315 / 468
連載
◆言いたいことが不明でした
しおりを挟む
「気が進まないところ、わざわざ済まんな」
「あ……聞こえてましたか。それで、呼ばれたのは?」
「流すな! まあ、何時ものことだが……はぁ気が進まないのは俺も一緒だよ」
「旦那様、何時までもそう言ってないで本題を」
「セバス、お前まで……まあ、察しは付いていると思うが港のことだ」
やはり、そうかと思うが、まだ土地の確保と壁を建てただけだし何も問題はないと思うんだけどな。
「どこからか、苦情でも来ました?」
「いや、それはない」
「なら……「だがな」……だが?」
「お前、壁に忠告の貼り紙をしただろ?」
「ええ、危ないので立ち入り禁止としましたけど。それが問題でした?」
「いや、それは問題ない。まあ、あの貼り紙のお陰で壁がいきなり出て来ても混乱せずにすんでいると思う」
「なら……「だがな」……また、『だが』ですか?」
「ああ、と言うか、ここからが本題だ」
「ええ? 何も問題になるようなことは書いてなかったと思いますけど?」
確か『これより先、シャルディーア辺境伯管轄の港湾地区となります。しばらくはご不便かと思いますが、工事期間中は大変危険なため関係者以外の立ち入りを禁じます。』と書いたけど何処にもおかしなところはないと思うけど、デューク様はどこが気に障ったのだろうか?
「分からんか?」
「ええ、さっぱり」
そう言って首を傾げて考えてみるが、やはりおかしなところは思いつかない。
「問題はだ。シャルディーア家が前面に出ていることだ」
「え~そこを言いますか? だって、港に付いてはデューク様に一任されたんでしょ? なら、名前を使っても問題ないと思っていたんですが」
「使ったことは問題ない」
ハッキリしないデューク様の相手が面倒になったので、セバス様に聞いてみることにする。
「セバス様、俺にはなんのことだか分からないんですけど。結局は何が問題なんですか?」
「おい! ケイン! 私を無視するな!」
「はぁ~旦那様、先程から仰っていることは私でも要領を得ません。ケイン様、要はですね。あの貼り紙を見た王都の住民や周辺貴族に果ては王族にまで過度な期待をされているのが耐えられずにツライと言うことなんです」
「はぁ」
デューク様が長々と話していた内容がセバス様の説明で単に『期待が重すぎてツライ』と纏められた。
「じゃあ、止めますか?」
「いや、それはダメだ」
「じゃあ、どうします?」
「どうしたら、いいと思う?」
なんだろう、この面倒なやり取りは。セバス様を見ても軽く会釈するだけで丸投げされた感が強い。
「もしかして、もう誰かに何か約束してたりしますか?」
「……」
俺の質問にデューク様の目が泳ぐ。
デューク様なら、他の貴族に対してはほとんど強気でいけるだろうから、逆らえないところからの頼みなら……もしかして、王族。
「もしかしてですけど、王族から何か要求でもありました?」
「分かるか?」
「なんとなくですけどね」
「まあ、簡単に想像出来るだろうな。確かにお前の言うとおりだ。ハッキリと対面で言われた訳ではないがな、王家からの伝令で楽しみにしているとだけだが」
「そうなんですね。直接言わないのは王族と言うか貴族文化なのでしょうね。でも、ソレを俺にまで強要されてもサッパリですよ」
「それはスマン。だがな、王族に期待されても俺も何をどうすればいいのかさっぱり分からないんだよ」
「別に気にする必要はないんじゃないですか」
「いや、ダメだろ。仮にも王族だぞ。何かこう、パァ~っと派手な催しとかした方がいいと思うんだが」
そう言って、チラリと俺を見る。
「その派手な何かが、あの壁の向こうにあるんですけどね。まあ、するのなら、王族をオープンカーにでも乗せて、港湾施設の中をパレードとかでしょうか」
「その『オープンカー』が何かは分からないが、要は何かに乗せたまま案内するということか?」
「はい、そうです。ただ、中を見たいとか言われたら、その都度止まるか、それとも不敬を気にせずに後回しにするかですね」
「それはどちらもイヤだな」
「なら、オープン前に特別と。嫌みなくらいに『特別感』を演出して王族専用の貸し切りみたいな感じで一日中満喫してもらうのはどうです?」
「それが一番無難か」
「旦那様、私もそれが一番かと」
「じゃあ、それまでに港湾施設の名前を考えといて下さいね。じゃあ」
そう言い残し、ソファから立とうとするとデューク様に腕を捕まれる。
「待て! なんと言った?」
「ですから、港湾施設の名前をお願いしますと」
「なぜ、俺が?」
「なぜって、デューク様の管轄でしょ?」
「ああ、それはそうだ。だからって」
「なら、後から募集するってのもありますよ」
「何? それはどういうことだ?」
俺の提案にデューク様が飛びつく。
「だから、急いで決めなくても仮称で『シャルディーア港湾区』とでもしておいてですね。あとから、利用客の人達に名前を決めて貰うんですよ。投票形式で箱の中にその人が考えた名前を紙に書いて入れてもらうんです。それで、その中で多かった名前、良さそうな名前をいくつか候補として選んで、その中から改めて、いいと思う名前を選んで貰うんです」
「ふむ。なるほどな。その名前を考えるところから決めるところまでもイベントとして扱うということか。セバス、お前はどう思う?」
「いい考えだと思います。今までの様に貴族主導での押し付け感もなく、しかもイベントすることで更に好感を得られるかと」
俺の苦し紛れのいい加減な提案にデューク様もセバス様も太鼓判を押してくる。どうしよう?
マサオを見ると、「やっちまったな」とでも言うように呆れた顔で俺を見ていた。
やっちゃったな~
「あ……聞こえてましたか。それで、呼ばれたのは?」
「流すな! まあ、何時ものことだが……はぁ気が進まないのは俺も一緒だよ」
「旦那様、何時までもそう言ってないで本題を」
「セバス、お前まで……まあ、察しは付いていると思うが港のことだ」
やはり、そうかと思うが、まだ土地の確保と壁を建てただけだし何も問題はないと思うんだけどな。
「どこからか、苦情でも来ました?」
「いや、それはない」
「なら……「だがな」……だが?」
「お前、壁に忠告の貼り紙をしただろ?」
「ええ、危ないので立ち入り禁止としましたけど。それが問題でした?」
「いや、それは問題ない。まあ、あの貼り紙のお陰で壁がいきなり出て来ても混乱せずにすんでいると思う」
「なら……「だがな」……また、『だが』ですか?」
「ああ、と言うか、ここからが本題だ」
「ええ? 何も問題になるようなことは書いてなかったと思いますけど?」
確か『これより先、シャルディーア辺境伯管轄の港湾地区となります。しばらくはご不便かと思いますが、工事期間中は大変危険なため関係者以外の立ち入りを禁じます。』と書いたけど何処にもおかしなところはないと思うけど、デューク様はどこが気に障ったのだろうか?
「分からんか?」
「ええ、さっぱり」
そう言って首を傾げて考えてみるが、やはりおかしなところは思いつかない。
「問題はだ。シャルディーア家が前面に出ていることだ」
「え~そこを言いますか? だって、港に付いてはデューク様に一任されたんでしょ? なら、名前を使っても問題ないと思っていたんですが」
「使ったことは問題ない」
ハッキリしないデューク様の相手が面倒になったので、セバス様に聞いてみることにする。
「セバス様、俺にはなんのことだか分からないんですけど。結局は何が問題なんですか?」
「おい! ケイン! 私を無視するな!」
「はぁ~旦那様、先程から仰っていることは私でも要領を得ません。ケイン様、要はですね。あの貼り紙を見た王都の住民や周辺貴族に果ては王族にまで過度な期待をされているのが耐えられずにツライと言うことなんです」
「はぁ」
デューク様が長々と話していた内容がセバス様の説明で単に『期待が重すぎてツライ』と纏められた。
「じゃあ、止めますか?」
「いや、それはダメだ」
「じゃあ、どうします?」
「どうしたら、いいと思う?」
なんだろう、この面倒なやり取りは。セバス様を見ても軽く会釈するだけで丸投げされた感が強い。
「もしかして、もう誰かに何か約束してたりしますか?」
「……」
俺の質問にデューク様の目が泳ぐ。
デューク様なら、他の貴族に対してはほとんど強気でいけるだろうから、逆らえないところからの頼みなら……もしかして、王族。
「もしかしてですけど、王族から何か要求でもありました?」
「分かるか?」
「なんとなくですけどね」
「まあ、簡単に想像出来るだろうな。確かにお前の言うとおりだ。ハッキリと対面で言われた訳ではないがな、王家からの伝令で楽しみにしているとだけだが」
「そうなんですね。直接言わないのは王族と言うか貴族文化なのでしょうね。でも、ソレを俺にまで強要されてもサッパリですよ」
「それはスマン。だがな、王族に期待されても俺も何をどうすればいいのかさっぱり分からないんだよ」
「別に気にする必要はないんじゃないですか」
「いや、ダメだろ。仮にも王族だぞ。何かこう、パァ~っと派手な催しとかした方がいいと思うんだが」
そう言って、チラリと俺を見る。
「その派手な何かが、あの壁の向こうにあるんですけどね。まあ、するのなら、王族をオープンカーにでも乗せて、港湾施設の中をパレードとかでしょうか」
「その『オープンカー』が何かは分からないが、要は何かに乗せたまま案内するということか?」
「はい、そうです。ただ、中を見たいとか言われたら、その都度止まるか、それとも不敬を気にせずに後回しにするかですね」
「それはどちらもイヤだな」
「なら、オープン前に特別と。嫌みなくらいに『特別感』を演出して王族専用の貸し切りみたいな感じで一日中満喫してもらうのはどうです?」
「それが一番無難か」
「旦那様、私もそれが一番かと」
「じゃあ、それまでに港湾施設の名前を考えといて下さいね。じゃあ」
そう言い残し、ソファから立とうとするとデューク様に腕を捕まれる。
「待て! なんと言った?」
「ですから、港湾施設の名前をお願いしますと」
「なぜ、俺が?」
「なぜって、デューク様の管轄でしょ?」
「ああ、それはそうだ。だからって」
「なら、後から募集するってのもありますよ」
「何? それはどういうことだ?」
俺の提案にデューク様が飛びつく。
「だから、急いで決めなくても仮称で『シャルディーア港湾区』とでもしておいてですね。あとから、利用客の人達に名前を決めて貰うんですよ。投票形式で箱の中にその人が考えた名前を紙に書いて入れてもらうんです。それで、その中で多かった名前、良さそうな名前をいくつか候補として選んで、その中から改めて、いいと思う名前を選んで貰うんです」
「ふむ。なるほどな。その名前を考えるところから決めるところまでもイベントとして扱うということか。セバス、お前はどう思う?」
「いい考えだと思います。今までの様に貴族主導での押し付け感もなく、しかもイベントすることで更に好感を得られるかと」
俺の苦し紛れのいい加減な提案にデューク様もセバス様も太鼓判を押してくる。どうしよう?
マサオを見ると、「やっちまったな」とでも言うように呆れた顔で俺を見ていた。
やっちゃったな~
1
お気に入りに追加
4,888
あなたにおすすめの小説
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
野草から始まる異世界スローライフ
深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。
私ーーエルバはスクスク育ち。
ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。
(このスキル使える)
エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。
エブリスタ様にて掲載中です。
表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。
プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。
物語は変わっておりません。
一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。
よろしくお願いします。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
幼女と執事が異世界で
天界
ファンタジー
宝くじを握り締めオレは死んだ。
当選金額は約3億。だがオレが死んだのは神の過失だった!
謝罪と称して3億分の贈り物を貰って転生したら異世界!?
おまけで貰った執事と共に異世界を満喫することを決めるオレ。
オレの人生はまだ始まったばかりだ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。