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◆誰かいました

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「言ってなかったか?」
「ああ、聞いてないぞ」
「そうか。これはな『飛行機』だ」
「え?」
「だから、飛行機の一種だ。ちなみにこれはジェットエンジン搭載のワシ専用機で『ホーク号』だ」
「ちょ、待てよ。ヒコウキ?」
「ああ、そうだ。そして今ワシ達がいるのはさっきの格納庫の五百メートル上空だ」
「あ? まさか。人を揶揄うのもいい加減にしろよ。ちょっと上に上がっただけだろ。どこから、五百メートルなんて」
「まあ、信じられないのはしょうがないな。正面だけ見ているんじゃ実感もないだろうからな。それじゃ、そこのモニターを見てろ」
「モニター? これのことか?」
「ああ、いいか。ちゃんと見てろよ」
イーガンに操縦席の間にあるモニターを見るように言うと、ガンツは機体底部のカメラの映像をモニターに映し出す。

「え? なんだこれ?」
「なんだはないだろ。さっきまでいた格納庫じゃないか」
「え? でも、そんな高く上がった様な気はしなかったぞ。せいぜい、この間のフリーフォールくらいだと思っていたんだけど……」
「お前な……お前も五百メートルと復唱しただろうが!」
「そうだけど、それは親父のノリに合わせただけと言うか……親父が病んでいるのなら、付き合わないといけないと思って……」
「ハァ~まだワシをチュウニビョウ扱いするのか。まあいい」
『プルル……プルル……』
「誰だ? こんな時に」
イーガンに可愛そうな人扱いされたガンツが呆れているところに携帯電話が鳴り出したので、受話ボタンを押し電話に出る。
「もしもし……なんだケインか」
『ケインか……じゃないでしょ。いつまでそこにいるの? 結構、目立つから早く上昇しなよ』
「ん? ワシはこの高さで行こうと思っていたんだが、ダメか?」
『ダメでしょ! その機体はエンジン音がうるさいんだから、もっと上に行かないとダメだよ。一万メートルくらいまで上がったら』
「やっぱり、そこまで上がらないとダメか?」
『ダメでしょ? それにそこまで上がれば下からじゃ視認も難しくなるし、音もそれほど気にならないだろうか最高速まで出せるんじゃない?』
「む、そうか。それもそうだな。よし、じゃあそうするか。イーガン、高度一万メートルまで上昇だ!」
「え?」
「え? じゃない。復唱!」
「は、はい。高度一万メートルまで上昇!」
「ケイン、ありがとうな」
『どういたしまして。頑張ってね!』
「ああ」
ケインとの通話を終えると機体はぐんぐん上がって行く。

「うわぁ、もうあんな小さくなって……それにこれは雲なのか?」
「下ばかり見てないでちゃんと計器を確認せんか!」
「あ、ゴメン」

ガンツに注意され、高度計を確認すると一万メートル近くまで上がっていた。
「そろそろいいじゃろ」
「はい」
イーガンがレバーの位置を中立に戻し機体を安定させる。

「それで、親父よ。ここからどこを目指すんだ?」
「そうだな。ここからじゃ他の里の位置関係が曖昧だな。一度、ドワーフの里まで行くか」
「分かった。で、どうやって?」
「それはな……」

ガンツが中央のモニターを操作すると自機の位置が三角マークで表示され、直線がドワーフの里の位置まで伸びている。
「なんだよ、コレ……」
「便利だろ。ケインが言うにはナビと言うらしい。この線から外れないように飛んで行けば、ドワーフの里に着くぞ」
「へぇ。これでねえ……」
「ほら、感心してないで行くぞ。出来れば今日中に回りたいんだからな」
「今日中って……」
「ほら、そんなことより、機体をドワーフの里の方向に向けるんだ」
「え? どうやって?」
「ん? まだ教えてなかったか。よし! じゃあ、今からワシがやることを見て覚えろ」
「わ、分かった」
「よし、行くぞ。右方向旋回!」
「右方向旋回!」
ガンツのすることを確認しながら、イーガンも同じ様に操縦桿を操作する。

「よし、これで位置は大体あったな。じゃあ、ここからが本番だ。いいか?」
「いいけど、何をするんだ?」
「何って、まだ進んでいないだろうが」
「あ、そうか。ただ上昇しただけだった」
「そういうことだ。ここからはお前がしろ。いいな?」
「あ、ああ。分かった!」
「じゃ、前進じゃ。スロットル全開!」
「え? あ、ああ。スロットル全開!」

『ドン!』と音を残して、ホーク号が勢いよく飛んでいく。
「お、親父……」
「気絶するなよ。お! もうすぐ着くぞ。スロットルを緩めるんだ」
「わ、分かった……」
体にのしかかるGに抵抗しながらなんとかスロットルを緩め、巡航速度を徐々に落とす。

「ほら、ドワーフの里が見えて来たぞ」
「えぇ~いくらなんでも……本当だ……十分も経っていないように感じるけど」
「転移ゲートでササッと来るのもいいが、やはり飛行機での空の旅もいいなぁ」
「それで、ここからはどうするんだ?」
「どうするって……ん? イーガン、下に誰かいるな」
「え? あ、本当だ。見た目はドワーフで間違いないみたいだけど、ここからじゃ分からないな」
「なら、降りてみるしかないか」
「分かった」
「よし、着陸!」
「着陸!」
イーガンがレバーを押し込み、ゆっくりと地表を目指して下降していく。
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