幼馴染みと、キス。

遊虎りん

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番外編

比奈編 1 母との別れ

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別れは突然だ、と大人はいう。

友達が急に家庭の事情で転校した。クラスのお別れ会で、泣きながらまた、会おうね!ってその子と抱き合って再開を約束した。

そんな経験があったから別れは突然だ、私もそう思っていた。

だけど、こんなにも早くお母さんと別れを告げなくてはならなくなるなんて思ってなかった。
今朝、ちょっとした喧嘩をした。昨日、テレビを消し忘れて眠ってしまった。それをお母さんに注意されて、うるさいな!って邪険にしてしまったのだ。
その後、心がぎゅっと痛んでもやもやした。でも、その時は素直に謝れなかった。

帰ったら、いつもの通りに夕食作りのお手伝いをして、朝はごめんね、って謝って許してもらおう、と思った。

でも、もうお母さんに許して貰えない。
目を開けない。
比奈、って呼んでくれない
笑えない
話せない
もうお母さんに怒って貰えない

病院の霊安室でひっそりと眠るお母さんの手を握った。

冷たい手

悲しみが押し寄せる。苦しい。

「お母さん!なんで、死んじゃうの!朝はごめんね、って謝りたかった…っ…比奈のこと、嫌いになっちゃったの?お母さんがいなくなったらさびしいよ、かなしいよ!…っ、…お母さんをちゃんとおばあちゃんにしてあげたかった」

こんなはずでは、なかった。こんな寂しいところで母が息を引き取るなんて。

「お母さんは、ちゃんとおばあちゃんになるんだよ。私、いつか、結婚して子供うむの。お母さんに孫ができるんだよ。私の子供、だっこしてよ…っ、…しんじゃやだよ」

私のお父さん、未来の旦那さんと、私の子供達、家族みんなで見守られて母は穏やかに天国に召されるのだ。

涙がぼたぼたと瞳から溢れて、頬を濡らす。
私の涙をもう、そんなに泣いたらおめめがとけちゃうわよって困ったように微笑んで母は指で拭って慰めてはくれない。

「神様のいじわる!」

私は静かに眠る母にすがり付いてわあわあと泣いた。


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