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第10話。
しおりを挟む「どーいたしまして」
僕がお礼を言うと男は照れ臭そうに頭を掻いてからまだ少年の心を忘れてはいない、無邪気の名残が残っている笑顔をむけた。
「俺は清涼だ」
名乗った男の名前に僕は首を傾げた。
「なつみさんではないんですか」
「なつみは俺の母親の名前なんだ」
晋吾さんは少し複雑そうな顔をした。
家庭の事情というものがあるらしい。
「僕はあきらです。父は男の子が欲しかったけど、僕は四番目で、女だったから、男の子はあきら、めたそうです」
「なるほどな。俺は最初、爽快だったんだぜ。子供ができた、そうかい、ってな。類義語の清涼にする安直感。名前なんてそんなもんだ」
願いを込めるひと、字画を考えるひと、様々な名付け事情。
名付けの親、という言葉があるくらい。
名前のことで悩んでいるひとはたくさんいるんだろう。
その事に僕は今、気づいた。
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