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◆しがみ付きました

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構想は固まったので、後は作るだけだ。

「まずはタイムカプセルを用意して……」

三十センチメートル四方くらいのタイムカプセルを作り、底には卵を立てて置けるように鶏卵の大きさに凹ませた容器を作り設置する。

タイムカプセルの箱自体は周りに影響を与えないようにと中が見えないようにしているから、卵の経過を観察出来ないけど、タイムカプセル内部の側面にカメラを取り付けて確認出来るようにした。

「これで多分出来たよね。じゃあ、後は確認だ……これ、どうするかな?」

孵卵器もなんとか出来たから、これからヨサックさん達の所に行って実際に卵を使っての確認になるんだけど……隣の部屋で気持ち良さそうに寝息を立てているアレをどうしようかと考える。

「ダイエットもあるし、起こして走ってもらうか」

工作室を出てからマサオに声を掛け起こすことにした。

「マサオ! 起きて」
『……ん、もうおやつの時間か? ふぁ~あ……まだ眠いな』
「いいから、早く起きて! 出るよ」
『出るってどこに行くんだ? 行くのならいつもみたいに転移ゲートでピューって』
「今は使わないよ。ビックリさせたくないし、マサオのダイエットにならないでしょ」
『俺のダイエット? え、本気だったの?』
「当たり前じゃん! ほら、行くよ」
『え~なんか急に行く気にならなくなった。今は寝ていたい』
「分かったよ。じゃあ、俺一人で行くけど当然おやつは出ないよ」
『え? どゆこと?』
「どういうも何も俺がいないのに誰がおやつを持って来るってのさ」
『あ……』
「分かった? だから、ここで黙って寝ているか俺に付き合って外に出ておやつを食べるか……さあ、どっち?」
『もう、分かったよ。おやつを人質に取るのは最低なことだぞ』
「それはマサオが野生を思い出してから考えるよ。いいから、早く!」
『ぐぬぬ……』

ソファからなかなか下りないマサオだったけどおやつを人質に取られたのが効いたのか不承不承とソファからゆっくりと下りると軽く伸びをしてから俺の後から着いてくる。

工房の外に出てからマサオにどこに行くつもりなのかと聞かれたので、ヨサックさんがいる牧場まで行くつもりだと答える。

「じゃあ、レッツゴー!」
『おいおい、なんのつもりだケイン?』

俺は隣で座っていたマサオの背中に飛び付くとヨサックさんの牧場の方向を目指しマサオに声を掛けたが、マサオは俺が背中に乗っているのが不満らしい。

「なんのつもりってマサオのダイエットに協力しているんじゃない」
『なんだよ、それ……まあいい。途中で落ちても俺は知らないからな』
「大丈夫! 俺のことは気にしないでいいよ」
『言ったな、ヨシ!』

俺が気にしないでいいと言えば、マサオの口角が少しだけ上がるのが背中から見えた気がする。もしかして振り落とそうと考えているのかもしれない。まあ、マサオならそうするよね。だから、俺はマサオに気付かれないように帯状のベルトをマサオの胸に回してから、それを両手でしっかりと持つと同時にマサオはと言えば俺からの言質を取ったからなのか、単なるストレス発散なのか分からないがいきなりトップスピードで走り出す。

『もう、落ちたかも』
「まだ、乗ってるよ」
『ちっ……それなら』

少し走ったところでマサオが背中に乗っている俺の方をチラリと見るが、残念ながら俺はちゃんと背中にしがみ付いている。そして、そんな俺からの返事にプライドが傷付けられたのか更にギアが一段上がる。

『ふぅ~ふぅ~着いたぞ……』
「はい、ご苦労様」
『くっ……結構、本気で走ったのに……』
「だから、落ちないようにベルトを回したんだよ」
『なんだよソレ! 俺に黙ってそんな物使うなんて卑怯だ!』
「黙っても何もマサオの体に回したベルトに気付かない方が問題でしょ。ってかさ、気付かないほどのコレがマズいんだって。コレが!」
『ぐぬぬ』

ゼイゼイ言いながら、地面に突っ伏しているマサオの脇から溢れている余っている物をグッと掴んで見せるとマサオは口籠もる。

「ケイン君、そろそろいいかな?」
「あ、ヨサックさん。お久しぶりです」
「久しぶりだね。それで今日はどうしたの?」
「実はですね……」

俺達が来たのには気付いたが、俺とマサオが軽く言い合っているのを見て落ち着くのを待ち声を掛けてきたヨサックさんにここへ来た理由を話す。

「なるほどね。確かに鶏卵はあまり普及はしてないよね。分かったよ。そう言うことなら、紹介するから着いてきて」
「はい! 行くよマサオ」
『まだ……ムリ……』
「そう残念だね。鶏舎に行けば卵があるから、何かおやつを用意するつもりだったんだけどね」
『行くぞ! 何してんだケイン!』
「「……」」

俺とヨサックさんは急に元気になったマサオの姿に少しだけ引いてしまう。

そんなマサオだが、当然のことながらどこに行けばいいのかは分からないため、大人しくヨサックさんと俺の後から着いてくる。心なしかショボンとしているようだが気のせいだと思う。

「着いたよ、ココがカーネルさんの鶏舎だよ」
「カーネル?」
「そう、カーネルさん」

何故だかその名前を聞いた時、俺の頭の中には恰幅のよい白いスーツに身を包み右手にステッキを持ち、メガネを掛けた老紳士の姿が浮かんできた。
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