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◆構って欲しかった
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父さんの店に着くと父さんを探す。
「父さん!」
「お! ケイン。どうした? お前が店に来るなんて珍しいな」
「そう? それよりさ。ちょっといい?」
「……なんだ? また、何かしたのか?」
「もう。いきなりそれはちょっとヒドくない。それより、話があるんだって」
「話か。じゃあ、ちょっと行こうか」
「うん」
父さんの後に付いていき、いつもの応接室に入る。
「で、なんだ。話って……」
「うん。これを見て欲しいんだ」
俺はインベントリからさっき作ったお店の元になった模型を出す。
「これは?」
「家のあった場所に作った新店舗の模型だよ」
「そうか。新店舗の模型か……新店舗? はぁ? ケイン、もう作ったのか?」
「そう。だって、家をどかして作るって言ってたでしょ」
「……そうだな。確かに言ってたな」
「そういうこと。だから、新しいお店の五階に事務所とか転移ゲートの部屋も作ったからさ。後で兄さん達も登録するのを忘れないでね」
「ああ、分かった。言っとくよ。ところでこの模型だが預かってもいいのか?」
「いいよ。商品並べる場所を確認するのに使って」
「助かるよ」
父さんに模型を預けてから、新店舗の準備が出来るまで養生シートはそのままにしておくからと話し、応接室から転移ゲートでガンボさんが待つドワーフタウンの学校へと向かう。
「ガンボさん、いる?」
「……ケイン。先に確認してくれと言っていただろ」
「あ! でも、今日はガンボさんからの呼び出しなんだから、いいじゃん」
「よくない! が、まあ話が進まないから、今日はいい」
「うん。じゃあ、今日はなんなの?」
「お前な……」
ガンボさんが俺の顔を見てハァ~と短く嘆息すると、俺にソファに座るように言うので、ソファに座るとその対面にガンボさんが座ると前のめりになり話し出す。
「明日は学校の開校式に入学式だ。準備は出来ているのか?」
「準備?」
「ああ、準備だ」
「俺が何を?」
「お前、領主を招待しただろうが……まさか、忘れたのか?」
「ああ、そうだったね。でも、それで俺に何を?」
「何を? じゃないだろ! ちゃんと明日のことを確認してくれよ。お前にしか出来ないだろ」
「あ~そういやそうだね。じゃあ、ちょっと行って確認してくるよ。確か、午後からの予定だったよね」
「ああ、そうだ。頼むぞ」
ソファに座った状態で携帯電話を取りだし、セバス様へと電話を掛ける。数コールの内にセバス様が出る。
『はい。セバスです』
「セバス様、お久しぶりです。ケインですが、今大丈夫ですか?」
『これはこれはケイン様。私ならいつでも大丈夫ですよ』
「よかった~じゃあ、今から窺いたいんですが、どちらへ行けばいいですか?」
『では、王都のお屋敷の旦那様の執務室へお願いします』
『セバス! お前、何を勝手に……』
『どうせ、旦那様にも関係ある話ですし、問題ないでしょ。では、お待ちしております』
「あ……切られちゃった」
セバス様から電話を切られ、ガンボさんの方を見るとフルフルと首を横に振っている。どうやら、ガンボさんは関わるのが面倒みたいだ。
「じゃあ、俺は行ってくるね」
「ああ、任せた」
ガンボさんにそれだけ言うと、王都のデューク様のお屋敷の執務室へと転移ゲートを繋ぎ潜ると、執務机の向こう側で苦虫を噛み潰したような顔をしたデューク様とは対照的に和やかな顔をしているセバス様が横に立っていた。
「こんにちは。セバス様……と、デューク様」
「ようこそ、ケイン様。さ、どうぞこちらへ」
「俺はついでか……」
セバス様にソファに座るように促されると、セバス様は側に控えていたメイドさんにお茶を頼み俺に話しかける。
「それで今日、お越しになったのは明日の入学式に関しての確認でよかったでしょうか?」
「あ、はい。その通りです。明日は予定通りでいいのか、その確認に来ました」
「はい。それでしたら問題ありません。そうですよね旦那様……旦那様?」
「……」
俺の突然の訪問に対しセバス様は察しよく明日の確認に来たのだろうと言い、その件は大丈夫だとデューク様に確認するがデューク様からの返事はない。どうしたのかとデューク様を見ると、執務机の上で頬杖を突いて面白く無さそうな顔をしている。
「デューク様?」
「けっ……面白くない……」
「旦那様?」
「セバスよ。まだ俺はお前の主人だぞ」
「ええ、一応は……」
「ソレだよ! ソレ! お前はケインを前にすると、ケインがお前の主人の様にふるまうだろ。それ、どうにかならないのか?」
「なりませんね」
「即答かよ!」
「それで、明日はどうなさりますか?」
「もう、やめちゃおうかな……」
どうやらデューク様はセバス様の俺に対する態度に我慢ならなくなったようで少し拗ねているようで、終いには明日のことをキャンセルしたいと言うと、俺の顔をチラリと見る。
あ~これは実際には止める気はないけど、セバス様にかまって欲しいんだな。で、セバス様はというと分かってますよとばかりにいい笑顔をしている。
「そうですか。では、その様に致しましょう。では、ケイン様。申し訳ありませんが、明日の出席は「待て!」……どうしました?」
「どうしましたじゃないだろ。そこは俺をなんとか説得するのがお前の役目じゃないのか?」
「そうですか? ですが、出たくないのを無理に出てもらってもケイン様達にご迷惑でしょうから……」
「だから、そこは……」
「ですから、ここはアリー様にお願いしようかと思います」
「はぁ? なんでここでアリーが出て来るんだ?」
「なぜって旦那様が嫌なら奥様にお願いするのが筋では? ですよね、アリー様」
「「え?」」
デューク様はセバス様に構って欲しかっただけなのにセバス様は相手にしていられないとばかりにデューク様を説得することなくアリー様にお願いするだけだと突っぱねる。そして、そのセバス様の視線の先には少し大きくなったお腹をさすっているアリー様が凄くにこやかな顔で立っていた。
「父さん!」
「お! ケイン。どうした? お前が店に来るなんて珍しいな」
「そう? それよりさ。ちょっといい?」
「……なんだ? また、何かしたのか?」
「もう。いきなりそれはちょっとヒドくない。それより、話があるんだって」
「話か。じゃあ、ちょっと行こうか」
「うん」
父さんの後に付いていき、いつもの応接室に入る。
「で、なんだ。話って……」
「うん。これを見て欲しいんだ」
俺はインベントリからさっき作ったお店の元になった模型を出す。
「これは?」
「家のあった場所に作った新店舗の模型だよ」
「そうか。新店舗の模型か……新店舗? はぁ? ケイン、もう作ったのか?」
「そう。だって、家をどかして作るって言ってたでしょ」
「……そうだな。確かに言ってたな」
「そういうこと。だから、新しいお店の五階に事務所とか転移ゲートの部屋も作ったからさ。後で兄さん達も登録するのを忘れないでね」
「ああ、分かった。言っとくよ。ところでこの模型だが預かってもいいのか?」
「いいよ。商品並べる場所を確認するのに使って」
「助かるよ」
父さんに模型を預けてから、新店舗の準備が出来るまで養生シートはそのままにしておくからと話し、応接室から転移ゲートでガンボさんが待つドワーフタウンの学校へと向かう。
「ガンボさん、いる?」
「……ケイン。先に確認してくれと言っていただろ」
「あ! でも、今日はガンボさんからの呼び出しなんだから、いいじゃん」
「よくない! が、まあ話が進まないから、今日はいい」
「うん。じゃあ、今日はなんなの?」
「お前な……」
ガンボさんが俺の顔を見てハァ~と短く嘆息すると、俺にソファに座るように言うので、ソファに座るとその対面にガンボさんが座ると前のめりになり話し出す。
「明日は学校の開校式に入学式だ。準備は出来ているのか?」
「準備?」
「ああ、準備だ」
「俺が何を?」
「お前、領主を招待しただろうが……まさか、忘れたのか?」
「ああ、そうだったね。でも、それで俺に何を?」
「何を? じゃないだろ! ちゃんと明日のことを確認してくれよ。お前にしか出来ないだろ」
「あ~そういやそうだね。じゃあ、ちょっと行って確認してくるよ。確か、午後からの予定だったよね」
「ああ、そうだ。頼むぞ」
ソファに座った状態で携帯電話を取りだし、セバス様へと電話を掛ける。数コールの内にセバス様が出る。
『はい。セバスです』
「セバス様、お久しぶりです。ケインですが、今大丈夫ですか?」
『これはこれはケイン様。私ならいつでも大丈夫ですよ』
「よかった~じゃあ、今から窺いたいんですが、どちらへ行けばいいですか?」
『では、王都のお屋敷の旦那様の執務室へお願いします』
『セバス! お前、何を勝手に……』
『どうせ、旦那様にも関係ある話ですし、問題ないでしょ。では、お待ちしております』
「あ……切られちゃった」
セバス様から電話を切られ、ガンボさんの方を見るとフルフルと首を横に振っている。どうやら、ガンボさんは関わるのが面倒みたいだ。
「じゃあ、俺は行ってくるね」
「ああ、任せた」
ガンボさんにそれだけ言うと、王都のデューク様のお屋敷の執務室へと転移ゲートを繋ぎ潜ると、執務机の向こう側で苦虫を噛み潰したような顔をしたデューク様とは対照的に和やかな顔をしているセバス様が横に立っていた。
「こんにちは。セバス様……と、デューク様」
「ようこそ、ケイン様。さ、どうぞこちらへ」
「俺はついでか……」
セバス様にソファに座るように促されると、セバス様は側に控えていたメイドさんにお茶を頼み俺に話しかける。
「それで今日、お越しになったのは明日の入学式に関しての確認でよかったでしょうか?」
「あ、はい。その通りです。明日は予定通りでいいのか、その確認に来ました」
「はい。それでしたら問題ありません。そうですよね旦那様……旦那様?」
「……」
俺の突然の訪問に対しセバス様は察しよく明日の確認に来たのだろうと言い、その件は大丈夫だとデューク様に確認するがデューク様からの返事はない。どうしたのかとデューク様を見ると、執務机の上で頬杖を突いて面白く無さそうな顔をしている。
「デューク様?」
「けっ……面白くない……」
「旦那様?」
「セバスよ。まだ俺はお前の主人だぞ」
「ええ、一応は……」
「ソレだよ! ソレ! お前はケインを前にすると、ケインがお前の主人の様にふるまうだろ。それ、どうにかならないのか?」
「なりませんね」
「即答かよ!」
「それで、明日はどうなさりますか?」
「もう、やめちゃおうかな……」
どうやらデューク様はセバス様の俺に対する態度に我慢ならなくなったようで少し拗ねているようで、終いには明日のことをキャンセルしたいと言うと、俺の顔をチラリと見る。
あ~これは実際には止める気はないけど、セバス様にかまって欲しいんだな。で、セバス様はというと分かってますよとばかりにいい笑顔をしている。
「そうですか。では、その様に致しましょう。では、ケイン様。申し訳ありませんが、明日の出席は「待て!」……どうしました?」
「どうしましたじゃないだろ。そこは俺をなんとか説得するのがお前の役目じゃないのか?」
「そうですか? ですが、出たくないのを無理に出てもらってもケイン様達にご迷惑でしょうから……」
「だから、そこは……」
「ですから、ここはアリー様にお願いしようかと思います」
「はぁ? なんでここでアリーが出て来るんだ?」
「なぜって旦那様が嫌なら奥様にお願いするのが筋では? ですよね、アリー様」
「「え?」」
デューク様はセバス様に構って欲しかっただけなのにセバス様は相手にしていられないとばかりにデューク様を説得することなくアリー様にお願いするだけだと突っぱねる。そして、そのセバス様の視線の先には少し大きくなったお腹をさすっているアリー様が凄くにこやかな顔で立っていた。
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