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第一章
☆4
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「あー、あー、あー!」
ティアは悲しくて苦しくて堪らなくて何度も言葉にならない声で叫んだ。今までの辛いことが津波のように押し寄せてティアを冷たく包んで沈めた。雷が鳴り怖くて震える夜、冷たく身も凍るような吹雪の日、熱を出して苦しんだ時、食べ物が運ばれずひもじい思いをした豪雨の日、どれもひとりぼっちだった。心細かった。だけど、ティアの耳に届く声達は誰かを思い、誰かに思われていた。楽しそうな笑い声、愛してると囁く声、聞いているだけで幸せになれた。自分には向けられない声、自分は誰にも声をかけることを許されない。卑しく恐ろしい化け物だから。寂しい、辛い、名前を呼んでほしい、笑顔を向けてほしい
ひとりぼっちは悲しい。
誰にも向けれなかった感情が爆発した。
涙がボロボロボロと溢れて止まることはない
ティアの声を聞いて、男の胸が痛んだ。
幼子のような泣き声。最近、生まれたばかりの妹と似ている幼い泣き声。
悲しい、苦しい、と全身全霊で嘆いている。
(卑しい化け物、ではない。この子は、俺を手当てしてくれた優しい女の子だ)
己の失言を悔いる。
あの言葉でこの少女の心を深く傷付けてしまったのだ。
男は何かを言おうと口を開くが、男が言葉を発する前にティアは怯えた顔をして身を翻すと窓から飛び降りた。
また、男に化け物、と言われるのが怖くて嫌だったからティアは逃げ出した。雨がザーザーと降っている。冷たいはずだが、今のティアには何も感じなかった。ティアが走る度に泥水が跳ねて白い毛並みを汚した。足を取られて転んで倒れる。直ぐに起き上がれない。手や身体に力が入らなかった。
「ティアちゃん、だいじょうぶ?」
「…へいきよ、ティアは、ずっと、ひとりぼっちだから」
心優しいティアの友達が声を掛けてくれた。
涙で掠れた声で答えて頬笑む。目を閉じる。ドクンドクン、と自分の心臓が早鐘打っている。
もう、声を聞くの疲れた。自分の心臓の音だけを聞こう。これはいずれ止まり静かになる。
「でも、つかれたわ、…ティア、めをさます、ひつよう、あるのかしら」
目蓋が重くて一度閉ざしたら、くっついたように離れない。ずっと目を開けないと普通なら心配してくれる。悲しんでくれる、でも、ティアが目を覚まさなくても誰も悲しまない。
(おはよう、って、あいさつ、したかったな)
たっぷりと柔らかなベットで眠り、目覚めた時、新しい朝を迎えれた喜びを感じながら、自分の名前を呼んでくれる優しい誰かにおはよう、と挨拶してみたかった。おはよう、も、おやすみも、すき、だいすき、あいしている。この世界には優しい愛しい可愛い言葉があるのに、どうして、ティアは化け物としか、言われないのだろう。ティアは意識を手離した。慌てた足音が近付いてくるのに意識を失ったティアは気付かなかった。
ティアは悲しくて苦しくて堪らなくて何度も言葉にならない声で叫んだ。今までの辛いことが津波のように押し寄せてティアを冷たく包んで沈めた。雷が鳴り怖くて震える夜、冷たく身も凍るような吹雪の日、熱を出して苦しんだ時、食べ物が運ばれずひもじい思いをした豪雨の日、どれもひとりぼっちだった。心細かった。だけど、ティアの耳に届く声達は誰かを思い、誰かに思われていた。楽しそうな笑い声、愛してると囁く声、聞いているだけで幸せになれた。自分には向けられない声、自分は誰にも声をかけることを許されない。卑しく恐ろしい化け物だから。寂しい、辛い、名前を呼んでほしい、笑顔を向けてほしい
ひとりぼっちは悲しい。
誰にも向けれなかった感情が爆発した。
涙がボロボロボロと溢れて止まることはない
ティアの声を聞いて、男の胸が痛んだ。
幼子のような泣き声。最近、生まれたばかりの妹と似ている幼い泣き声。
悲しい、苦しい、と全身全霊で嘆いている。
(卑しい化け物、ではない。この子は、俺を手当てしてくれた優しい女の子だ)
己の失言を悔いる。
あの言葉でこの少女の心を深く傷付けてしまったのだ。
男は何かを言おうと口を開くが、男が言葉を発する前にティアは怯えた顔をして身を翻すと窓から飛び降りた。
また、男に化け物、と言われるのが怖くて嫌だったからティアは逃げ出した。雨がザーザーと降っている。冷たいはずだが、今のティアには何も感じなかった。ティアが走る度に泥水が跳ねて白い毛並みを汚した。足を取られて転んで倒れる。直ぐに起き上がれない。手や身体に力が入らなかった。
「ティアちゃん、だいじょうぶ?」
「…へいきよ、ティアは、ずっと、ひとりぼっちだから」
心優しいティアの友達が声を掛けてくれた。
涙で掠れた声で答えて頬笑む。目を閉じる。ドクンドクン、と自分の心臓が早鐘打っている。
もう、声を聞くの疲れた。自分の心臓の音だけを聞こう。これはいずれ止まり静かになる。
「でも、つかれたわ、…ティア、めをさます、ひつよう、あるのかしら」
目蓋が重くて一度閉ざしたら、くっついたように離れない。ずっと目を開けないと普通なら心配してくれる。悲しんでくれる、でも、ティアが目を覚まさなくても誰も悲しまない。
(おはよう、って、あいさつ、したかったな)
たっぷりと柔らかなベットで眠り、目覚めた時、新しい朝を迎えれた喜びを感じながら、自分の名前を呼んでくれる優しい誰かにおはよう、と挨拶してみたかった。おはよう、も、おやすみも、すき、だいすき、あいしている。この世界には優しい愛しい可愛い言葉があるのに、どうして、ティアは化け物としか、言われないのだろう。ティアは意識を手離した。慌てた足音が近付いてくるのに意識を失ったティアは気付かなかった。
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