1 / 7
1
しおりを挟む(……兄さんとキス、したい)
舌が甘く疼いている。じんわりと身体に熱が孕み始め落ち着かない。
誕生日にプレゼントしてもらったピンクの水玉の可愛いブリーフがこのままだと濡れてしまう。
恥ずかしい汚れを洗うのは自分だ。
でも、もう身体がエッチなモードになっている。
千晶はかり、と自分の舌を歯で引っ掻いた。
途端にピリッと快楽の電流が駆け抜ける。
「……ぁ、……はぁん」
ゆるく勃起したペニスを出す。
窮屈さから解放され濡れた息が洩れる。
千晶はスエットとパンツを脱ぎ捨てソファの下に落とした。
カーテンを締め切った薄暗いリビング。
テレビの画面は色々な色彩の光をうつしている。
見たい番組はなくただ人恋しさから適当にテレビをつけていただけだ。
「にいさ……ん、……ぁ」
歯に舌を擦り付けながら他人のぬくもりを知らない幼いペニスに指を絡めて上下に擦る。
真っ黒な目蓋の裏にその辺の女優よりも美しい顔立ちの兄、摩耶の逞しく男らしい身体を思い浮かべ気分を高める。
心地よくて頭の芯が甘く痺れた。
とろり、と丸み帯びた先端部の割れ目から先走りが滲み出る。
自慰の快楽に溺れる。
「にい、……ぁんん!」
ぴゅっと白い少量の精液が飛んだ。
ぐったりと疲れてソファに身を沈める。
いくら兄を呼んでも帰ってこない。寂しさに熱が冷めていく。
飛び散った白濁をティッシュで拭うも気だるくて再びソファに横になった。
「兄さんの馬鹿……ぼくより、あいつらの方を大切にするなんて兄さんの裏切り者」
もやもやと醜い感情がわき出て止まらない。
学校が休みの日は二人で家にこもって恋人のように過ごしていた頃が懐かしい。
寂しくてつらい。
胸がズキンッと痛む。
(早く死にたい……でも、まだせーしが出るからまだまだ死ねないな。早く……楽になりたい)
ここ暫く何も食べ物を口にしていない。
バイトを辞めて何処にも出掛けず怠惰にリビングでぼんやりと過ごしている。
元々白かった肌は蒼白く、頬から丸みがなくなりほっそりとしてきた。
(ぼくが死んだら兄さんは悲しんでくれるかな。それとも気持ち悪い弟が死んだって喜ぶかな……こわがりで、死ぬのが本当はこわくてごめんなさい)
首を吊ったり、飛び降りたりする勇気がない。
じわじわと生命を弱らせる方法を千晶は選んで実行中だ。
体力がないのに自慰をして疲れた。とても眠い。下半身裸の状態で死ぬのはまぬけだな。
でも、いいや。どうせ、ぼくは変態なんだし誰に何を言われても今さらだ。
血の繋がった兄から愛されたいと願っている気持ち悪い弟。
こんなくだらない人間は生きる価値なんてない。
つらつらと心を弱らせていく言葉を自分に向ける。自然と目蓋が閉じて千晶は眠りに落ちた。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
愛人は嫌だったので別れることにしました。
伊吹咲夜
BL
会社の先輩である健二と達哉は、先輩・後輩の間柄であり、身体の関係も持っていた。そんな健二のことを達哉は自分を愛してくれている恋人だとずっと思っていた。
しかし健二との関係は身体だけで、それ以上のことはない。疑問に思っていた日、健二が結婚したと朝礼で報告が。健二は達哉のことを愛してはいなかったのか?
お客様と商品
あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)
同室者の怖い彼と、僕は恋人同士になりました
すいかちゃん
BL
高校に入学した有村浩也は、強面の猪熊健吾と寮の同室になる。見た目の怖さにビクビクしていた浩也だが、健吾の意外な一面を知る。
だが、いきなり健吾にキスをされ・・・?
黄色い水仙を君に贈る
えんがわ
BL
──────────
「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」
「ああ、そうだな」
「っ……ばいばい……」
俺は……ただっ……
「うわああああああああ!」
君に愛して欲しかっただけなのに……
オレと親友は、どうやら恋人同士になったらしい
すいかちゃん
BL
大学3年生の中村弘哉は、同棲中の彼女に部屋を追い出されてしまう。親友の沢村義直の部屋に転がり込み、同居生活がスタートする。
ある夜。酔っぱらった義直にキスをされ、彼の本心を知る事になった。
親友だった2人が、ラブラブな恋人同士になる話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる