39 / 47
第1章
34 頑張る!
しおりを挟む
「伝説、犠牲になった哀れな魂の物語。みたいな感じか…その本を読んで可哀想過ぎてガキの頃泣いた」
「………なんか、すみません」
幼い頃のライゼを泣かせて申し訳ない気持ちになると翠は謝った。
もっと人生うまく生きてたらよかった。
せめて今の人生は、可哀相なんて言われないものにしたい。
幼い子供が泣くような人生、って恐ろしい怪獣が現れて戦って仲間を助けて、いい笑顔で死んでいくやつ…だったらいい。まだ何か救いがある気がする。
「…俺の知り合いに、生きる英雄がいる。本も見せるけどそいつから話をきいてみるのも面白いだろうな。リュカをお前の魂に封じ込めた張本人だ」
「っ、ええ!!」
目を丸くして再び驚く翠を面白そうに見つめるライゼ。
彼の瞳は明るく太陽のようだ。男の子とこんなに親しく話したことは今までになかった。
何となく気恥ずかさを感じるが、距離が遠いと思っていた人が近くに感じると嬉しい。
「…それはやめた方がいいんじゃない?リュカが怯えるかもだし。まあ、アリベルは自由気ままにぶらついてるし街でばったり会っちゃう事もなきにしもあらずだけどさ」
マドカがすっと、普通の顔で話に加わってくる。
「アリベル…さん」
名前を聞くと翠は妙な感覚を感じた。
意識が一瞬、遠い昔へと飛ぶ。
辺りは真っ白な光が満ちた場所だった。静かでほんの少し肌寒さを感じた。
そこには大勢の気配があるがはっきりとした姿が定まらず、それは皆同様であった。
長い間、順番を待って並んでいた。
1つの人生を終えてその想い出に浸っていた。
列は長くて、まだまだまだ先だ。
思考は次の生へと意識が移り変わった。今度生まれ変わるなら、健康だけが取り柄のような大柄な男がいい。逞しい身体をした無口で、何事にも歯を食い縛り耐えれる男。モリで魚をとられて熊のような野性味溢れる山奥での生活を送りたい、つらつらと考えていた。
『ちょっと一緒に来てくれ』
男がいた。姿がはっきりと見える。
正直戸惑った。列から外れたらまた並ばないと行けない、と思うがその男の表情がとても困っているようだった。
また、並べばいいかと思い直す。
生まれ急いでも良いことが何一つないだろうし、終えたばかりの人生は最後まで忙しくて大変だった。ゆっくり並んでぼんやりするのもいいだろう。
はい、分かりました。私に何かお手伝い出来ることがあるんですね
改めて男の顔を見ると強い決意を秘めた瞳をしていると悟る。自分に声を掛けてきたのは意味があるのだ。
一緒についていったのだった。
「……っていうのを今、思い出しました。これは私が生まれる前の前の前の前……くらいかなぁ。伝説ってくらいなので、1000年前くらい昔?」
「ミドリの魂は短命なんだよね。あくせく馬車を引く馬のように働いて、しなくてもいい苦労をしょいこんで死んじゃう…人生寿命平均18才。伝説っていうと確かに1000年前軽く越えた方が重みがあるけど、せいぜい350年前かなぁ…」
「…意外と最近なんですね!」
翠は驚いた。
「…突っ込みはそれかよ。しなくてもいい苦労とか、人生寿命平均18才とか」
ライゼは呆れて翠の言葉に突っ込んだ。
「私、今の人生は100才くらいまで生きて人生寿命平均あげます!」
「女神だし、1000年は軽く越えようよ。僕も付き合うよ。めざせ、1000才!頑張るぞ、おー!」
「…は、はい!えいえいおー!!」
翠は長生き頑張ろうと思った。具体的に何を頑張ればいいか分からないけど、やってやるぜ!と巨大な敵に立ち向かう何かのアニメの主人公のような気持ちだ。
拳を握って高く掲げる。
「………なんか、すみません」
幼い頃のライゼを泣かせて申し訳ない気持ちになると翠は謝った。
もっと人生うまく生きてたらよかった。
せめて今の人生は、可哀相なんて言われないものにしたい。
幼い子供が泣くような人生、って恐ろしい怪獣が現れて戦って仲間を助けて、いい笑顔で死んでいくやつ…だったらいい。まだ何か救いがある気がする。
「…俺の知り合いに、生きる英雄がいる。本も見せるけどそいつから話をきいてみるのも面白いだろうな。リュカをお前の魂に封じ込めた張本人だ」
「っ、ええ!!」
目を丸くして再び驚く翠を面白そうに見つめるライゼ。
彼の瞳は明るく太陽のようだ。男の子とこんなに親しく話したことは今までになかった。
何となく気恥ずかさを感じるが、距離が遠いと思っていた人が近くに感じると嬉しい。
「…それはやめた方がいいんじゃない?リュカが怯えるかもだし。まあ、アリベルは自由気ままにぶらついてるし街でばったり会っちゃう事もなきにしもあらずだけどさ」
マドカがすっと、普通の顔で話に加わってくる。
「アリベル…さん」
名前を聞くと翠は妙な感覚を感じた。
意識が一瞬、遠い昔へと飛ぶ。
辺りは真っ白な光が満ちた場所だった。静かでほんの少し肌寒さを感じた。
そこには大勢の気配があるがはっきりとした姿が定まらず、それは皆同様であった。
長い間、順番を待って並んでいた。
1つの人生を終えてその想い出に浸っていた。
列は長くて、まだまだまだ先だ。
思考は次の生へと意識が移り変わった。今度生まれ変わるなら、健康だけが取り柄のような大柄な男がいい。逞しい身体をした無口で、何事にも歯を食い縛り耐えれる男。モリで魚をとられて熊のような野性味溢れる山奥での生活を送りたい、つらつらと考えていた。
『ちょっと一緒に来てくれ』
男がいた。姿がはっきりと見える。
正直戸惑った。列から外れたらまた並ばないと行けない、と思うがその男の表情がとても困っているようだった。
また、並べばいいかと思い直す。
生まれ急いでも良いことが何一つないだろうし、終えたばかりの人生は最後まで忙しくて大変だった。ゆっくり並んでぼんやりするのもいいだろう。
はい、分かりました。私に何かお手伝い出来ることがあるんですね
改めて男の顔を見ると強い決意を秘めた瞳をしていると悟る。自分に声を掛けてきたのは意味があるのだ。
一緒についていったのだった。
「……っていうのを今、思い出しました。これは私が生まれる前の前の前の前……くらいかなぁ。伝説ってくらいなので、1000年前くらい昔?」
「ミドリの魂は短命なんだよね。あくせく馬車を引く馬のように働いて、しなくてもいい苦労をしょいこんで死んじゃう…人生寿命平均18才。伝説っていうと確かに1000年前軽く越えた方が重みがあるけど、せいぜい350年前かなぁ…」
「…意外と最近なんですね!」
翠は驚いた。
「…突っ込みはそれかよ。しなくてもいい苦労とか、人生寿命平均18才とか」
ライゼは呆れて翠の言葉に突っ込んだ。
「私、今の人生は100才くらいまで生きて人生寿命平均あげます!」
「女神だし、1000年は軽く越えようよ。僕も付き合うよ。めざせ、1000才!頑張るぞ、おー!」
「…は、はい!えいえいおー!!」
翠は長生き頑張ろうと思った。具体的に何を頑張ればいいか分からないけど、やってやるぜ!と巨大な敵に立ち向かう何かのアニメの主人公のような気持ちだ。
拳を握って高く掲げる。
0
お気に入りに追加
409
あなたにおすすめの小説
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
女官になるはずだった妃
夜空 筒
恋愛
女官になる。
そう聞いていたはずなのに。
あれよあれよという間に、着飾られた私は自国の皇帝の妃の一人になっていた。
しかし、皇帝のお迎えもなく
「忙しいから、もう後宮に入っていいよ」
そんなノリの言葉を彼の側近から賜って後宮入りした私。
秘書省監のならびに本の虫である父を持つ、そんな私も無類の読書好き。
朝議が始まる早朝に、私は父が働く文徳楼に通っている。
そこで好きな著者の本を借りては、殿舎に籠る毎日。
皇帝のお渡りもないし、既に皇后に一番近い妃もいる。
縁付くには程遠い私が、ある日を境に平穏だった日常を壊される羽目になる。
誰とも褥を共にしない皇帝と、女官になるつもりで入ってきた本の虫妃の話。
更新はまばらですが、完結させたいとは思っています。
多分…
王子妃だった記憶はもう消えました。
cyaru
恋愛
記憶を失った第二王子妃シルヴェーヌ。シルヴェーヌに寄り添う騎士クロヴィス。
元々は王太子であるセレスタンの婚約者だったにも関わらず、嫁いだのは第二王子ディオンの元だった。
実家の公爵家にも疎まれ、夫となった第二王子ディオンには愛する人がいる。
記憶が戻っても自分に居場所はあるのだろうかと悩むシルヴェーヌだった。
記憶を取り戻そうと動き始めたシルヴェーヌを支えるものと、邪魔するものが居る。
記憶が戻った時、それは、それまでの日常が崩れる時だった。
★1話目の文末に時間的流れの追記をしました(7月26日)
●ゆっくりめの更新です(ちょっと本業とダブルヘッダーなので)
●ルビ多め。鬱陶しく感じる方もいるかも知れませんがご了承ください。
敢えて常用漢字などの読み方を変えている部分もあります。
●作中の通貨単位はケラ。1ケラ=1円くらいの感じです。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界の創作話です。時代設定、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。登場人物、場所全て架空です。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
私はただ一度の暴言が許せない
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
厳かな結婚式だった。
花婿が花嫁のベールを上げるまでは。
ベールを上げ、その日初めて花嫁の顔を見た花婿マティアスは暴言を吐いた。
「私の花嫁は花のようなスカーレットだ!お前ではない!」と。
そして花嫁の父に向かって怒鳴った。
「騙したな!スカーレットではなく別人をよこすとは!
この婚姻はなしだ!訴えてやるから覚悟しろ!」と。
そこから始まる物語。
作者独自の世界観です。
短編予定。
のちのち、ちょこちょこ続編を書くかもしれません。
話が進むにつれ、ヒロイン・スカーレットの印象が変わっていくと思いますが。
楽しんでいただけると嬉しいです。
※9/10 13話公開後、ミスに気づいて何度か文を訂正、追加しました。申し訳ありません。
※9/20 最終回予定でしたが、訂正終わりませんでした!すみません!明日最終です!
※9/21 本編完結いたしました。ヒロインの夢がどうなったか、のところまでです。
ヒロインが誰を選んだのか?は読者の皆様に想像していただく終わり方となっております。
今後、番外編として別視点から見た物語など数話ののち、
ヒロインが誰と、どうしているかまでを書いたエピローグを公開する予定です。
よろしくお願いします。
※9/27 番外編を公開させていただきました。
※10/3 お話の一部(暴言部分1話、4話、6話)を訂正させていただきました。
※10/23 お話の一部(14話、番外編11ー1話)を訂正させていただきました。
※10/25 完結しました。
ここまでお読みくださった皆様。導いてくださった皆様にお礼申し上げます。
たくさんの方から感想をいただきました。
ありがとうございます。
様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。
ただ、皆様に楽しんでいただける場であって欲しいと思いますので、
今後はいただいた感想をを非承認とさせていただく場合がございます。
申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。
もちろん、私は全て読ませていただきます。
【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!
ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、
1年以内に妊娠そして出産。
跡継ぎを産んで女主人以上の
役割を果たしていたし、
円満だと思っていた。
夫の本音を聞くまでは。
そして息子が他人に思えた。
いてもいなくてもいい存在?萎んだ花?
分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。
* 作り話です
* 完結保証付き
* 暇つぶしにどうぞ
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
政略結婚の約束すら守ってもらえませんでした。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
「すまない、やっぱり君の事は抱けない」初夜のベットの中で、恋焦がれた初恋の人にそう言われてしまいました。私の心は砕け散ってしまいました。初恋の人が妹を愛していると知った時、妹が死んでしまって、政略結婚でいいから結婚して欲しいと言われた時、そして今。三度もの痛手に私の心は耐えられませんでした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる