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◆実際にやってみた

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「ね? こうやればどれが有精卵か分かるでしょ」
「ああ、確かにな」
「へえ、これでそのままひよこになるのを待てばいいんだね」
「でも、そうしたら無精卵はこのまま腐っちゃうの?」
「それはもったいないな」
「どうにかならないの?」
「それは……」

 孵卵器を使って有精卵をどうやって見極めるかをサマンサさんが持って来た卵を使って実践してみたところ、それぞれが感想をもらす。そしてサマンサさんが気にしていたのは無精卵だった場合はいくら待ってもひよこになることはないので、このまま孵卵器の中で腐るんじゃないのかと疑問だった。そこで、孵卵器の中で八日~十日を経過させた後に無精卵と判別した卵は孵卵器から取り出せばいいだけと話すと「それもそうか」と納得してくれた。

「しかし、驚いたな。確かにケインの言う通りにこの魔道具があればすぐに増やせそうだ」
「そうだね、でもお高いんでしょ?」
「サマンサさん。ケインならきっとお買い得なお値段を設定しているはずだよ。だよね、ケイン君」
「えっと……」

 孵卵器は欲しいカーネルさん、その孵卵器の値段が気になるサマンサさん、俺なら無謀な値段を設定しないはずだと期待するヨサックさん。
 ぶっちゃけお試しだし、卵の増産は俺がお願いしたいことだから無償で提供する予定だ。しかもあと五台くらいは必要だと思う。そんなことを話すとカーネルさんが渋い顔になる。

「何が望みだ?」
「だから、卵が毎日、欲しいだけなんだけど」
「それだけか?」
「うん、それだけだよ」
「分かった。なら、卵の増産は任せとけ」
「分かった。じゃあ、とりあえず毎朝百個欲しいんだけどいいかな?」
「「「百個?」」」
「うん、そう。いつぐらいになりそうかな?」
「いや、待て待て! いきなりそんな数は無理だろ。大体、この魔道具だって一つしかないんだし……」
「そんなことだろうと思って、はい」
「「「へ?」」」

 俺はカーネルさんの前に孵卵器を四台並べる。

「とりあえず、これで五台でしょ。足りなかったらいつでも言ってね」
「……おう」
「それとこれも渡しておくね。はい」
「なんだこれは?」
「携帯電話だよ。使い方と俺の番号はヨサックさんに教えてもらってね。ヨサックさん、いいかな?」
「ああ、多分……」

 カーネルさんに孵卵器と携帯電話を渡し、これで卵の増産は無理なく行えそうなので、ここでの話は終わった。

「じゃあ、マサオ帰ろうか」
『おう!』
「「「待ってくれ!」」」
「ん?」
「頼むから、もう一個プリンを貰えないだろうか」
「「お願い!」」
「『え~』」
「「「この通り!」」」

 カーネルさん達に挨拶して帰ろうとしたところで、まさかのお代わり要求だった。

「まあ、いいですけど。その代わり卵の増産は早めにお願いしますよ」
「「「はい!」」」

 何故だかヨサックさんまで一緒に返事しているけど、まあいいかとインベントリから冷蔵庫を取り出すと、そのまま置いて帰ることにした。

「いいのか?」
「いいですよ。でも、その代わりといっちゃなんですが、卵をもらってもいいですか?」
「ああ、それくらいならちょっと待ってろ!」

 カーネルさんは卵を持って来るから待っていろと言うので、俺とマサオは大人しく待つことにした。ただ、サマンサさんとヨサックさんはカーネルさんがいない内に冷蔵庫を開けることはなく黙って待っている。
 ただ黙ってカーネルさんを待つのも暇なので、ふと思い出したことをヨサックさんにぶつけてみる。

「ねえ、ヨサックさん」
「なんだい、ケイン君」
「……そんなに冷蔵庫が気になる?」
「な、なんのことかな……ははは」

 ヨサックさんは冷蔵庫の方をジッと見ていた。そんなに気になるのなら、ちょっとだけ言わせてもらおう。

「ねえ、プリンって甘い匂いがしたよね?」
「ああ、そうだな。もうあの匂いだけでも十分なくらいにな」
「なら、プリンを食べたあとは口の中もプリンの匂いで一杯だよね」
「確かにな。後口と言うか、しばらくは口の中も、鼻も幸せだったな」
「なら、奥さんも幸せになるのかな?」
「ん? それはどういうことかな?」
「だって、ヨサックさんがここでプリンを食べたら、口の中はプリンの匂いがするんでしょ? そしたら、家に帰ったらヨサックさんの口の中からプリンの甘い匂いがするんだから奥さんも幸せになれるんじゃないの」
「あ……」
「あ~それはマズいね。ヨサックはお代わりはナシにした方がいいんじゃないのかい?」
「え~それはないよ。ケイン君、ケイン君からもサマンサさんに言ってやってよ!」
「俺が? 何を? もう、その冷蔵庫は中身ごとカーネルさんにあげた物なので、俺には権利はありませんよ」
「え~そこをなんとか。ねえ、サマンサさん……」
「私に言われてもね」
「そんな~絶対、ハンナに怒られるよ」
「なら、待っている間にハンナさんを呼んで来ればいいんじゃないの」
「あ、そうか。その手があったか! じゃあ、今すぐ「残ってればいいね」……え?」

 ヨサックさんがプリンを食べた場合はプリンの匂いが付いてしまい、そのまま家に帰ったら奥さんのハンナさんに問い詰められるんじゃないかと揶揄いを込めて言ったところ、ヨサックさんも想像出来たらしく、このままじゃ自分一人プリンが食べられないと焦る。ならばハンナさんをここに呼んで一緒に食べればいいんじゃないかと言えば、直ぐに立ち上がり行こうとしたところを「あればいいね」と引き留めてみた。

「ケイン君、それどういう意味?」
「だって、これだけ食べたいとお願いしてきたプリンだよ。カーネルさん達が待てるかなと思ってね。多分だけどお代わりが一個だけってことにはならないんじゃないかな」
「え?」
「……」

 暗にヨサックさんがハンナさんを連れて来る前にカーネルさんとサマンサさんで食べ切っちゃうんじゃないかなと言ってみるとサマンサさんはそっぽを向き、ヨサックさんはどうしていいか分からなくなったのか、立ち尽くしている。

「サマンサさん、待ってくれるよね?」
「……」
「こっち見てよ!」
「……多分」
「多分って言った! 多分じゃ困るんだよ!」
「ああ、もううるさいね。さっさとハンナを呼んで来ればいいだろ」
「……絶対だからね! ケイン君、ちゃんと見張っててよ!」
「……」
「ケイン君!」
「多分……大丈夫だよ」
「また、多分って言った!」
「早く行きな!」
「もう……」

 サマンサさんと俺の態度に不安になったのかヨサックさんは中々家から出ようとしなかったので、サマンサさんが追い立てるように言ったことでやっとハンナさんを呼びに走って行く。

「ケインも悪い子だね」
「サマンサさんも俺の意図が分かったんでしょ」
「まあね。でも、家に入ってプリンの匂いをされたら……私なら絶対に問い詰めるよ」
「だよね~」
『でもよ、それだとヨサックだけ二つ食ったって、またケンカになるんじゃないのか?』
「「あ!」」
「ただいま~ほれ、これだけあればいいだろ。ん? ヨサックは帰ったのか? なら、分け前が増えるな」
「「……」」

 籠一杯に卵を入れて戻って来たカーネルさんはヨサックさんがいないのを確認するとニヤッとする。

「足りるかな?」
『家で作るんだろ。大目に作った方がいいと思うぞ』
「うん、俺もそう思う」
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