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◆約束は今日からでした
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食事を終えて風呂を済ませた後に部屋でゆっくりしているとふと思い出す。
「そう言えばガンツさんから連絡がなかったな。どうしたんだろ……ま、いっか」
『いいのか?』
「だって、ガンツさんだしね。なんかあったとしてもなんとかするんじゃないの? それに困っていたとしてもすぐに俺に助けを求めるのは格好悪いとか考えてそうだし」
『あ~それはあるかも。それよりも「バケツプリンの約束」忘れるなよ』
「忘れてないって。そっちこそ大丈夫なんだろうな? 確かご飯食べる前に走ってくるとか言ってたけど?」
『……それは忘れてもいいんだぞ』
「……」
『なんだよ。約束が違うとか言うなよ。別に今日から始めるとは言ってないだろ』
「……」
『おい、なんか言えよ!』
「じゃあ、俺もいつ作るとは言わない!」
『あ! そんなの俺のマネじゃないか! ダメだ! それは認められない!』
「別にマサオに認められなくてもいいし」
『ぐぬぬ……』
マサオはまだ何か言いたそうだったが、眠くなってきた俺はベッドの中に入り込む。
「明日になればマサオがいい子になってますように」
『おい、それを言うなよ』
「ふふふ、おやすみマサオ」
『ああ、いい夢みろよ』
ベッドの足下で寝転がるマサオの寝息を感じながら、俺もゆっくりと瞼を閉じる。
「ホント、ガンツさんはどうしたんだろ?」
翌朝、いつものように工房へと入るとアンジェさんが座っていた。
「おはようございます。どうしましたアンジェさん」
「ケイン君! ガンツが帰って来ないの!」
「えっとガンツさんはイーガンさん達と一緒に出掛けたハズですけど?」
「ええ、確かにそう言っていたわ。でも、泊まりになるとは言ってなかったわよね?」
「ええ、それはそうですね。電話してみました?」
「したわよ! ガンツにもイーガンにも。でも、出ないの。ねえ、ケイン君……」
「分かりました。俺の方でもガンツさんと連絡取ってみます」
「そうしてもらえるとありがたいわ」
「ガンツさんに何か伝言はありますか?」
「伝言……そうね、『帰ってきたら楽しみにしといて』って、そう伝えてもらえる?」
「……分かりました」
「じゃあ、頼むわね」
「はい」
アンジェさんは俺の手を握り、保育所へと向かう。
『ケイン、たかが一晩帰って来ないくらいで大袈裟なんじゃないのか?』
「それだけ心配なんだよ。それに今まで音信不通に近かった二人が今はいつも一緒にいるのが当たり前になったんだもの。少しでも離れているのが不安に感じるんじゃないのかな」
『ふ~ん、そんなものなのかな』
「さあね。それよりガンツさんを探さないと」
『探すって言うけど分かるのか?』
「ふふふ、実はこんなこともあろうかと……」
俺はインベントリからタブレットを取り出すとガンツさんが乗っていったであろうホーク号の位置を地図上に表示させる。
「えっと、ドワーフタウンがここで……ホーク号は……ここはどこなの?」
『俺が知るかよ』
「それもそうだな。でも、大陸の端っこまで飛んだんだな。とりあえず、俺達もここまで行くしかないよな」
『行くってどうやって行くんだ?』
「それもそうだね。どうやって行こう……うん、やっぱこれしかないよな」
『ケイン、顔が悪いぞ』
「……マサオ、『悪い顔している』が正解な」
『そうなのか?』
「そうなの! いいから、行くよ」
マサオと一緒に格納庫へと向かう。
『ケイン、ガンツを探しに行くんじゃないのか? どうしてここに来たんだ?』
「ガンツさんを探しに行くためさ。まあ、見てなって」
俺はインベントリから最初に作った飛行機を取り出すと作業台の上に置く。
『おいおい、こんな物をいじっている時間なんてあるのか?』
「いいから、いいから」
俺は飛行機の推進器であるプロペラと接続している魔導モーターを飛行機から取り外してインベントリに収納する。代わりにジェットエンジンをインベントリから取り出し、飛行機に設置する。
「後は機体と計器類を接続すれば完成だよ。ね、時間掛かんないでしょ」
『まあな。じゃあ、これなら昼までには行けるんだな』
「うん、そうだね。じゃあ、俺は仕上げてしまうからマサオはその辺で遊んでて」
『……いいよ。ここで寝て待ってるから』
「違うでしょ。今日から始めるんじゃないの?」
『え? 遊んでていいんじゃないのか?』
「そうだよ。犬は走り回るのも遊びなんでしょ」
『ぐぬぬ……』
「はい、分かったら走ってくる!」
『この鬼!』
マサオはそう言って俺の前から走り去って行った。マサオの目尻に何か光る物があったけど、まさか泣いてたりとかないよね。
「さてと、仕上げますか」
「そう言えばガンツさんから連絡がなかったな。どうしたんだろ……ま、いっか」
『いいのか?』
「だって、ガンツさんだしね。なんかあったとしてもなんとかするんじゃないの? それに困っていたとしてもすぐに俺に助けを求めるのは格好悪いとか考えてそうだし」
『あ~それはあるかも。それよりも「バケツプリンの約束」忘れるなよ』
「忘れてないって。そっちこそ大丈夫なんだろうな? 確かご飯食べる前に走ってくるとか言ってたけど?」
『……それは忘れてもいいんだぞ』
「……」
『なんだよ。約束が違うとか言うなよ。別に今日から始めるとは言ってないだろ』
「……」
『おい、なんか言えよ!』
「じゃあ、俺もいつ作るとは言わない!」
『あ! そんなの俺のマネじゃないか! ダメだ! それは認められない!』
「別にマサオに認められなくてもいいし」
『ぐぬぬ……』
マサオはまだ何か言いたそうだったが、眠くなってきた俺はベッドの中に入り込む。
「明日になればマサオがいい子になってますように」
『おい、それを言うなよ』
「ふふふ、おやすみマサオ」
『ああ、いい夢みろよ』
ベッドの足下で寝転がるマサオの寝息を感じながら、俺もゆっくりと瞼を閉じる。
「ホント、ガンツさんはどうしたんだろ?」
翌朝、いつものように工房へと入るとアンジェさんが座っていた。
「おはようございます。どうしましたアンジェさん」
「ケイン君! ガンツが帰って来ないの!」
「えっとガンツさんはイーガンさん達と一緒に出掛けたハズですけど?」
「ええ、確かにそう言っていたわ。でも、泊まりになるとは言ってなかったわよね?」
「ええ、それはそうですね。電話してみました?」
「したわよ! ガンツにもイーガンにも。でも、出ないの。ねえ、ケイン君……」
「分かりました。俺の方でもガンツさんと連絡取ってみます」
「そうしてもらえるとありがたいわ」
「ガンツさんに何か伝言はありますか?」
「伝言……そうね、『帰ってきたら楽しみにしといて』って、そう伝えてもらえる?」
「……分かりました」
「じゃあ、頼むわね」
「はい」
アンジェさんは俺の手を握り、保育所へと向かう。
『ケイン、たかが一晩帰って来ないくらいで大袈裟なんじゃないのか?』
「それだけ心配なんだよ。それに今まで音信不通に近かった二人が今はいつも一緒にいるのが当たり前になったんだもの。少しでも離れているのが不安に感じるんじゃないのかな」
『ふ~ん、そんなものなのかな』
「さあね。それよりガンツさんを探さないと」
『探すって言うけど分かるのか?』
「ふふふ、実はこんなこともあろうかと……」
俺はインベントリからタブレットを取り出すとガンツさんが乗っていったであろうホーク号の位置を地図上に表示させる。
「えっと、ドワーフタウンがここで……ホーク号は……ここはどこなの?」
『俺が知るかよ』
「それもそうだな。でも、大陸の端っこまで飛んだんだな。とりあえず、俺達もここまで行くしかないよな」
『行くってどうやって行くんだ?』
「それもそうだね。どうやって行こう……うん、やっぱこれしかないよな」
『ケイン、顔が悪いぞ』
「……マサオ、『悪い顔している』が正解な」
『そうなのか?』
「そうなの! いいから、行くよ」
マサオと一緒に格納庫へと向かう。
『ケイン、ガンツを探しに行くんじゃないのか? どうしてここに来たんだ?』
「ガンツさんを探しに行くためさ。まあ、見てなって」
俺はインベントリから最初に作った飛行機を取り出すと作業台の上に置く。
『おいおい、こんな物をいじっている時間なんてあるのか?』
「いいから、いいから」
俺は飛行機の推進器であるプロペラと接続している魔導モーターを飛行機から取り外してインベントリに収納する。代わりにジェットエンジンをインベントリから取り出し、飛行機に設置する。
「後は機体と計器類を接続すれば完成だよ。ね、時間掛かんないでしょ」
『まあな。じゃあ、これなら昼までには行けるんだな』
「うん、そうだね。じゃあ、俺は仕上げてしまうからマサオはその辺で遊んでて」
『……いいよ。ここで寝て待ってるから』
「違うでしょ。今日から始めるんじゃないの?」
『え? 遊んでていいんじゃないのか?』
「そうだよ。犬は走り回るのも遊びなんでしょ」
『ぐぬぬ……』
「はい、分かったら走ってくる!」
『この鬼!』
マサオはそう言って俺の前から走り去って行った。マサオの目尻に何か光る物があったけど、まさか泣いてたりとかないよね。
「さてと、仕上げますか」
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