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第九章

☆3

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◇◇◇

『にゃぁん!』

ここはルミテルの邸から少し離れたとある場所。
特別な場所ではなくて、大きな木が生えているだけなのだが、そこに猫が集まっているのだ。

異様な光景である。

辺り一面、茶色や白など様々なもふもふ毛並みの猫達。もぞもぞと動いている。
大きな木の根もとに穴が空いていて、そこに一匹顔を突っこみ何か鳴き声をあげている。

猫が何かに呼び掛けているように聞こえるがルミテルには『にゃぁん!』と鳴いている事しか分からなかった。

猫は一回、穴に向かって鳴くと耳をぴくんと揺らす。そして、何だか残念そうに肩を落としてすごすごと帰っていくのだ。


「ティアちゃん、この猫達は何をしているか分かりますの?」

ルミテルはティアの方を向いて訊ねた。ちょうど、ティアは目の前の蝶々を目で追いかけている所だった。瞳が爛々と輝いていて今にも追いかけそうである。

「ねこ?んーと、『出てきなよ』『ずっとそこにいてもつまらないよ』といっ、てる。なにしてる、の?」

ルミテルに話し掛けられるとティアは彼女の方に意識を向けた。
そして、猫達を見て瞬きする。鳴き声に込められた意味を理解する。
ティアは猫が発する言葉は分かったが、一体何をしているのか分からない為、首を傾げて猫達に訊ねた。

ざっ!と猫達が振り向いてティアの方を見た。

『にゃあ!』

一斉に猫が鳴いた。

「可愛いなぁ」

兎の耳を揺らしランツはのんびりとルミテルの横で猫達がにゃあにゃあ鳴いているのを頬を緩めて眺めている。

「えー、うん。みてみる、ね」

ティアは頷くと大きな木に近づくとしゃがみこんだ。そして、穴を覗き込む。暗くて何も見えない。そうと思ったが2つの光が見えた。

目だ。

2つの眼。

気付いた時にはティアはころん、と木の根元の穴に落ちていた。

「ティアちゃん!」

ルミテルの驚いた声が聞こえた。だいじょ、ぶ!と答える余裕がティアにはあった。

たぶん、きっと、ティアがこの木の根元の穴に落ちるのは生まれる前から決まっていた事なのだ。

怖くない、

怖くない、

大丈夫だよ、


真っ暗な穴に落ちる。
その最中に浮かんでは消えてまた、浮かび上がる言葉は自分とそして、目の持ち主に向ける言葉である。

どさ、

柔らかな何かの上にティアは落ちた。
ころん、と反動でその上から転げ落ちそうになるが、何かの太い腕に抱き止められる。



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