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第1章

25 スライム

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「ぼくもお手伝いします!あと、ぼくはスイっていう男の子です」

翠の胸に熱い何かが溢れた。
人助け、この場は俺が守る!なんて素敵で格好いいのだろうか、このゴブリンは、という何かだ。
一人で立ち向かう正義の味方のゴブリンさんにぜひ微力ながらも助太刀したい。翠の埋没していたやる気スイッチがぽん、と出現しさっそくオンになる。
そして一目でお嬢ちゃんとよばれ女であることがバレてしまっていた。ゴブリンに自分は男の子であることを主張する。

ゴブリンは嬉しそうににかっと屈託なく笑った。
なんの陰りもない雲ひとつ浮かんでいない青空でさんさんと輝く太陽のようないい笑顔だ。
翠もゴブリンの笑顔につられて笑った。

「手伝ってくれるのかい?そいつはありがたい!嬢ちゃんじゃねぇのか。まあ、どっちでもいいや!おいらはゴブダンだ。よろしくな、スイ」

「よろしくお願いします!」

ゴブダンが手を差し伸べるので翠は軽くそっと握る。すると、にぃっと悪戯っ子のような笑みを浮かべガシッと握手をしてゴブダンは笑いながらぶんぶんと繋いだ手を大きい動きで上下に揺らした。
よろしく、って挨拶が2回も出来た。
胸がドキドキと普段よりも早鐘打っているのが分かった。

「…ぼく、握手ってはじめてしました!」

「そうかい?俺はよく握手しちまうな。よろしくって初めましての挨拶に気合いはいるだろ!」

「挨拶に気合い!なるほど」

翠は真面目な顔で相槌を打つと頷いた。
この世界に来て色々と勉強になることを教えてもらっている。

ゴブダンと翠は穴がぽっかりとあいている岩山へと向かった。
穴の部分にスライムがたくさん詰め込まれている。埋まってはいるが、翠は低く唸った。

「ゴブダンさん、これって…スライムがとけてませんか?しかも、すごい悪臭がします」

スライムの外見も翠の世界でよく知られているスライムと同じだ。べとり、べとーっとしている。
夏の時触れたら冷たくて気持ち良さそうな感じ。
翠は鼻を服の袖で押さえた。
ゴムが焼けているような匂いが充満している。
スライムから黒い煙が立ち込めていた。

「悪臭?すげぇいい匂いしてないかい?」

「…ぼくにとって、すごく嫌なにおいです…これが種族間の感覚の違いってやつなんですね」

「へえええ、これが人間にとって嫌な匂いなのかぁ。ほおおおおう」

ゴブダンは目を丸くした。ゴブリンにとってはスライムがとける匂いはとてもいい匂いだから、信じられないらしい。

「そこのゴブリン!!貴方の帰りを待って待って待ちくたびれちゃいましたわよ!!!」

何処からか女の子の声がした。
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