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第12話。
しおりを挟む「暗くなる前に帰らないとな。母ちゃん、心配するぞ」
目付きが悪いけど、目の奥はポカポカしている。優しい色合いの瞳。
「…心配してくれるかな」
思わずそんな親の愛情を疑った言葉が口に出る。
長年たまっていた黒い感情があふれ出ていた。
ちらり、と清涼が僕を見る。
「考えていたものと、違うのって結構あるんだよな。分かっていたつもりになっていただけ」
「分かっていたつもり」
うつむく僕の頭をぽんぽん、と撫でた。
突然、風が荒ぶる。
人間でないものの気配がする。
ぞくり、と肌が震えて寒気が止まらない。
清涼が鋭く舌打ちする。
「くそ、まだいたのか」
黒く不気味な風から僕を隠すのように立つと清涼は両手の指を組んで呪文らしき言葉を口ずさんだ。
「…あきら、悪い。俺はお前を守れる力はねえから、ババアのところに送る!」
苦しげな清涼の声が頭に響いた瞬間、僕の意識が飛んだ。
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