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◆呆れた
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『くそ! あと少し……あと少しだってのに……なぜ、掴めないんだよ! これか、この肉球がダメなのか!』
ドワーフタウンの港に着くと、マサオはそう言って何かを悔しがっている様子だ。そんな正を気にすることなく波止場の突端まで行くと王都の港と同じ灯台を作る。
そこへ、ガンツさんが魔導キックボードに乗ってやって来た。
「やっと帰ってきたか……って、なんだこりゃ?」
俺が作った灯台を見て、ガンツさんが灯台の先を見上げてそんなことを言う。
「ガンツさん、灯台だよ。ほら、王都の方を見てよ」
「王都の方? うわ、ほ~」
ガンツさんに王都の方を見るように言うと、王都の港でも同じ様に波止場の突端に立つ灯台から光が放たれ、周囲を照らしている。
そして、さっき建てたこの灯台も同じ様に光を放つ。
「で、『灯台』って言ったな。これはなんなんだ?」
「ん~一言で言えば、目印かな」
「目印か。確かに暗い海上でこの明かりが見えれば安心出来るな」
「でしょ!」
「でもだ。目立ちすぎる! また、向こうで何か言われている頃だぞ。また明日、呼び出されないといいがな」
「ガンツさん、それフラグだよ」
確かに今まで街灯の灯りも禄になかった王都で港の方が明るくなれば、誰もが気になるだろう。でも、思っていてもそれを口にすると、そうなっちゃうから。
『プルル……』
画面を見るとセバス様からで、「ほら、ガンツさんが言うから」と言って携帯電話を耳にする。
「もしもしセバス様……ええ、さっきのは……はい、後ほど。……で、港の光ですか。……ええ、俺です。灯台の光です。……はい、分かりました。明日ですね。……はい、では明日」
携帯電話を切るとガンツさんを気持ち睨み付ける。
「ふん! ワシに黙って色々面白いことをしているからだ!」
「え~それはないんじゃない」
「ふん! ワシだってフェリーを作って、若いのに指導してなんとか一隻作り上げたと思ったら、お前はお前でワシのことを気にすることなくマサオと遊んでいたようだな」
「え~それは心外だよ。ちゃんと、港湾施設を整備してきたのにさ」
「ふん! どうだか」
「信用無いな~じゃあ、いいや。ガンツさんには完成するまで見せないでおくよ。その方が楽しみがあっていいでしょ!」
「待て! それは話が違うだろ!」
「だって、俺が色々作っていたってのにマサオと遊んでいたって言うんだもん。なら、完成まで待ってもらった方がいいと思ったんだけど?」
そんなに信用がないのなら、出来るまではガンツさんにも見せないようにすると話すとガンツさんが急に慌て出す。
「いや、違うんだ! 疑った訳じゃないんだ。ただ……んだ」
「え? 何?」
「だから、ワシ一人で淋しかったんだ!」
「なんで? 他にお弟子さん達もいたんでしょ?」
「それはそうだが、アイツらは弟子でワシに気を使うから、どうにも楽しいと言うよりは仕事の方が強いんじゃよ」
「仕事ならしょうがないじゃん」
「でも、ケインと一緒にするのは仕事でも楽しさが先にある。お前と作るのは楽しさや新しい技術なんかもあって、どうしても楽しさが先に立つんだ」
「へぇ、そんな風に思ってくれてたんだ。なんか体がこそばゆくて何か裏があるんじゃないかと勘繰ってしまいそうだよ」
「そ、そんなことはないと思うぞ。ワシのありのままの気持ちだ」
ガンツさんが少しだけ見せた戸惑いに違和感を感じた。
その違和感を信じてガンツさんを少しだけ睨み話しかける。
「ガンツさん、正直に話して。何があったの?」
「……怒らないか?」
「それは話してくれないと分からないよ」
「なら、話さない」
「じゃあ、完成まで見せない」
「それはズルいだろ!」
「なら、まずは話しなよ」
「くっ……ケインのくせに」
「へ~そこまで言うんだ。もう取り敢えずは怒らないから、正直に話してみなよ」
「本当に怒らないんだな」
「しつこいよ。もう、帰ってもいい?」
「待て! 分かった。話す、話すから! 実はこういうことなんだ。かくかくしかじか……」
ガンツさんからの告白というか話を聞いて呆れる俺がいた。
「話は分かったけどさ、あっちが完成していないと何も楽しめないじゃない。その辺はどうなの?」
「ああ、それはもちろん。説明した。したが、納得してくれないとしか言いようがないんだ」
「え~まあ、分からないでもないけどさ。いいの? そんなこと安請け合いしてさ」
「あ~その辺は大丈夫らしい」
「なら、後はガンツさん次第じゃないの。俺には何もすることがないと思うんだけど」
「そう言うなよ。たまにはワシに付き合ってくれてもいいだろ」
「別に俺は無理に付き合ってもらっている訳じゃないんだけど?」
「ぐっ……そんなことは言わずにワシを助けると思って、この通りだ」
ガンツさんが頭を下げようとするのを慌てて止める。
「止めてよ。分かったから、協力するからさ」
俺がそう言った瞬間にガンツさんがニヤリとしたかと思うと、俺を指差して言う。
「言ったな……ちゃんとこの耳で聞いたぞ。協力すると確かに言ったな」
「あれ? やっちゃったかな……」
ドワーフタウンの港に着くと、マサオはそう言って何かを悔しがっている様子だ。そんな正を気にすることなく波止場の突端まで行くと王都の港と同じ灯台を作る。
そこへ、ガンツさんが魔導キックボードに乗ってやって来た。
「やっと帰ってきたか……って、なんだこりゃ?」
俺が作った灯台を見て、ガンツさんが灯台の先を見上げてそんなことを言う。
「ガンツさん、灯台だよ。ほら、王都の方を見てよ」
「王都の方? うわ、ほ~」
ガンツさんに王都の方を見るように言うと、王都の港でも同じ様に波止場の突端に立つ灯台から光が放たれ、周囲を照らしている。
そして、さっき建てたこの灯台も同じ様に光を放つ。
「で、『灯台』って言ったな。これはなんなんだ?」
「ん~一言で言えば、目印かな」
「目印か。確かに暗い海上でこの明かりが見えれば安心出来るな」
「でしょ!」
「でもだ。目立ちすぎる! また、向こうで何か言われている頃だぞ。また明日、呼び出されないといいがな」
「ガンツさん、それフラグだよ」
確かに今まで街灯の灯りも禄になかった王都で港の方が明るくなれば、誰もが気になるだろう。でも、思っていてもそれを口にすると、そうなっちゃうから。
『プルル……』
画面を見るとセバス様からで、「ほら、ガンツさんが言うから」と言って携帯電話を耳にする。
「もしもしセバス様……ええ、さっきのは……はい、後ほど。……で、港の光ですか。……ええ、俺です。灯台の光です。……はい、分かりました。明日ですね。……はい、では明日」
携帯電話を切るとガンツさんを気持ち睨み付ける。
「ふん! ワシに黙って色々面白いことをしているからだ!」
「え~それはないんじゃない」
「ふん! ワシだってフェリーを作って、若いのに指導してなんとか一隻作り上げたと思ったら、お前はお前でワシのことを気にすることなくマサオと遊んでいたようだな」
「え~それは心外だよ。ちゃんと、港湾施設を整備してきたのにさ」
「ふん! どうだか」
「信用無いな~じゃあ、いいや。ガンツさんには完成するまで見せないでおくよ。その方が楽しみがあっていいでしょ!」
「待て! それは話が違うだろ!」
「だって、俺が色々作っていたってのにマサオと遊んでいたって言うんだもん。なら、完成まで待ってもらった方がいいと思ったんだけど?」
そんなに信用がないのなら、出来るまではガンツさんにも見せないようにすると話すとガンツさんが急に慌て出す。
「いや、違うんだ! 疑った訳じゃないんだ。ただ……んだ」
「え? 何?」
「だから、ワシ一人で淋しかったんだ!」
「なんで? 他にお弟子さん達もいたんでしょ?」
「それはそうだが、アイツらは弟子でワシに気を使うから、どうにも楽しいと言うよりは仕事の方が強いんじゃよ」
「仕事ならしょうがないじゃん」
「でも、ケインと一緒にするのは仕事でも楽しさが先にある。お前と作るのは楽しさや新しい技術なんかもあって、どうしても楽しさが先に立つんだ」
「へぇ、そんな風に思ってくれてたんだ。なんか体がこそばゆくて何か裏があるんじゃないかと勘繰ってしまいそうだよ」
「そ、そんなことはないと思うぞ。ワシのありのままの気持ちだ」
ガンツさんが少しだけ見せた戸惑いに違和感を感じた。
その違和感を信じてガンツさんを少しだけ睨み話しかける。
「ガンツさん、正直に話して。何があったの?」
「……怒らないか?」
「それは話してくれないと分からないよ」
「なら、話さない」
「じゃあ、完成まで見せない」
「それはズルいだろ!」
「なら、まずは話しなよ」
「くっ……ケインのくせに」
「へ~そこまで言うんだ。もう取り敢えずは怒らないから、正直に話してみなよ」
「本当に怒らないんだな」
「しつこいよ。もう、帰ってもいい?」
「待て! 分かった。話す、話すから! 実はこういうことなんだ。かくかくしかじか……」
ガンツさんからの告白というか話を聞いて呆れる俺がいた。
「話は分かったけどさ、あっちが完成していないと何も楽しめないじゃない。その辺はどうなの?」
「ああ、それはもちろん。説明した。したが、納得してくれないとしか言いようがないんだ」
「え~まあ、分からないでもないけどさ。いいの? そんなこと安請け合いしてさ」
「あ~その辺は大丈夫らしい」
「なら、後はガンツさん次第じゃないの。俺には何もすることがないと思うんだけど」
「そう言うなよ。たまにはワシに付き合ってくれてもいいだろ」
「別に俺は無理に付き合ってもらっている訳じゃないんだけど?」
「ぐっ……そんなことは言わずにワシを助けると思って、この通りだ」
ガンツさんが頭を下げようとするのを慌てて止める。
「止めてよ。分かったから、協力するからさ」
俺がそう言った瞬間にガンツさんがニヤリとしたかと思うと、俺を指差して言う。
「言ったな……ちゃんとこの耳で聞いたぞ。協力すると確かに言ったな」
「あれ? やっちゃったかな……」
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