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◆なんとか上向きになりました
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~フェリー内部~
「それで、リーサさん。視察はどうだった? ……って、聞くまでもないか」
「そうだな。里の連中は見ての通りだ」
リーサさんに言われ船室を見渡すと、そこには誰もいなかった。
「ケインがカメラにタブレットなんか渡すから。あっちでパチリ、こっちでパチリと。まあ、人の説明も聞かずに写真を撮りまくりだ。今も船の舳先に船底にとあちこちで写真を撮りまくっていることだろうな」
「あ~そうなんだ。そりゃ、悪いことしたかな」
「それは、気にしないでもいいんじゃないか。あれだけ写真撮りまくってんだ。帰ったら、里の皆に写真見せながら説明してくれるだろう」
よかれと思って、視察団の人達にカメラとタブレットをセットで渡したことでリーサさんの説明も聞いていなかったと聞いて、リーサさんに悪いことをしたかと思ったんだけど、当のリーサさんから気にしないでもいいと言ってもらえた。そして、その理由にも納得だ。
「それならいいか。でもさ、興味持ってくれたのはいいんだけど、本当にここで働いてくれるのかな」
「ん~そこは正直分からないな。でも、クレイグや母みたいに就きたい職業がなかったり、働きたいと思っても人手が十分で、働けなかったりしている人が多いのも事実だ。だから、言い方は悪いが気は進まなくても働きに出るんじゃないかな」
「仕方なくでも、来てくれるのなら歓迎するけどね」
「ああ、その時はよろしく頼む」
「うん、任せてよ」
里の人達の様子を聞いてドワーフタウンに対しては、あまり悪い印象は持っていないように思えた。あとは、どういう所で働いてもらえるかだけど、研究職ばかりに人を雇う訳にもいかないしなとか考えている内に、王都の港へと着いたようだ。
「ごめん、リーサさん。ちょっと、船を係留しないといけないから、先に行くね」
「ああ、マサオもいるし気にしないでいいぞ」
『おう、ここはいいから行って来い!』
船室を出て舳先へと行くと、すでにティーダさん達が先に来ていた。
「ケイン、俺達にも係留の仕方を教えてくれ」
「『教えて』って、ことは納得してくれたのかな?」
「ああ、不本意だがな。だから、今回は『この船の大きさまでの操船技術を教えられる指導員を五人育てるまで』とガンツさんに約束してもらった」
「そうなんだ。じゃあ、ジョシュアさんは一人目なの?」
「「「……」」」
ガンツさんと約束した五人の指導員の内にジョシュアさんは数えられているのかと聞くと、三人が黙り込み、なんだか気まずい雰囲気になる。
「あれ? 何かマズいこと聞いちゃった?」
「ケインは、俺が人に教えられると思うか?」
「……」
そして、その沈黙を破りジョシュアさんが言ったのは、ジョシュアさん自身が指導員に向いているかの確認だった。そして、その答えに窮してしまう。
「怒らないから、正直に言ってくれ!」
「えっと、ごめんなさい! 多分というか、ジョシュアさんが人に教えるのは難しいと思う」
「やっぱりか……他の皆と同じでケインもそう思うか」
俺が正直にジョシュアさんに答えると、ジョシュアさんの顔が曇る。教える気がないとしてもダメと言われると凹んでしまうのはしょうがいない。とりあえず、俺は慰めと言えなくもない言葉をジョシュアさんに掛ける。
「でもね、ジョシュアさんが経験を積めば、ジョシュアさんと同じ様な感覚の人に教えるときに有効だと思うんだ」
「ん? よく分からないが、どういうことだ?」
「ジョシュアさんは、頭で理解していても体がその通りに動いてくれないから、車や船の操縦に手間取っているんだよね」
人に説明してもらい、頭では分かっていてもいざその場になると、考えすぎて頭で考えていることに体が着いていかなくなる。普通に流れ作業的に感覚で出来る人は出来るが、頭で考えがちな人には、それが簡単には出来ない。ジョシュアさんもそのタイプだと思える。そして、ジョシュアさんが俺の言葉を肯定する。
「うっ……イヤなことを言うな。でも、悔しいがその通りだ」
「でも、数を熟すことで段々と出来る様になった……でしょ?」
「ああ、そうだな。それもケインの言う通りだ」
「だからね、出来ないわけじゃないんだよ。ただ、人より時間が掛かるだけ。そういうことでしょ?」
「そう言ってくれると嬉しいな」
「でね、世の中にはそういう人は結構いると思うんだ。でも、普通に出来る人からすれば『なんでこんなことが出来ないんだ』って思われる。実際、ジョシュアさんもそうだったでしょ」
「うっ……イヤなことを思い出させるなよ」
「だから、そういう人にはそういうのが分かる人が必要だと思わない?」
「それが……俺ってことか?」
「そう。でも、今はジョシュアさんもいろんなことのライセンスを取ったばかりだから、人に教えるとか余裕はないでしょ。だから、その余裕が出来たときが他の人に指導が出来ると思えばいいんんじゃない」
「そうか。ケインの言う通りだな。でも、まさかケインに諭されることになるとはな」
「ごめんね」
「ふふふ、怒っている訳じゃない。誰も彼もが俺には無理だと言われて、少し意固地になっていたみたいだ。でも、ケインが今は無理なだけだと言ってくれたからな。ありがとうな」
ジョシュアさんの気分が上向きになってくれたようで、やっと係留作業に移れる。
ジョシュアさんの後ろではティーダさんとアルフさんが俺の話に納得したように頷いている。分かっているのなら、注意して欲しかったな~
「それで、リーサさん。視察はどうだった? ……って、聞くまでもないか」
「そうだな。里の連中は見ての通りだ」
リーサさんに言われ船室を見渡すと、そこには誰もいなかった。
「ケインがカメラにタブレットなんか渡すから。あっちでパチリ、こっちでパチリと。まあ、人の説明も聞かずに写真を撮りまくりだ。今も船の舳先に船底にとあちこちで写真を撮りまくっていることだろうな」
「あ~そうなんだ。そりゃ、悪いことしたかな」
「それは、気にしないでもいいんじゃないか。あれだけ写真撮りまくってんだ。帰ったら、里の皆に写真見せながら説明してくれるだろう」
よかれと思って、視察団の人達にカメラとタブレットをセットで渡したことでリーサさんの説明も聞いていなかったと聞いて、リーサさんに悪いことをしたかと思ったんだけど、当のリーサさんから気にしないでもいいと言ってもらえた。そして、その理由にも納得だ。
「それならいいか。でもさ、興味持ってくれたのはいいんだけど、本当にここで働いてくれるのかな」
「ん~そこは正直分からないな。でも、クレイグや母みたいに就きたい職業がなかったり、働きたいと思っても人手が十分で、働けなかったりしている人が多いのも事実だ。だから、言い方は悪いが気は進まなくても働きに出るんじゃないかな」
「仕方なくでも、来てくれるのなら歓迎するけどね」
「ああ、その時はよろしく頼む」
「うん、任せてよ」
里の人達の様子を聞いてドワーフタウンに対しては、あまり悪い印象は持っていないように思えた。あとは、どういう所で働いてもらえるかだけど、研究職ばかりに人を雇う訳にもいかないしなとか考えている内に、王都の港へと着いたようだ。
「ごめん、リーサさん。ちょっと、船を係留しないといけないから、先に行くね」
「ああ、マサオもいるし気にしないでいいぞ」
『おう、ここはいいから行って来い!』
船室を出て舳先へと行くと、すでにティーダさん達が先に来ていた。
「ケイン、俺達にも係留の仕方を教えてくれ」
「『教えて』って、ことは納得してくれたのかな?」
「ああ、不本意だがな。だから、今回は『この船の大きさまでの操船技術を教えられる指導員を五人育てるまで』とガンツさんに約束してもらった」
「そうなんだ。じゃあ、ジョシュアさんは一人目なの?」
「「「……」」」
ガンツさんと約束した五人の指導員の内にジョシュアさんは数えられているのかと聞くと、三人が黙り込み、なんだか気まずい雰囲気になる。
「あれ? 何かマズいこと聞いちゃった?」
「ケインは、俺が人に教えられると思うか?」
「……」
そして、その沈黙を破りジョシュアさんが言ったのは、ジョシュアさん自身が指導員に向いているかの確認だった。そして、その答えに窮してしまう。
「怒らないから、正直に言ってくれ!」
「えっと、ごめんなさい! 多分というか、ジョシュアさんが人に教えるのは難しいと思う」
「やっぱりか……他の皆と同じでケインもそう思うか」
俺が正直にジョシュアさんに答えると、ジョシュアさんの顔が曇る。教える気がないとしてもダメと言われると凹んでしまうのはしょうがいない。とりあえず、俺は慰めと言えなくもない言葉をジョシュアさんに掛ける。
「でもね、ジョシュアさんが経験を積めば、ジョシュアさんと同じ様な感覚の人に教えるときに有効だと思うんだ」
「ん? よく分からないが、どういうことだ?」
「ジョシュアさんは、頭で理解していても体がその通りに動いてくれないから、車や船の操縦に手間取っているんだよね」
人に説明してもらい、頭では分かっていてもいざその場になると、考えすぎて頭で考えていることに体が着いていかなくなる。普通に流れ作業的に感覚で出来る人は出来るが、頭で考えがちな人には、それが簡単には出来ない。ジョシュアさんもそのタイプだと思える。そして、ジョシュアさんが俺の言葉を肯定する。
「うっ……イヤなことを言うな。でも、悔しいがその通りだ」
「でも、数を熟すことで段々と出来る様になった……でしょ?」
「ああ、そうだな。それもケインの言う通りだ」
「だからね、出来ないわけじゃないんだよ。ただ、人より時間が掛かるだけ。そういうことでしょ?」
「そう言ってくれると嬉しいな」
「でね、世の中にはそういう人は結構いると思うんだ。でも、普通に出来る人からすれば『なんでこんなことが出来ないんだ』って思われる。実際、ジョシュアさんもそうだったでしょ」
「うっ……イヤなことを思い出させるなよ」
「だから、そういう人にはそういうのが分かる人が必要だと思わない?」
「それが……俺ってことか?」
「そう。でも、今はジョシュアさんもいろんなことのライセンスを取ったばかりだから、人に教えるとか余裕はないでしょ。だから、その余裕が出来たときが他の人に指導が出来ると思えばいいんんじゃない」
「そうか。ケインの言う通りだな。でも、まさかケインに諭されることになるとはな」
「ごめんね」
「ふふふ、怒っている訳じゃない。誰も彼もが俺には無理だと言われて、少し意固地になっていたみたいだ。でも、ケインが今は無理なだけだと言ってくれたからな。ありがとうな」
ジョシュアさんの気分が上向きになってくれたようで、やっと係留作業に移れる。
ジョシュアさんの後ろではティーダさんとアルフさんが俺の話に納得したように頷いている。分かっているのなら、注意して欲しかったな~
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