の一軒家へと足を向けた。クラスメイトの男子達と比べると千比絽は細く白い腕で華奢なからだの作りをしているがひ弱そうな見かけに拠らず力持ちで、余裕の表情で妹を抱いたまま歩いてお姫様扱いをする。

「るう姫、今日のお昼ごはんはなんだと思いますか?」

「えーとね、……この匂いはカレーうどん!!」

大好物のカレーのいい匂いが家の前から漂ってくる。くんくん、と鼻をひくつかせて琉美は美しい夜空に輝く星のように瞳を輝かせた。

「うどんかー。芳さん、昨日夜食にうどん食べてたし買い置きあるかな」

ぼそりと思わず呟く。千比絽は10歳離れた兄である芳をさん付けして呼ぶ。兄さんというより育ての親という感覚が強いのもあるが、上の兄よりも妹に頼られたい、自立していると考えている。最近生意気盛りでもあるためだ。千比絽は一端、琉美を玄関の前で下ろすとドアを開けた。
琉美は靴を脱ぐと揃えずそのまま台所へと走っていった。

「るうちゃん!靴揃えて、ってもう。お行儀が悪いお姫様だ。少し甘やかし過ぎたかな」

千比絽はため息を吐いて琉美の脱いでひっくり返っている靴を揃えた。

美味しそうなカレーの匂いで千比絽の腹の虫も鳴った。兄は料理が上手い。きっと腹の虫もカレーを食べると大満足して大人しくなるだろう。


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