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第1章 始まり
第12話 使えねぇ!
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ギルマスは優太にバックレるなよと強めの口調で言うが、当の優太は不満顔というか、何かを思案している顔だ。。
「おいおい、小僧。お前の弱点はさっき言った通りでお前も納得したんじゃないのか?」
「ん~いや、それはいいんだけどね……」
「なら、何か他に心配事でもあるのか?」
「だって、一週間もここにいたら……」
「あぁ~あのガキが依頼から帰って来るかもしれないってことか」
「うん、まだ僕はアイツと顔を合わせたくないから」
「なら、心配するな」
「え?」
「ガキがワガママ言って無理に受けた依頼は、ここから徒歩で片道二日も掛かる場所だ。それに依頼内容はオークの集団を討伐だからな。通常ならCランク相当のヤツが四,五人のパーティを組んで少しお釣りが来るくらいの内容だ。だからよ、往復で四日だろ。それにあのガキ一人で依頼をこなすのは多分、無理だろうな。まあ実際にオークの集団を見てからやっぱりダメでしたで帰って来ることも考えられるが、アレだけリタに見栄を切って無理矢理依頼をもぎ取ったんだ。無理なら無理ってのが分かる理由を作らなきゃいけねえだろ。だから、その理由のこじつけに二,三日は掛かるだろうってのが俺の計算だ。どうだ?」
「……」
「小僧?」
「……」
優太はギルマスから何度も呼び掛けられるが、何やら思案している様でギルマスの声は届いていないようだ。
優太がこの時に「ちょっとやり過ぎたかな」と考えていた。では、何をやり過ぎてしまったかと言うと坂井誠からのスキル強奪だ。
「ちょっと困ればいいやくらいの気持ちだったけど、やり過ぎたかな。まさか、死なないよな。でもなぁ~アイツがこのスキルを持っていると他の同級生がやりづらくなるからなぁ~」
「小僧、おい!」
「え? 何?」
「何じゃねえよ! さっきからずっと呼んでいるだろうが!」
「ごめんなさい」
ギルマスが何度も何度も優太を呼んでいたが、優太は坂井誠にしでかしたことを少しだけ後悔していたが、「これも同級生の為だから」と自分に言い聞かせて誤魔化していた。そして、ギルマスの呼び掛けにやっと反応した優太はギルマスに謝れば、ギルマスは「はぁ……で、いいのか?」と優太に確認する。
「うん、アイツに会わない様に注意してくれるのなら構いません」
「おう、その辺は任せろ。俺もお前とあのガキの確執はちゃんと理解はしていないが、面白くなりそうだからな。俺もちゃんと楽しませろよ」
「はぁ」
優太はギルマスに礼を言ってから訓練場を出ると、冒険者ギルドには寄らずに裏路地へと入り、隠密スキルを使って上空へと飛び上がる。
「さてと、アイツがまだ生きていることを確認してからじゃないとね」
優太が何故そんなにも坂井誠のことを気に掛けているかと言えば、優太がしでかしたのは坂井誠から隠密スキルを奪ったことだ。坂井誠は、この隠密スキルを使って背後から目標に対し仕掛けることで、先手を取るのは難しくはなかっただろうと考えている。だから、坂井誠が多分だけど頼り切っていたと思われる隠密スキルを奪ったことで、坂井誠が自分の気配を上手く誤魔化すことが出来ずに下手したら大怪我、もしくは死んでしまったら勿体ないと考えた結果、坂井誠の無事を確認しようとなった。
◇◇◇
「どういうことだよ!」
『ギャッ!』
「くそ! こっちに来るなよ!」
『グルァ!』
「なんで……なんで俺の隠密スキルが使えねえんだよ!」
『ガァ!』
坂井誠はまだオークの住む目的地の遥か手前の街から出て十キロも歩かない内にゴブリン五体と相対したが面倒だなと戦闘を避ける為に隠密スキルを使おうとしたが、使えずに結果的に逃げ出すことが出来ずに戦うことになり焦っていた。
「うわぁ焦っているみたいだけど、ゴブリンなら大丈夫かな」と、坂井誠がなんとかゴブリンを相手にしている様子を上空からニヤニヤしながら見ていた優太は、満足そうに頷くと坂井誠に感付かれないようにソッと転移する。
「だから、なんで使えねえんだよ!」
『ゲギャギャ!』
「うるせぇ!」
『グアッ……』
「クソッやっと一体かよ! こんな……こんなハズじゃねぇ! 俺はこんなところで殺られる俺じゃねぇ!」
『グハッ……』
坂井誠は隠密スキルを使うことは諦め、街で用意した片手剣でなんとか一体を斬り伏せると、直ぐに別のゴブリンの首を撥ねる。
「まだ二体……いっそ、諦めて帰るか……いや、ダメだ! あれだけ大見得切ったんだ。何も出来ませんでしたじゃ、俺はアソコでずっと笑いものにされてしまう。逃げ帰るなら、逃げ帰るなりの理由が必要だ。ゴブリンに襲撃されて戻ったんじゃいい笑いものだ……クソッ!」
優太の読み通り、坂井誠は隠形スキルが使えなくなったことで冒険者に成り立ての初心者が苦労するゴブリン相手に手間取っていたが、諦めて帰ることはヨシとせずに前に進むことに決めたようだ。そして、その理由も優太達の読み通りでオークを狩るのが難しいとしても、その難しさから坂井誠だけじゃなく、他の上位ランクの冒険者でも無理だろうと思わせることが出来る理由が必要となり、少なくとも現場付近までは行かなければいけなくなったのだ。
「あと、一体……クソッ! なんで俺様がこんな雑魚相手に……」
坂井誠は隠密スキルがないではなく使えないことを不思議がっていた。それは坂井誠が自分のステータスボードに『隠密スキル』が存在しているのは確認したからだ。だが、それはよく見れば『隠密スキル(偽)』と書かれているが、坂井誠にはこの『(偽)』の部分は見えていない。何故なら、この単なるラベルでしかない『隠密スキル(偽)』は優太が坂井誠から『隠密スキル』をちょうだいした後に貼り付けたものだからだ。
なので坂井誠にはそこにあるハズの隠密スキルが急に使えなくなったとしか考えられずに焦っているのだった。
「おいおい、小僧。お前の弱点はさっき言った通りでお前も納得したんじゃないのか?」
「ん~いや、それはいいんだけどね……」
「なら、何か他に心配事でもあるのか?」
「だって、一週間もここにいたら……」
「あぁ~あのガキが依頼から帰って来るかもしれないってことか」
「うん、まだ僕はアイツと顔を合わせたくないから」
「なら、心配するな」
「え?」
「ガキがワガママ言って無理に受けた依頼は、ここから徒歩で片道二日も掛かる場所だ。それに依頼内容はオークの集団を討伐だからな。通常ならCランク相当のヤツが四,五人のパーティを組んで少しお釣りが来るくらいの内容だ。だからよ、往復で四日だろ。それにあのガキ一人で依頼をこなすのは多分、無理だろうな。まあ実際にオークの集団を見てからやっぱりダメでしたで帰って来ることも考えられるが、アレだけリタに見栄を切って無理矢理依頼をもぎ取ったんだ。無理なら無理ってのが分かる理由を作らなきゃいけねえだろ。だから、その理由のこじつけに二,三日は掛かるだろうってのが俺の計算だ。どうだ?」
「……」
「小僧?」
「……」
優太はギルマスから何度も呼び掛けられるが、何やら思案している様でギルマスの声は届いていないようだ。
優太がこの時に「ちょっとやり過ぎたかな」と考えていた。では、何をやり過ぎてしまったかと言うと坂井誠からのスキル強奪だ。
「ちょっと困ればいいやくらいの気持ちだったけど、やり過ぎたかな。まさか、死なないよな。でもなぁ~アイツがこのスキルを持っていると他の同級生がやりづらくなるからなぁ~」
「小僧、おい!」
「え? 何?」
「何じゃねえよ! さっきからずっと呼んでいるだろうが!」
「ごめんなさい」
ギルマスが何度も何度も優太を呼んでいたが、優太は坂井誠にしでかしたことを少しだけ後悔していたが、「これも同級生の為だから」と自分に言い聞かせて誤魔化していた。そして、ギルマスの呼び掛けにやっと反応した優太はギルマスに謝れば、ギルマスは「はぁ……で、いいのか?」と優太に確認する。
「うん、アイツに会わない様に注意してくれるのなら構いません」
「おう、その辺は任せろ。俺もお前とあのガキの確執はちゃんと理解はしていないが、面白くなりそうだからな。俺もちゃんと楽しませろよ」
「はぁ」
優太はギルマスに礼を言ってから訓練場を出ると、冒険者ギルドには寄らずに裏路地へと入り、隠密スキルを使って上空へと飛び上がる。
「さてと、アイツがまだ生きていることを確認してからじゃないとね」
優太が何故そんなにも坂井誠のことを気に掛けているかと言えば、優太がしでかしたのは坂井誠から隠密スキルを奪ったことだ。坂井誠は、この隠密スキルを使って背後から目標に対し仕掛けることで、先手を取るのは難しくはなかっただろうと考えている。だから、坂井誠が多分だけど頼り切っていたと思われる隠密スキルを奪ったことで、坂井誠が自分の気配を上手く誤魔化すことが出来ずに下手したら大怪我、もしくは死んでしまったら勿体ないと考えた結果、坂井誠の無事を確認しようとなった。
◇◇◇
「どういうことだよ!」
『ギャッ!』
「くそ! こっちに来るなよ!」
『グルァ!』
「なんで……なんで俺の隠密スキルが使えねえんだよ!」
『ガァ!』
坂井誠はまだオークの住む目的地の遥か手前の街から出て十キロも歩かない内にゴブリン五体と相対したが面倒だなと戦闘を避ける為に隠密スキルを使おうとしたが、使えずに結果的に逃げ出すことが出来ずに戦うことになり焦っていた。
「うわぁ焦っているみたいだけど、ゴブリンなら大丈夫かな」と、坂井誠がなんとかゴブリンを相手にしている様子を上空からニヤニヤしながら見ていた優太は、満足そうに頷くと坂井誠に感付かれないようにソッと転移する。
「だから、なんで使えねえんだよ!」
『ゲギャギャ!』
「うるせぇ!」
『グアッ……』
「クソッやっと一体かよ! こんな……こんなハズじゃねぇ! 俺はこんなところで殺られる俺じゃねぇ!」
『グハッ……』
坂井誠は隠密スキルを使うことは諦め、街で用意した片手剣でなんとか一体を斬り伏せると、直ぐに別のゴブリンの首を撥ねる。
「まだ二体……いっそ、諦めて帰るか……いや、ダメだ! あれだけ大見得切ったんだ。何も出来ませんでしたじゃ、俺はアソコでずっと笑いものにされてしまう。逃げ帰るなら、逃げ帰るなりの理由が必要だ。ゴブリンに襲撃されて戻ったんじゃいい笑いものだ……クソッ!」
優太の読み通り、坂井誠は隠形スキルが使えなくなったことで冒険者に成り立ての初心者が苦労するゴブリン相手に手間取っていたが、諦めて帰ることはヨシとせずに前に進むことに決めたようだ。そして、その理由も優太達の読み通りでオークを狩るのが難しいとしても、その難しさから坂井誠だけじゃなく、他の上位ランクの冒険者でも無理だろうと思わせることが出来る理由が必要となり、少なくとも現場付近までは行かなければいけなくなったのだ。
「あと、一体……クソッ! なんで俺様がこんな雑魚相手に……」
坂井誠は隠密スキルがないではなく使えないことを不思議がっていた。それは坂井誠が自分のステータスボードに『隠密スキル』が存在しているのは確認したからだ。だが、それはよく見れば『隠密スキル(偽)』と書かれているが、坂井誠にはこの『(偽)』の部分は見えていない。何故なら、この単なるラベルでしかない『隠密スキル(偽)』は優太が坂井誠から『隠密スキル』をちょうだいした後に貼り付けたものだからだ。
なので坂井誠にはそこにあるハズの隠密スキルが急に使えなくなったとしか考えられずに焦っているのだった。
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