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第1章
27 ピンチ
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翠は焦った。自分の中に封じ込められた邪心竜がこの二人の言い争いを聞いて、うとうとと微睡んでいた状態が破られてしまった。
些細な小さな誤解が原因で、自分が二人を止められていたなら邪心竜も目覚めたりしなかったのに。
「……だめ、戻って!」
こんなところは嫌だ、と飛んでいきそうになっているのだ。
翼が生えたトラックが突進して来た時のように、翠の中から出ていこうとする。
激しい轟音と突風が巻き起こり、周囲の木々や岩肌が音を立てて壊れそうになる。
「……危ない!」
バギンッと大木がゴブタンの方へと倒れかかる。腰を抜かして身動きとれない。
翠は邪心竜を押さえるのに必死で一歩も動けない。
激しい風が巻き起こって土埃が立ち視界を奪われる。
「……!大丈夫、か」
大木が真っ二つに切れてゴブタンを避けて転がった。見ると王子が居た。ライゼがゴブタンを助け起こしている。
「……ライゼ様、ゴブタンさんとメリンダさんを安全なところへお願いします!」
翠は胸を押さえてその場から走った。どくんどくん、と心臓が大きく脈打ち冷や汗が浮かんでいる。
苦しい。大きくはみ出たモノを自分のなかへと押し込むのは苦痛だ。
『……ホロビロ、ミニクイ、ウルサイ、コエ』
低い声。めりめり、と翠の胸から出ようとするのを必死で手で押さえる。
本当は押さえつけたくない。優しく寝かし付けたいけれど、そんな力はない。
「……ごめんなさい、…ごめんね。何もできない、私がママだなんて嫌だよね…」
二人の間に中立になって話を聞くべきだったのに、反省しても数分前の過去にはいけない。
「謝ってもこの状況はよくならないんじゃない?翠」
よく知っている声が真上から聞こえる。翠、そう呼ぶのは家族以外では幼馴染だけだ。
「瞳、なんでここにいるの!?」
真っ直ぐな迷いがない眼差しで宙に浮かんでこちらを見下ろしているのは翠の幼馴染である瞳だった。
しかし、服装が露出度が多い黒い服である。肩や臍が出ている。
「……翠の魂じゃあ、もうおさえきれないよ。限界きてるよ、もう貴女の魂砕けそう。だから、楽にしてあげる!!」
瞳は手に持っている真っ白な箱の蓋を開けた。
そして、何かの呪文を唱える。
グッと引き離される。邪心竜が箱へと吸いとられた。
「……え、なんで?」
虚無感に囚われて翠は地面に膝をついて崩れ落ちた。
「ふふ。平凡な嫌われものちゃんが、持ってていいものじゃないの。これはあたしが責任を持って魔王様のところへ持っていくわ」
「……ま、魔王様って、…瞳、その子をかえして!」
魔王様、インパクトが大きい。翠は混乱しつつも何とか瞳から邪心竜を取り替えそうとする。翠の思いが通じて身体が浮いた。
瞳の元まで行ける、と翠が強く思うと更に上昇する。
些細な小さな誤解が原因で、自分が二人を止められていたなら邪心竜も目覚めたりしなかったのに。
「……だめ、戻って!」
こんなところは嫌だ、と飛んでいきそうになっているのだ。
翼が生えたトラックが突進して来た時のように、翠の中から出ていこうとする。
激しい轟音と突風が巻き起こり、周囲の木々や岩肌が音を立てて壊れそうになる。
「……危ない!」
バギンッと大木がゴブタンの方へと倒れかかる。腰を抜かして身動きとれない。
翠は邪心竜を押さえるのに必死で一歩も動けない。
激しい風が巻き起こって土埃が立ち視界を奪われる。
「……!大丈夫、か」
大木が真っ二つに切れてゴブタンを避けて転がった。見ると王子が居た。ライゼがゴブタンを助け起こしている。
「……ライゼ様、ゴブタンさんとメリンダさんを安全なところへお願いします!」
翠は胸を押さえてその場から走った。どくんどくん、と心臓が大きく脈打ち冷や汗が浮かんでいる。
苦しい。大きくはみ出たモノを自分のなかへと押し込むのは苦痛だ。
『……ホロビロ、ミニクイ、ウルサイ、コエ』
低い声。めりめり、と翠の胸から出ようとするのを必死で手で押さえる。
本当は押さえつけたくない。優しく寝かし付けたいけれど、そんな力はない。
「……ごめんなさい、…ごめんね。何もできない、私がママだなんて嫌だよね…」
二人の間に中立になって話を聞くべきだったのに、反省しても数分前の過去にはいけない。
「謝ってもこの状況はよくならないんじゃない?翠」
よく知っている声が真上から聞こえる。翠、そう呼ぶのは家族以外では幼馴染だけだ。
「瞳、なんでここにいるの!?」
真っ直ぐな迷いがない眼差しで宙に浮かんでこちらを見下ろしているのは翠の幼馴染である瞳だった。
しかし、服装が露出度が多い黒い服である。肩や臍が出ている。
「……翠の魂じゃあ、もうおさえきれないよ。限界きてるよ、もう貴女の魂砕けそう。だから、楽にしてあげる!!」
瞳は手に持っている真っ白な箱の蓋を開けた。
そして、何かの呪文を唱える。
グッと引き離される。邪心竜が箱へと吸いとられた。
「……え、なんで?」
虚無感に囚われて翠は地面に膝をついて崩れ落ちた。
「ふふ。平凡な嫌われものちゃんが、持ってていいものじゃないの。これはあたしが責任を持って魔王様のところへ持っていくわ」
「……ま、魔王様って、…瞳、その子をかえして!」
魔王様、インパクトが大きい。翠は混乱しつつも何とか瞳から邪心竜を取り替えそうとする。翠の思いが通じて身体が浮いた。
瞳の元まで行ける、と翠が強く思うと更に上昇する。
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