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第1章 始まり
第9話 罰則なんて知るか!
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「よっと……ふぅ。どれどれ」と、優太は今日も性懲りも無く襲ってくる魔物を討伐しつつ自分のスキルレベルがどれくらい上がっているのかを確認し、ほくそ笑む。
「うん、これならもう大丈夫かな」
優太は目の前に表示されたステータスボードを見ながら「あれから、三ヶ月。僕もまあまあ強くなったと思うけど……」と腕を組み思案する。
優太達がこの世界に転移させられてから多分、今日で三ヶ月が経過している。
優太はほぼ日課となっている世界地図を目の前に展開すると、死亡した生徒がいないかというのと、この世界での厄災となり得るジョーと坂井誠の座標を確認する。
「えっと……謙君がここで……坂井誠がここ……ってことは坂井誠は謙君達から随分、離れたねぇ」
優太が見ている世界地図上ではジョー達はユーラシア大陸もどきを東の方向へと進み、坂井誠は西の方へと進んでいることが分かった。
「これだと、僕とは当分の間は会いそうにないけど……」
優太は坂井誠の持つ隠密スキルが面倒だなと考える。多分だけど、坂井誠は優太と会う前に他の同級生を抹殺し少しでもスキルを得ようとしているのではないかと考えている。
そして、優太は自分がこっちの世界に巻き込んでおきながら坂井誠以外の生徒はどうにか手助けして上げたいとも考えている。
その為には坂井誠の隠密スキルが厄介だと考えた結果、優太は「よし、決めた!」とある決意をする。
「坂井誠を今の僕が葬るのは多分……簡単ではないけど無理じゃないと思う。でも、今の段階で坂井誠に手を出すのはまだ早い。アイツには奥歯が歯ぎしりでボロボロになるくらい悔しい思いをさせないと僕の気が済まない。だから、僕はアイツのスキルを奪う!」
優太は「ま、明日からだね」と討伐した魔物の解体作業を進める。
翌朝、優太は自分が拠点としている小屋の周りに防御結界を張ってから『飛行魔法』で上空へと飛ぶと、坂井誠の場所を世界地図で確認した方向へとマッハの速度で飛んで行く。
「そろそろかな……」と、優太が坂井誠がいるであろう場所の一キロメートル手前で止まり自身に隠形、認識阻害を掛けると、そこからゆっくりと坂井誠のマーカーを目指して飛んで行く。
「マーカーが指すのはこの辺なんだけど……」と優太は上空から坂井誠らしき人物を探してみるが、いくら目をこらしても見慣れた坂井誠の姿は見つからない。
「アイツ、もしかして隠形スキルを日常的に使っているのかも」
優太は目視での捜索ではなく鑑定スキルを使い、坂井誠のマーカーが指す位置を重点的に調べると坂井誠はある建物の中にいることが分かった。
「いたよ。でも、アイツは何をしているんだ?」
優太が見付けた坂井誠は冒険者ギルドと思われる建物の中で騒動を起こしていた。
「だから、俺が受けるって言ってんだから、さっさと受理しろよ!」
「いいえ。無理です! 出来ません!」
「だから、なんでだよ! 俺がいいって言ってんだからいいじゃないか!」
「だから何度も言ってますが、あなたの冒険者ランクでは受理することは出来ません。ご自分の冒険者ランクに合った依頼票を持って来て下さい」
「ちっ、分かんねえお姉さんだな。いいか、俺が出来るって言ってんだから、さっさとしろよ!」
「ですから「いいじゃねぇか」……ってギルマス」
冒険者ギルドの受付カウンターで依頼を受ける受けさせないで騒動を起こしていた坂井誠の相手をしていたお姉さんがもう何度目になるか分からない説明をしようとしたところで、ギルマスに止められる。
「いいから、コイツの依頼受けてやれ」
「ですが……」
「ああ、分かっている。最低でも必要な冒険者ランクを説明し、それでも受けると言うのなら依頼が達成出来なかった時の罰金についてもちゃんと話してサインさせるのも忘れずにな」
「はぁ……分かりました。分かりましたけど、私に責任はありませんからね。後で知らないとか忘れたとか言わないで下さいよ」
「言わねえよ。ま、それもコイツが無事に戻ってくれば問題ないだろ。な、坊主」
「坊主じゃねぇ、マコトだ!」
坊主と言われた坂井誠は面白くなさそうに文句を言うが、ギルマスは「がはは」と笑いながら相手にすることなくサラッと受け流す。
「おう、そうかそうか。じゃあ、マコトよ。今からこの受付のリタからちゃんと説明を聞いてくれ。それとちゃんと罰則についても聞くんだぞ」
「ふん! 達成すればいいんだろ。なら、俺には関係ねぇ」
「まあ、そう言うな。こっちにも説明責任ってのがあるんだ。後で聞いてないとか言われないようにな」
「……分かったよ。なら、さっさと説明してくれ」
「はいはい、じゃあちゃんと聞いて下さいね。それでは……」
坂井誠は自分には不要だとばかりに受付嬢からの説明の殆どを聞き流し、『受領済み』の判を押された依頼票を手に冒険者ギルドから出ると、受注した依頼票に書かれた場所へ向かう。
優太は冒険者ギルドでの坂井誠の様子を面白そうに見ていたが、今ここで坂井誠のスキルを奪うよりは、依頼先でスキルを奪ったらどうなるかを考え思わずニヤけてしまう。そして、そんな優太は普通の人にはよほどのことがない限りは認識することは出来ないが、ギルマスだけは優太に視線を向け「まだまだだな」と独り言ちる。
「うん、これならもう大丈夫かな」
優太は目の前に表示されたステータスボードを見ながら「あれから、三ヶ月。僕もまあまあ強くなったと思うけど……」と腕を組み思案する。
優太達がこの世界に転移させられてから多分、今日で三ヶ月が経過している。
優太はほぼ日課となっている世界地図を目の前に展開すると、死亡した生徒がいないかというのと、この世界での厄災となり得るジョーと坂井誠の座標を確認する。
「えっと……謙君がここで……坂井誠がここ……ってことは坂井誠は謙君達から随分、離れたねぇ」
優太が見ている世界地図上ではジョー達はユーラシア大陸もどきを東の方向へと進み、坂井誠は西の方へと進んでいることが分かった。
「これだと、僕とは当分の間は会いそうにないけど……」
優太は坂井誠の持つ隠密スキルが面倒だなと考える。多分だけど、坂井誠は優太と会う前に他の同級生を抹殺し少しでもスキルを得ようとしているのではないかと考えている。
そして、優太は自分がこっちの世界に巻き込んでおきながら坂井誠以外の生徒はどうにか手助けして上げたいとも考えている。
その為には坂井誠の隠密スキルが厄介だと考えた結果、優太は「よし、決めた!」とある決意をする。
「坂井誠を今の僕が葬るのは多分……簡単ではないけど無理じゃないと思う。でも、今の段階で坂井誠に手を出すのはまだ早い。アイツには奥歯が歯ぎしりでボロボロになるくらい悔しい思いをさせないと僕の気が済まない。だから、僕はアイツのスキルを奪う!」
優太は「ま、明日からだね」と討伐した魔物の解体作業を進める。
翌朝、優太は自分が拠点としている小屋の周りに防御結界を張ってから『飛行魔法』で上空へと飛ぶと、坂井誠の場所を世界地図で確認した方向へとマッハの速度で飛んで行く。
「そろそろかな……」と、優太が坂井誠がいるであろう場所の一キロメートル手前で止まり自身に隠形、認識阻害を掛けると、そこからゆっくりと坂井誠のマーカーを目指して飛んで行く。
「マーカーが指すのはこの辺なんだけど……」と優太は上空から坂井誠らしき人物を探してみるが、いくら目をこらしても見慣れた坂井誠の姿は見つからない。
「アイツ、もしかして隠形スキルを日常的に使っているのかも」
優太は目視での捜索ではなく鑑定スキルを使い、坂井誠のマーカーが指す位置を重点的に調べると坂井誠はある建物の中にいることが分かった。
「いたよ。でも、アイツは何をしているんだ?」
優太が見付けた坂井誠は冒険者ギルドと思われる建物の中で騒動を起こしていた。
「だから、俺が受けるって言ってんだから、さっさと受理しろよ!」
「いいえ。無理です! 出来ません!」
「だから、なんでだよ! 俺がいいって言ってんだからいいじゃないか!」
「だから何度も言ってますが、あなたの冒険者ランクでは受理することは出来ません。ご自分の冒険者ランクに合った依頼票を持って来て下さい」
「ちっ、分かんねえお姉さんだな。いいか、俺が出来るって言ってんだから、さっさとしろよ!」
「ですから「いいじゃねぇか」……ってギルマス」
冒険者ギルドの受付カウンターで依頼を受ける受けさせないで騒動を起こしていた坂井誠の相手をしていたお姉さんがもう何度目になるか分からない説明をしようとしたところで、ギルマスに止められる。
「いいから、コイツの依頼受けてやれ」
「ですが……」
「ああ、分かっている。最低でも必要な冒険者ランクを説明し、それでも受けると言うのなら依頼が達成出来なかった時の罰金についてもちゃんと話してサインさせるのも忘れずにな」
「はぁ……分かりました。分かりましたけど、私に責任はありませんからね。後で知らないとか忘れたとか言わないで下さいよ」
「言わねえよ。ま、それもコイツが無事に戻ってくれば問題ないだろ。な、坊主」
「坊主じゃねぇ、マコトだ!」
坊主と言われた坂井誠は面白くなさそうに文句を言うが、ギルマスは「がはは」と笑いながら相手にすることなくサラッと受け流す。
「おう、そうかそうか。じゃあ、マコトよ。今からこの受付のリタからちゃんと説明を聞いてくれ。それとちゃんと罰則についても聞くんだぞ」
「ふん! 達成すればいいんだろ。なら、俺には関係ねぇ」
「まあ、そう言うな。こっちにも説明責任ってのがあるんだ。後で聞いてないとか言われないようにな」
「……分かったよ。なら、さっさと説明してくれ」
「はいはい、じゃあちゃんと聞いて下さいね。それでは……」
坂井誠は自分には不要だとばかりに受付嬢からの説明の殆どを聞き流し、『受領済み』の判を押された依頼票を手に冒険者ギルドから出ると、受注した依頼票に書かれた場所へ向かう。
優太は冒険者ギルドでの坂井誠の様子を面白そうに見ていたが、今ここで坂井誠のスキルを奪うよりは、依頼先でスキルを奪ったらどうなるかを考え思わずニヤけてしまう。そして、そんな優太は普通の人にはよほどのことがない限りは認識することは出来ないが、ギルマスだけは優太に視線を向け「まだまだだな」と独り言ちる。
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