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第1章
22 言葉
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***
「……っ、もうむり!変なことしか言えないよぉ。王子様に不快な気持ちにさせてしまった!」
人気のない場所まで行くとその場に翠は踞った。顔が真っ赤状態が続いて熱がこもっている感じがする。しかも、全力疾走した直後で心臓が早鐘打ち息が苦しい。
この苦しい状態は自分が馬鹿なせいだ。
恥ずかしくて死にそうになったのは生まれて初めてで翠はその場で身悶える。
今までならどうせ、と諦めていじけていた。感情が大きく揺さぶられることはなかった。
仲良くなりたい、という気持ちを持った途端に、眠っていた感情が目覚めた。
長いこと冬眠状態だったから、その気持ちをどう扱ったらいいか分からない。
「うう…穴があったら入りたい」
有名な言葉が頭に浮かんで、翠はその言葉を低く唸りながらも言った。
「穴ならそこにあるよ、入ってみる?」
それまで翠の肩に乗って黙っていたマドカは前足を目の前にある洞穴へと向けた。
「……うん、入ってみる」
翠はこくん、と頷いて猫マドカを抱っこするとその場から立ち上りのろのろと洞穴へと歩いた。
そこを通り抜ける風はひんやりと涼しく翠のこもった熱を少し落ち着かせてくれた。
翠は膝を抱えて座った。するり、とマドカは翠の隣へと移動する。
そして、青色の毛並みの猫の姿から青年の姿へと変わる。
「ねえ、ミドリ。僕もね、間違ったことを言ってすごく後悔したことがあるよ。恥ずかしくて、情けなくて…自分がずっと許せなかった」
マドカは翠の隣に座り必要以上に翠が体を冷やさないように風から守る。
体育座りしたいる翠の頭をよしよし、と撫でて慰める。
「僕は耐えられなくなって神様に、シェオンに後悔している事を話した。そしたらシェオンがこう言った。『例えば、大嫌いって言った人間と、大嫌いと言われた人間がいる、大嫌いと言われ怒る。大嫌いと言われた人間は、相手の人間の悪いところを言い返して喧嘩をする。その時は怒りに支配されるだろう。しかし、怒りとは悲しみとも繋がっている。昂った気持ちが段々と落ち着き、なぜ大嫌いと言われてしまったんだろう…と、後悔の気持ちも芽生えることもある。人間の心は流れている、許せないと思ったことも、時が癒してくれる場合もある。また、大嫌いと言った人間も傷付き、それをわかって欲しいが為に感情を爆発させたかもしれない。どちらが正しい、悪いというものはない。…考えて悩み、後悔する人間は愛しい。しかし、相手を傷付けるだけの言葉を放ち、罪悪感もなく平然と生きる人間は愚かだと思う。…というのが、私の考えだ。お前は愚かではないとだけ言っておく』って」
言い終わるとマドカは肩をすくめた。
「……っ、もうむり!変なことしか言えないよぉ。王子様に不快な気持ちにさせてしまった!」
人気のない場所まで行くとその場に翠は踞った。顔が真っ赤状態が続いて熱がこもっている感じがする。しかも、全力疾走した直後で心臓が早鐘打ち息が苦しい。
この苦しい状態は自分が馬鹿なせいだ。
恥ずかしくて死にそうになったのは生まれて初めてで翠はその場で身悶える。
今までならどうせ、と諦めていじけていた。感情が大きく揺さぶられることはなかった。
仲良くなりたい、という気持ちを持った途端に、眠っていた感情が目覚めた。
長いこと冬眠状態だったから、その気持ちをどう扱ったらいいか分からない。
「うう…穴があったら入りたい」
有名な言葉が頭に浮かんで、翠はその言葉を低く唸りながらも言った。
「穴ならそこにあるよ、入ってみる?」
それまで翠の肩に乗って黙っていたマドカは前足を目の前にある洞穴へと向けた。
「……うん、入ってみる」
翠はこくん、と頷いて猫マドカを抱っこするとその場から立ち上りのろのろと洞穴へと歩いた。
そこを通り抜ける風はひんやりと涼しく翠のこもった熱を少し落ち着かせてくれた。
翠は膝を抱えて座った。するり、とマドカは翠の隣へと移動する。
そして、青色の毛並みの猫の姿から青年の姿へと変わる。
「ねえ、ミドリ。僕もね、間違ったことを言ってすごく後悔したことがあるよ。恥ずかしくて、情けなくて…自分がずっと許せなかった」
マドカは翠の隣に座り必要以上に翠が体を冷やさないように風から守る。
体育座りしたいる翠の頭をよしよし、と撫でて慰める。
「僕は耐えられなくなって神様に、シェオンに後悔している事を話した。そしたらシェオンがこう言った。『例えば、大嫌いって言った人間と、大嫌いと言われた人間がいる、大嫌いと言われ怒る。大嫌いと言われた人間は、相手の人間の悪いところを言い返して喧嘩をする。その時は怒りに支配されるだろう。しかし、怒りとは悲しみとも繋がっている。昂った気持ちが段々と落ち着き、なぜ大嫌いと言われてしまったんだろう…と、後悔の気持ちも芽生えることもある。人間の心は流れている、許せないと思ったことも、時が癒してくれる場合もある。また、大嫌いと言った人間も傷付き、それをわかって欲しいが為に感情を爆発させたかもしれない。どちらが正しい、悪いというものはない。…考えて悩み、後悔する人間は愛しい。しかし、相手を傷付けるだけの言葉を放ち、罪悪感もなく平然と生きる人間は愚かだと思う。…というのが、私の考えだ。お前は愚かではないとだけ言っておく』って」
言い終わるとマドカは肩をすくめた。
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